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アルド・カガリ
誰も傷付けない
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「エルさん……」
鞘を付けたままの黒い大剣を構え、エルさんは僕達と対峙する。
「姉妹巫女のお二人の素性が報告にある通りなのかは定かではありません。しかし祖国とヒュペレッドからの要請を受けた以上、私はあなた達を見逃すわけにはいきませんの」
真剣な表情のエルさんに気圧されて僕たちは動けずにいた。
「ふむ。よりによって紅の騎士が相手とは……」
そう言ってラギンさんが間に入り込む。
「不肖の身ではありますが、足止めはお任せ下さい。魔王様がお待ちしていますので」
どこから取り出したのか、その手には服と同じ漆黒色のステッキが握られていた。
「行きましょう」
サーラさんの言葉に僕と灯花が頷く。
「走るでござるよ!」
速身の聖法がかかっている状態での全力疾走。
まさか正面から走って逃げるとは想定していなかったのか、エルさんの反応が一瞬遅れた。
――――しかし。
「行かせません!」
すぐさま意識を切り替えたのか、大剣の腹を使った横薙ぎの一撃が僕の眼前に迫る。
ガィン!
金属同士がぶつかるような鈍い音が響いた。
「見た目以上に重く、身体の芯が震える一振りですね……」
ラギンさんがステッキを振り上げて攻撃の軌道を逸らしてくれた。
「……その姿!やはり魔族ですのね!」
スラッとした体型はそのままに、肌の部分は黒い毛で覆われ頭からは二本の長い耳が生えていた。
「人の身は些か動きづらいもので」
まるで人間と黒い兎を合体させたような姿に驚きつつも、変身したラギンさんのおかげでなんとかその場を離脱して僕達は走り続ける。
駐車場に停めている馬車に受け取った蜂蜜酒を含めた荷物を積み込む。
「ユウ様!トウカさん!どちらか馬車の運転はできますか!?」
御者が来るのを待っている時間は無いし、そもそもこの件に巻き込めないという判断だろう。
「カガリの馬車でやってたから僕がやるよっ!」
全員が乗り込んだのを確認して鬼馬を走らせる。
「門を出るまでが勝負です!兵が配備されていたら強行突破するしかなくなってしまいます!」
門まで一直線の道がやけに長く感じる。
「ユウ氏!最悪のお知らせでござる!」
窓から身を乗り出して前を見る灯花の声を聞いて、門の方へと目を凝らす。
「扉が閉められてる……!!」
来た時は全開だった門の扉が完全に閉鎖されていた。
そして門へと続く橋の前には鬼馬を止めるためのバリケードと武装した兵士が置かれていた。
門まで残りおよそ三百メートル。
(このままぶつかったらタダじゃ済まない……!考えるんだ!)
残りおよそ二百メートル。
(馬車を壊させずに向こうの人達を怪我させない方法を……!)
残りおよそ百メートル。
「シェレちゃんみたいに飛べたらこんなの楽勝でござるのにぃ!!」
「……………………それだっ!」
残りおよそ五十メートル。
「みんなしっかり掴まってて!」
「どうするでござるか!?」
「この馬車で飛ぶ!!」
そう言い放って僕は鬼馬を更に加速させた。
「速身の聖法っ!!!」
鬼馬と馬車が一瞬光り、自動車のスピードをゆうに越えた速度で走る。
兵士たちが集中している橋から進路を外し、門前のお堀へとコースを向けて――――
「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
――――――――跳んだ。
柵を突き破り、鬼馬……次いで馬車が空中に飛び出した。
まるで世界がスローモーションになったような感覚の中、門の横に広がる外壁が目の前に近付いてくる。
バリバリバリバリッ!
外壁がまるで薄い煎餅のように破られ、その勢いのまま馬車は外の街道へと着地した。
「…………や、やった………………」
緊張の反動で脱力感に襲われたが速度は落とさず、僕はそのまま馬車を走らせる。
「さ、流石ユウ!」
「ユウ様すごいです!」
「馬車が飛んだよユウおにいさま!」
窓から顔を出すサーラさんとアルネリアちゃん。
灯花は腰が抜けたのか床にへたり込んでいた。
「鬼馬が怖気ずに走りきってくれたおかげだよ」
その言葉に応じるかのように、鬼馬はブフンッと鼻を鳴らした。
「それではユウ様、西へ向かいましょう。ナルアポッドに入ればもう追って来れませんから」
「うん。ラギンさんも無事でいてくれれば良いけど……」
「カガリくん!大変だよ!」
二人での入浴を丁重に拒否して落ち込んでいたスルファンが突然さわぎ始めた。
「何事ですか?」
「えっ……ていうかカガリくんはなにも感じなかったの?」
要領の得ない質問にボクは困惑する。
「いえ……特になにも」
「あ、そっか。カガリくんは洗礼者がリースだもんね。そりゃ気付かないわけだ」
一人で勝手に納得されたが、こっちは未だに何を言っているかが分からない。
「驚かないで聞いてよ?」
「……はい」
早く言ってほしいな、と思いつつもカガリは耳を傾ける。
「聖王様が崩御されたわ」
鞘を付けたままの黒い大剣を構え、エルさんは僕達と対峙する。
「姉妹巫女のお二人の素性が報告にある通りなのかは定かではありません。しかし祖国とヒュペレッドからの要請を受けた以上、私はあなた達を見逃すわけにはいきませんの」
真剣な表情のエルさんに気圧されて僕たちは動けずにいた。
「ふむ。よりによって紅の騎士が相手とは……」
そう言ってラギンさんが間に入り込む。
「不肖の身ではありますが、足止めはお任せ下さい。魔王様がお待ちしていますので」
どこから取り出したのか、その手には服と同じ漆黒色のステッキが握られていた。
「行きましょう」
サーラさんの言葉に僕と灯花が頷く。
「走るでござるよ!」
速身の聖法がかかっている状態での全力疾走。
まさか正面から走って逃げるとは想定していなかったのか、エルさんの反応が一瞬遅れた。
――――しかし。
「行かせません!」
すぐさま意識を切り替えたのか、大剣の腹を使った横薙ぎの一撃が僕の眼前に迫る。
ガィン!
金属同士がぶつかるような鈍い音が響いた。
「見た目以上に重く、身体の芯が震える一振りですね……」
ラギンさんがステッキを振り上げて攻撃の軌道を逸らしてくれた。
「……その姿!やはり魔族ですのね!」
スラッとした体型はそのままに、肌の部分は黒い毛で覆われ頭からは二本の長い耳が生えていた。
「人の身は些か動きづらいもので」
まるで人間と黒い兎を合体させたような姿に驚きつつも、変身したラギンさんのおかげでなんとかその場を離脱して僕達は走り続ける。
駐車場に停めている馬車に受け取った蜂蜜酒を含めた荷物を積み込む。
「ユウ様!トウカさん!どちらか馬車の運転はできますか!?」
御者が来るのを待っている時間は無いし、そもそもこの件に巻き込めないという判断だろう。
「カガリの馬車でやってたから僕がやるよっ!」
全員が乗り込んだのを確認して鬼馬を走らせる。
「門を出るまでが勝負です!兵が配備されていたら強行突破するしかなくなってしまいます!」
門まで一直線の道がやけに長く感じる。
「ユウ氏!最悪のお知らせでござる!」
窓から身を乗り出して前を見る灯花の声を聞いて、門の方へと目を凝らす。
「扉が閉められてる……!!」
来た時は全開だった門の扉が完全に閉鎖されていた。
そして門へと続く橋の前には鬼馬を止めるためのバリケードと武装した兵士が置かれていた。
門まで残りおよそ三百メートル。
(このままぶつかったらタダじゃ済まない……!考えるんだ!)
残りおよそ二百メートル。
(馬車を壊させずに向こうの人達を怪我させない方法を……!)
残りおよそ百メートル。
「シェレちゃんみたいに飛べたらこんなの楽勝でござるのにぃ!!」
「……………………それだっ!」
残りおよそ五十メートル。
「みんなしっかり掴まってて!」
「どうするでござるか!?」
「この馬車で飛ぶ!!」
そう言い放って僕は鬼馬を更に加速させた。
「速身の聖法っ!!!」
鬼馬と馬車が一瞬光り、自動車のスピードをゆうに越えた速度で走る。
兵士たちが集中している橋から進路を外し、門前のお堀へとコースを向けて――――
「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
――――――――跳んだ。
柵を突き破り、鬼馬……次いで馬車が空中に飛び出した。
まるで世界がスローモーションになったような感覚の中、門の横に広がる外壁が目の前に近付いてくる。
バリバリバリバリッ!
外壁がまるで薄い煎餅のように破られ、その勢いのまま馬車は外の街道へと着地した。
「…………や、やった………………」
緊張の反動で脱力感に襲われたが速度は落とさず、僕はそのまま馬車を走らせる。
「さ、流石ユウ!」
「ユウ様すごいです!」
「馬車が飛んだよユウおにいさま!」
窓から顔を出すサーラさんとアルネリアちゃん。
灯花は腰が抜けたのか床にへたり込んでいた。
「鬼馬が怖気ずに走りきってくれたおかげだよ」
その言葉に応じるかのように、鬼馬はブフンッと鼻を鳴らした。
「それではユウ様、西へ向かいましょう。ナルアポッドに入ればもう追って来れませんから」
「うん。ラギンさんも無事でいてくれれば良いけど……」
「カガリくん!大変だよ!」
二人での入浴を丁重に拒否して落ち込んでいたスルファンが突然さわぎ始めた。
「何事ですか?」
「えっ……ていうかカガリくんはなにも感じなかったの?」
要領の得ない質問にボクは困惑する。
「いえ……特になにも」
「あ、そっか。カガリくんは洗礼者がリースだもんね。そりゃ気付かないわけだ」
一人で勝手に納得されたが、こっちは未だに何を言っているかが分からない。
「驚かないで聞いてよ?」
「……はい」
早く言ってほしいな、と思いつつもカガリは耳を傾ける。
「聖王様が崩御されたわ」
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