春の記憶

宮永レン

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 高校を卒業し、悠樹は東京の大学へ、私は町にある小さな会社の事務職に就いた。

 最初はなかなか会えなくてもくじけないように頑張っていた。

 電話もかかさずしていたし、大学の長期休みの時にはなんとか会えたりもした。

 けれども、私の仕事量がだんだん増えていって、連絡しなかったり、予定が合わなくなったり、ついには今までしなかった些細なことででも喧嘩するようになった。

 そんなすれ違いに、私は疲れてしまったのだ。

『別れてほしいの』

 電話で一言、彼に告げた。

 悠樹がどんな気持ちだったかはわからない。彼はしばらくの沈黙の後、言った。

『どうしてこんなことになったのかな……。俺は美和を安心させることができなかったんだな』

 彼はあっさりと別れることに同意した。

 電話を切った後、むなしさと軽いめまいに襲われた私は、耳から電話を離して、しばらくそれを見つめていた。

 あまりにも呆気ない終わりだった。その時は涙すら出なかった。

 泣いたのは翌朝、ベッドの中でそのことを思い出してからだった。

 ――嫌いじゃないのに、好きなのに。

 彼と付き合っていることに疲れを感じてしまった。

『どうして……どうして好きなのにこんなにつらいの? 一緒にいるのが疲れちゃったの?』

 私は涙を流しながら、自分自身に問いかけた。

 いつまで経っても、答えは出ないまま時間だけが無情に過ぎていく。
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