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暴露と覚醒

覚醒

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灯花とうか?」
 突然のことに僕は固まる。

 僕の目の前で灯花が消えた。

 どこに?

 どうして?

 誰がやった?

 帰ってこれるのか?

 もしかして……。

 もう会えない?

 これまでなんとかやって来れたのに?

 僕は灯花と一緒に日本へ帰れない?

 …………そんなのいやだ。

 嫌だ嫌だ嫌だ。

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!!!


「嫌だっっ!!!!!!!!!!」


 突如とつじょとして天海 夕あまがい ゆうを中心として風が吹きすさぶ。
「お姉さま!」
「もうやってる!私の"眼"じゃおさえきれないの!」
(これじゃまるで……)
「近くに居るんでしょ!早く呼び戻しなさい!取り返しのつかないことになる前に!!!」
 抑えるのをあきらめて術者を"眼"で探す。
「あなたね!なんてことをしてくれたの!!」
 リィルはなんの迷いも無しに自分が犯人だと言われて一瞬狼狽うろたえたが、これを好機こうきふところの石を指先でつまんだ。
巫女みこさんにうらみはなかけど……これば飲んどきっ!」
 大きくいた口の中に石を投げ込もうと腕を振りかぶったその瞬間。
「――――――――――――ッ!!!!!」
 音にならない咆哮ほうこうが、リィルの身体を硬直こうちょくさせる。
「しまった!」
 石は狙った場所かられてサーラの胸部に当たったあと足元に転がって止まった。
「これは…………」
 石をひろい上げたサーラの表情が変わる。
「お姉さま危ない!」
 アルネリアの声と同時にサーラの横を風が走り抜け――――――。
「ぐっ!?」
 風に驚いて閉じた目を開けると、リィルの首をゆうめ上げていた。
 店内は恐慌きょうこう状態となり、動けない一部の客を除いて我先われさきにと出口へと走り出す。
「ユウ様!落ち着いてください!灯花さんは生きています!どうか落ち着いて!」
 サーラの必死の呼びかけも意味をなさず、リィルの顔色は赤色から少しずつ青ざめた色へと変わっていった。
「だめ!もう顔まであかしが……魔王紋まおうもんが出てる……!」



「カビくさいし湿っぽい……どこでござるか此処ここは?」
 灯花は薄暗うすぐら洞窟どうくつのような場所に居た。
拙者せっしゃを狙ったワナ……やりくち初見しょけん殺しだったとは言え迂闊うかつでござったな」
 とりあえず歩き始める。
「なんかダンジョンとか迷宮ってリアルだとこんな感じなのでござろうか?」
 松明たいまつが一定距離で壁に掛けてあるのを見ると、前人未到ぜんじんみとうの謎の洞窟という訳でもないらしい。
 灯花は壁の松明の一つを拝借はいしゃくしてゆるやかな坂道を高い方へと歩く。
「なにかの気配けはいを感じるのでござるが……」
 なんとなく、その気配が既知きちのものだという直感ちょっかんが灯花の中にはあった。
「そこ!」
 灯花が指を差した先には……紫色の蜥蜴トカゲがいた。
「まぁ、知ってるっちゃ知ってるけども」
 ガクッと肩を落としながら蜥蜴に松明のあかりを向けると、無数の光がこちらに向かって反射していた。
「あっちゃぁ……」
 くるっときびすを返して灯花は走り出した!
 隙間すきま無く聞こえてくる蜥蜴の鳴き声と足音を背中で聞きながら灯花は全力で走った。
「せめて武器!丸腰まるごしにその数は反則はんそくでござるよ!」
 振り返って必死にうったえるも、そんなものは蜥蜴に通じない。
「だあああ!こうなったら地獄のフルマラソンで根比こんくらべでござるよぉ!!」

「駄目じゃないか。ここから先は母さんの墓だって教えただろ?」
「ふえっ?」
 前に向き直った灯花の目に映ったのは、親の顔よりも見続けた想い人の姿。
中位氷結魔法ノマ・チルシア
 灯花とすれ違いざまにはなたれた光は蜥蜴達とのあいだあつい氷の壁を作った。
 蜥蜴達は前をはばむ壁をしばらく爪でガリガリと削っていたが、くずせないと判断したのか帰っていった。
「ユウ氏ぃぃ!こんな所まで拙者を助けに来てくれたのでござるか!?もしかして大して遠くに飛ばされなかった?っていうか顔色……が……」
 いぶかしむような表情で灯花こっちを見るユウ?に違和感を覚えた灯花は口を閉じてジリジリと距離を取った。
「ケホッ……そっちは駄目だよ。母さんの墓がある」
 母さんの墓・・・・・?ユウ氏のお母様は存命ぞんめい。拙者の事を知らない様子。なにより力無く弱った表情と首の下から顔に伸びる刺青イレズミ……それらからみちびかれる答えは。
「もしかして、魔王でござ――――――」
 そこで灯花は消えた。
「……今のは誰だったんだ?」
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