幼なじみギャル(偽)と異世界転移したら金髪ショタ(謎)に保護されました

定春

文字の大きさ
50 / 70
アルド・カガリ

枢機卿たち

しおりを挟む
「みなさん、準備はできました?」
 サーラさんに聞かれて僕達はうなずく。
「エル氏が頑張ってくれたおかげで引き継ぎの御者ぎょしゃさんもすぐ来れたでござるな」
 この国にはそもそも物見遊山ものみゆさんで来たわけじゃない。
 交代の御者さんが来るまで滞在たいざいするって話だったから、御者さんが来れば出国して再出発するのは当然といえば当然だけど……。
「振り返るとなんだかあわただしい一日だったな」
 変な蜥蜴トカゲに追い回されて入国したらお金持ちばかりのリゾート地で。
 灯花とうかの背中には謎のデカい刺青いれずみが入ってて実はサーラさん達の兄が魔王で僕と魂が同じらしくて。
 僕がこの世界に呼ばれたのは誰かの計画によるもので、そのせいでたくさんの犠牲者が出た。
 魔王の紋章が出たのもそいつの計画だったのかな……。
「ユウ氏?みんな行っちゃうでござるよ~」
「ん?あぁすぐ行くよ」
 分からないことだらけのこの世界で、分かったことが一つある。

 僕は灯花が好きだ。

 だからといって何か特別なことをするわけじゃない。
 ただ、灯花と無事に元の世界へ帰ることが僕が目指すべき目標なんだと再認識できた。
「灯花」
「どうしたでござる?」
「絶対に帰ろうな」
 僕の言葉にきょとんした表情を灯花は見せたが、すぐにニコッと笑って。
「どこまでもおともするでござるよ」
 そう言って灯花は僕の手を引いて走り出した。



 長く広い廊下ろうかを一人の子供が歩き進む。
 白い天井てんじょうは異様なまでに高く、とても掃除そうじをする者のことなど考えていないようなつくりの建物だ。
 様々な国を訪問したが、この国の王宮おうきゅうまさる大きさのものはどこにも無かった。
 そんなことを考えながら歩き続け、ついにその足が止まる。
枢機卿すうききょう第八席、アルド・カガリ。招集しょうしゅうを受け参上しました」
 部屋の中央に鎮座ちんざする円卓えんたくには既に二人の男が座っていた。
「お早い到着だな"御使みつかい様"」
 会って早々嫌味いやみを飛ばしてきた長身のせた男は第七席のハッシュ・セトだ。
「ドラグ・コトラでは龍王騎士団が魔族を討伐とうばつしたらしいが……どうして手を貸さなかった?」
 どうやらユウ達の存在を隠す為に騎士団が単独で倒したことになっているらしい。
「私も遭遇そうぐうしていれば共闘きょうとうしていたのですが、生憎あいにくが悪く貸しを作ることができませんでした」
 表情と声だけは申し訳なさそうにしておく。この男もそうだが、他国に恩を売れば発言力を強められると考えるのはどうしてだろう?
「セトよ、過ぎたことを言っても仕方がなかろう」
 セトの対面たいめんに座る太った大男……第三席のオゥズル・カイモンが口を開く。
「枢機卿の地位とはいえ所詮しょせん士庶ししょの者。ワシらのように神に愛されていないのだから肝心かんじんな時に役に立たないのも当然よ」
 二人が声を上げて笑う。ボクには何が面白いのか分からない。
「またカガリくんのことをいじめてるんですか?」
「!」
 いつの間にか椅子いすに座っていた若い女性……第二席のプリフェ・スルファンがつまらなさそうに欠伸あくびをする。
「二人ともよっぽど"恩恵おんけい"に自信があるんでしょうけど、おごりは禁物ですよ?」
「これはこれはスルファン第二席。こんなもの我々の間ではただの挨拶ですのでお気になさらず」
 カイモンは顔こそ笑っているものの、内心はおだやかではない。
 貴族として格下なうえに女性のスルファンに対して席次で負けており、普段から対抗心を燃やしているのは周知の事実だ。
 そんな中、コツコツと靴音くつおとを鳴らして歩く女性が円卓に近づいて来る。
皆様みなさま、招集に応じていただき感謝します。こちらにいらっしゃった四名の中から任務にあたる二名を選出することが今回の議題となります」
 眼鏡をかけた細身の女性が四人それぞれの手元に一枚の紙をくばると場にどよめきが起こった。
「魔王出現だと!?」
 カイモンが声を上げる。
「はい。昨日さくじつロンダバオより到着した黒い手紙鳥テルドによる報告です」
 黒……夜中にだけ飛ぶ"極秘"の手紙鳥か。
「被害はどうなってる!狙いは要人ようじんか!?」
「カイモンさん落ち着いてください。話が進みません」
 スルファンがカイモンをたしなめる。
「……続けます。被害者は無かったものの、その後の足取りは不明。未確認の情報ですが、一緒にヒュペレッドの姉妹巫女みこが居たとのことです」
 配られた紙……指令書には魔王の捜索後、捕縛もしくは討伐と書いてある。
「妙だ……。げん魔王と言えば人魔大戦を先代殺しをしてまで止めた穏健派のはず。どうして人界じんかいのロンダバオに出現する?」
 セトが女性に疑問をていす。
「一切もって不明です。現地の駐在員ちゅうざいいんに聞き取り捜査を行うよう指示していますが、もし魔王と遭遇して戦いになった場合は対処ができません」
 それで枢機卿の中から二人を選んで向かわせるってわけか。
「ふん。魔王とはいえ逃げ隠れするような小物こものの相手など八席で充分だろう。ワシはいそがしいから行かん」
 カイモンは腕を組んでふんぞり返る。
「他の方はその意見に異議ありませんか?」
 セトはもちろん、ボクも異議は無い。
「では……」
「ちょっと待ちなさい」
 スルファンが手をげている。
「何か反対意見でも?」
 ジロリとにらみつけるカイモン。
「いえ?カガリくんの派遣はけんに反対はありません」
「だったら……」
「アタシも行きます」
 スルファンに対して怪訝けげんな表情を向けるセトとカイモン。
「……任務には二名で向かってもらいますので、スルファン様の意見に異議が無ければ決定となります」
 意外な申し出ではあったものの誰も反対する者は居なかった。
「それでは第二席のスルファン様と第八席のカガリ様にロンダバオの魔王捜索の任にあたっていただきます」
「…………フン」
 カイモンが席を立ち、セトもそれに続いて部屋をあとにする。
 ボクは指令書をたたんでふところに入れた。すると……。
「カガリくん、ちょっと競走しようか」
「えっ?」
「ロンダバオまでどっちが先に着くか競走。金貨が床に落ちたら始めるね」
 そう言ってスルファンは金貨を天井近くまで弾き上げた。
「ほらほら、ボサッとしてると負けちゃうよ?速身の聖法シフ!」
 金貨がボクの目線と並ぶ高さまで落ちてから事態を理解できた。
「し、速身の聖法シフ!」
 チャリーン
 瞬間、ボクとスルファンは同時に走り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...