10 / 13
10
しおりを挟む
初めてのデートでここに来たことを悠樹は覚えているだろうか。
(あの時、帰りに悠樹は……)
ふっと海風に頬をなでられ、ふるりと身が震えた。
「寒くない?」
「大丈夫」
私は短く答えた。
そんな私をあざ笑うかのように、今度はびゅうと強い風が乱暴に髪に絡んでいった。
「俺、美和のこと忘れたことなかったよ」
唐突に――本当に唐突に悠樹は言った。
私の顔にかかったボサボサの髪をそっと指先で梳いて、頭を撫でられた。
私もそうだった、と言いそうになる。
しかし言ってしまえば、今の心のバランスが崩れるような気がした。
「そう……」
ぽつりと呟くのが精一杯だった。
「美和は、そういうのしつこいって思うかな」
「ううん。そんなこと……ない、けど」
再び胸がざわざわと音を立てて、何かを感じていた。
もし、これ以上悠樹と話していたら、私は本当に今を捨てることになる、そう思った。
太陽が雲に隠れて、二人の上に影をつくった。
「私、もう帰らなきゃ」
悠樹が口を開きかけたところで、私は慌てて立ち上がった。
日が傾きかけて、私の後ろに長い影を作っている。
(あの時、帰りに悠樹は……)
ふっと海風に頬をなでられ、ふるりと身が震えた。
「寒くない?」
「大丈夫」
私は短く答えた。
そんな私をあざ笑うかのように、今度はびゅうと強い風が乱暴に髪に絡んでいった。
「俺、美和のこと忘れたことなかったよ」
唐突に――本当に唐突に悠樹は言った。
私の顔にかかったボサボサの髪をそっと指先で梳いて、頭を撫でられた。
私もそうだった、と言いそうになる。
しかし言ってしまえば、今の心のバランスが崩れるような気がした。
「そう……」
ぽつりと呟くのが精一杯だった。
「美和は、そういうのしつこいって思うかな」
「ううん。そんなこと……ない、けど」
再び胸がざわざわと音を立てて、何かを感じていた。
もし、これ以上悠樹と話していたら、私は本当に今を捨てることになる、そう思った。
太陽が雲に隠れて、二人の上に影をつくった。
「私、もう帰らなきゃ」
悠樹が口を開きかけたところで、私は慌てて立ち上がった。
日が傾きかけて、私の後ろに長い影を作っている。
0
あなたにおすすめの小説
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
【完結】そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして
Rohdea
恋愛
──ある日、婚約者が記憶喪失になりました。
伯爵令嬢のアリーチェには、幼い頃からの想い人でもある婚約者のエドワードがいる。
幼馴染でもある彼は、ある日を境に無口で無愛想な人に変わってしまっていた。
素っ気無い態度を取られても一途にエドワードを想ってきたアリーチェだったけど、
ある日、つい心にも無い言葉……婚約破棄を口走ってしまう。
だけど、その事を謝る前にエドワードが事故にあってしまい、目を覚ました彼はこれまでの記憶を全て失っていた。
記憶を失ったエドワードは、まるで昔の彼に戻ったかのように優しく、
また婚約者のアリーチェを一途に愛してくれるようになったけど──……
そしてある日、一人の女性がエドワードを訪ねて来る。
※婚約者をざまぁする話ではありません
※2022.1.1 “謎の女”が登場したのでタグ追加しました
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる