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暴露と覚醒
煙
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カランカラン
カランカラン
鐘が鳴り続ける。
「どうしたのでござるか?」
どう動くのが最善か思案するサーラの隣にいつの間にか灯花が来ていた。
「トウカさん……。さっきの騒ぎを聞きつけたのか、門に警らの者達が来ているんです」
窓からコッソリ覗くと腰に帯剣した制服の男が二人、門の鐘を鳴らしていた。
「いつまでも出ない訳にはいかないでござろう?」
「ですがここで拘束されてはお二人の身が……!」
片や聖女、片や魔王の二人組が発見されるのも大問題だが、そのうえそんな二人と一緒に居たとあればサーラとアルネリアも厳しく追求されるのは想像に難くない。
しかし。
「ま、拙者に任せておくでござるよ~」
灯花はそんな心配をよそに外へ出ていった。
「どうされましたか?」
真面目なキャラを装い灯花が門に近付くと、隊員らしき制服を着た二人の男たちが並んで綺麗な直立の姿勢を取る。
胸に着いているバッジのデザイン的に階級の高そうな方の男が話し始めた。
「夜分に失礼します!姉妹巫女様が先程来店されていた店にて酔っ払い同士の乱闘が発生したと通報がありました!その際に何か損害を被ってはいないかの確認へと参った次第であります!」
軍隊の報告のような、選手宣誓のような説明を聞いた限りではこちらを拘束するような意図で訪問したのではなさそう。
「え~……姉妹巫女のお二人はお疲れのためもう休んでいますが、特に怪我をしたり物が壊れたという話は聞いていません」
意味があるかは分からないが、とりあえず従者っぽく振舞ってみる。
「はっ!ご協力感謝します!何かあれば中央警ら事務所まで一報をっ!」
そう言うと二人同時に一礼し、男たちは道の真ん中を歩いて行った。
「ってな感じで、捜査や取り押さえって雰囲気ではなかったでござるよ」
サーラ氏の心配が杞憂に終わり、三人で冷たい水を飲みつつ話をしていると昼間来た鳥とは色違いの黄色い鳥が窓をコンコンとつついていた。
「こんな時間に手紙鳥?しかも高速便?」
窓を開けて迎え入れる。
「手紙ね……」
"この度は当商会の従業員が起こした乱闘騒ぎに巻き込んでしまったことで姉妹巫女様へ多大なるご迷惑をおかけしたことをお詫びします。つきましては後日、改めて謝罪の場を設けさせていただきますのでご都合の良い日を返信用の手紙へとご記入下さい"
「…………」
サーラ氏は無言で手紙に字を書いていく。
「なんと書いたのでござるか?」
「此度の件は不問とする……とだけ」
ふぅ、とため息をつくサーラ氏。
「私がしっかりと石を処分していれば誰も傷つかなかったのだから当然です」
疲れた表情の中には悲しみの感情が見える。
「魔王となることを望んでいなかったユウ様に対して、私はどうお詫びすれば良いのでしょう……」
「お姉さま……ひぐっ」
今にも泣きそうなサーラ氏と、姉にどんな言葉をかければ良いのかと既に泣いているアルネリア氏。
「その……"魔王"で思い出したのでござるが」
灯花は謎の洞窟に飛ばされたことと、そこで起きた一連の出来事を説明した。
「お墓……お義母様は魔王城の地下へ埋葬されたのですね」
「その場所に埋めるのが習わしなのでござるか?」
「いいえ。歴代魔王には専用の立派な墓所がありますし、そのそばに歴代女王の霊園もあります。お義母様は人間だったから同じ場所には入れられなかったのでしょう」
もしかしたらお兄様の希望で別の場所にしたのかもしれませんが……とサーラ氏は言う。
「そのお兄様は拙者が見た感じだとやけに弱っているよう見えたのでござるが……」
「わかりません。私達が人界に来て数年、もう魔界に敵対勢力は存在しないはずなので戦いで弱ることは無いはずですし……」
アルネリア氏の能力をもってしても、魔界まで距離が離れていると感知することができないとか。
「それよりも、エルが帰ってこないうちにユウ様には起きてもらわないと」
「そのことでござるが……」
カランカラン
「……!!」
話に名前が出た直後、その本人が帰ってきた。
「ただいま戻りましたわ~!」
「……お、お帰りなさい。随分と早かったのね」
予想外だったのか、サーラ氏の顔が若干引きつっている。
「鬼馬を走らせながら止まらずに岩を砕き続けましたの。早めに帰ろうと思って私、ちょっと工夫してみましたわ♪」
工夫が上手くいったことが嬉しいのか、エル氏は上機嫌だ。
「そ、そうなのね」
そんな方法で落石を処理できると思っていなかったからか、サーラ氏は複雑な表情をしている。
「そう言えばユウさんの姿が見えませんが……」
「ユ、ユウ様は先にお休みされてます。何も心配いりません」
平静を装いながらも内心はかなり動揺しているのが感じ取れた。
「そうですの?それでは私はお風呂に入らせていただきますわね」
そう言って、エル氏は浴場の方へと向かって行った。
「どうしましょうお姉さま」
「発覚する前にもうユウ様を担いででも逃げるべきよね……!」
「いやだからその件でござるが……」
「きゃああああああああ!!!」
浴場から絹を裂くような悲鳴が響いた。
カランカラン
鐘が鳴り続ける。
「どうしたのでござるか?」
どう動くのが最善か思案するサーラの隣にいつの間にか灯花が来ていた。
「トウカさん……。さっきの騒ぎを聞きつけたのか、門に警らの者達が来ているんです」
窓からコッソリ覗くと腰に帯剣した制服の男が二人、門の鐘を鳴らしていた。
「いつまでも出ない訳にはいかないでござろう?」
「ですがここで拘束されてはお二人の身が……!」
片や聖女、片や魔王の二人組が発見されるのも大問題だが、そのうえそんな二人と一緒に居たとあればサーラとアルネリアも厳しく追求されるのは想像に難くない。
しかし。
「ま、拙者に任せておくでござるよ~」
灯花はそんな心配をよそに外へ出ていった。
「どうされましたか?」
真面目なキャラを装い灯花が門に近付くと、隊員らしき制服を着た二人の男たちが並んで綺麗な直立の姿勢を取る。
胸に着いているバッジのデザイン的に階級の高そうな方の男が話し始めた。
「夜分に失礼します!姉妹巫女様が先程来店されていた店にて酔っ払い同士の乱闘が発生したと通報がありました!その際に何か損害を被ってはいないかの確認へと参った次第であります!」
軍隊の報告のような、選手宣誓のような説明を聞いた限りではこちらを拘束するような意図で訪問したのではなさそう。
「え~……姉妹巫女のお二人はお疲れのためもう休んでいますが、特に怪我をしたり物が壊れたという話は聞いていません」
意味があるかは分からないが、とりあえず従者っぽく振舞ってみる。
「はっ!ご協力感謝します!何かあれば中央警ら事務所まで一報をっ!」
そう言うと二人同時に一礼し、男たちは道の真ん中を歩いて行った。
「ってな感じで、捜査や取り押さえって雰囲気ではなかったでござるよ」
サーラ氏の心配が杞憂に終わり、三人で冷たい水を飲みつつ話をしていると昼間来た鳥とは色違いの黄色い鳥が窓をコンコンとつついていた。
「こんな時間に手紙鳥?しかも高速便?」
窓を開けて迎え入れる。
「手紙ね……」
"この度は当商会の従業員が起こした乱闘騒ぎに巻き込んでしまったことで姉妹巫女様へ多大なるご迷惑をおかけしたことをお詫びします。つきましては後日、改めて謝罪の場を設けさせていただきますのでご都合の良い日を返信用の手紙へとご記入下さい"
「…………」
サーラ氏は無言で手紙に字を書いていく。
「なんと書いたのでござるか?」
「此度の件は不問とする……とだけ」
ふぅ、とため息をつくサーラ氏。
「私がしっかりと石を処分していれば誰も傷つかなかったのだから当然です」
疲れた表情の中には悲しみの感情が見える。
「魔王となることを望んでいなかったユウ様に対して、私はどうお詫びすれば良いのでしょう……」
「お姉さま……ひぐっ」
今にも泣きそうなサーラ氏と、姉にどんな言葉をかければ良いのかと既に泣いているアルネリア氏。
「その……"魔王"で思い出したのでござるが」
灯花は謎の洞窟に飛ばされたことと、そこで起きた一連の出来事を説明した。
「お墓……お義母様は魔王城の地下へ埋葬されたのですね」
「その場所に埋めるのが習わしなのでござるか?」
「いいえ。歴代魔王には専用の立派な墓所がありますし、そのそばに歴代女王の霊園もあります。お義母様は人間だったから同じ場所には入れられなかったのでしょう」
もしかしたらお兄様の希望で別の場所にしたのかもしれませんが……とサーラ氏は言う。
「そのお兄様は拙者が見た感じだとやけに弱っているよう見えたのでござるが……」
「わかりません。私達が人界に来て数年、もう魔界に敵対勢力は存在しないはずなので戦いで弱ることは無いはずですし……」
アルネリア氏の能力をもってしても、魔界まで距離が離れていると感知することができないとか。
「それよりも、エルが帰ってこないうちにユウ様には起きてもらわないと」
「そのことでござるが……」
カランカラン
「……!!」
話に名前が出た直後、その本人が帰ってきた。
「ただいま戻りましたわ~!」
「……お、お帰りなさい。随分と早かったのね」
予想外だったのか、サーラ氏の顔が若干引きつっている。
「鬼馬を走らせながら止まらずに岩を砕き続けましたの。早めに帰ろうと思って私、ちょっと工夫してみましたわ♪」
工夫が上手くいったことが嬉しいのか、エル氏は上機嫌だ。
「そ、そうなのね」
そんな方法で落石を処理できると思っていなかったからか、サーラ氏は複雑な表情をしている。
「そう言えばユウさんの姿が見えませんが……」
「ユ、ユウ様は先にお休みされてます。何も心配いりません」
平静を装いながらも内心はかなり動揺しているのが感じ取れた。
「そうですの?それでは私はお風呂に入らせていただきますわね」
そう言って、エル氏は浴場の方へと向かって行った。
「どうしましょうお姉さま」
「発覚する前にもうユウ様を担いででも逃げるべきよね……!」
「いやだからその件でござるが……」
「きゃああああああああ!!!」
浴場から絹を裂くような悲鳴が響いた。
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