春の記憶

宮永レン

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 迷いながらも、結婚することを短く説明したメールを悠樹宛てに送信した。

(アドレスが変わっていればいいな……)

 そう思うなら送らなければいいのにと、呆れている自分も心の中には存在する。

 しかし、宛先不明の通知が届くことはなく、その一週間後、彼から返事が届いた。

 読むのを一瞬ためらったが、思い切ってメールを開いた。

『久しぶりに会わないか?』

 文面は絵文字のないシンプルなもので、そこにある感情は読み取れない。

『今は地元に戻ってコンピューター会社に勤めている。仕事が忙しくて、心の余裕のない時もある。あの頃の美和の気持ちを察してやれなくて悪かった』

 脳裏に浮かぶのは彼の低音の落ち着いた声。

『昔のことがあって気まずいかもしれないけど、俺は友達でいた頃のように話がしたい、結婚のお祝いも言いたい』

 胸がきゅっと締めつけられた。

 ――友達でいた頃のように。

 もう彼の方に恋愛的な未練はないのだろうか。

 ――再び、彼に会う?

 メールを読み終えて、胸がドキドキと高鳴っていることに気がついた。

 もし、悠樹に会えるなら、話ができるなら、今の中途半端な気持ちに決着がつくかもしれない。

 自分がどの道に進むべきか。

(悠樹に会おう)

 私はそう決心して電車に飛び乗ったのだった。
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