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第3章 神に愛されし者
第5話 花の淑女
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リコリス部隊に入って、ミモザは貴族のたしなみや教養もある程度男爵レベルまで学んだ。
不都合な貴族を暗殺するには、身も心も貴族の血を引く侍女とかに化けて潜入しなければならない。
ダリア様の息がかかっている貴族は、養子縁組をして一代限りの養女として、標的の近くにミモザのような暗殺者を忍ばせる。
ミモザは訛りや方言を徹底的に矯正され、歯も綺麗にされ、貴族らしく教育された。
そしてある日、命令が来たら、どれほど情をかけている相手であっても迷わず任務を遂行する。
その非情な手腕は、花の淑女とも言われた。
嫋やかな麗しき容姿の夫人に見えて、情けもない苛烈な暗殺部隊に入っているミモザや、花の名前を持っている彼女らは、普通の貴族より貴族らしく、どこか影を纏っていた。
酔狂な貴族の男は、戯れにミモザを愛人にしようとしたりする。
『寝床で首を掻き切られてもよろしいのですか?』
ミモザは不思議で尋ねた。男は、破顔して「君のような美しい淑女なら本望かも知れないね。」
と本気半分でミモザに求愛した。
男は病気で余命僅かだった。ミモザのような毛色の変わった女に興味を覚え、次第に愛するようになった。
ミモザは何て酔狂なお方だと思いながらもしばし、愛の遊戯に付き合った。
男の容姿は好ましく、彼の求愛も好ましかった。
不意にミモザは男が惜しくなり、シズナ様の力で病を治してくれてもらおうと男に言った。
だが、男は断った。彼は別の宗教の信者だった。
病は天命であると、余計な延命は不要だと彼のポリシーもあった。
ミモザには解らなかった。生きられるのならそれに越したことはないと思うのだ。
ミモザやかのじょは生きたいから、こんな昏い仕事もする。
なのに、彼は天命と死を受け入れる。ミモザはなんだかそれがつらかった。
宗教とはいったい何なのか? 人生に影響をアタエルモノ。いつも助けてはくれないが、時々はっとさせるもの。
精神に影響を与えるモノ。
ミモザはこのリコリス部隊に入って幸福になった。彼女はオダマキと言われるようになった。
愚かと言われる花。しかし勝利への決意という意味もある。
かのじょはシズナ様に治してもらってより強く良く変容した。
ミモザは、彼女の頭に光り輝く王冠 クラウンが見えた。
かのじょは運命に勝ったのだ。
愚かな王として蘇ったのだ。
彼女は天衣無縫になり、愉快に人を裁くようになった。
ミモザは彼が惜しくなって、彼の子どもが欲しいと密かに懇願して、幾夜もまぐわった。
そして最後の逢瀬の後。彼は天命で死んだ。ミモザは寂しかった。涙が出てきた。
これが愛なのだろうか?
ミモザにはわからなかった。
ミモザは宗教施設の教祖、シズナ様に願った。祈った。
彼の痕跡、証が宿りますように。
シズナ様は願いを叶えた。
1年後、ミモザは赤子を抱いていた。彼によく似た瞳とミモザと同じ髪。
嗚呼・・わたしが母親になるとは・・運命は全く不思議だ。
赤子はどこかカサカサした肌をもっていた。 ミモザは驚いた。
こんなに老化した肌をもっているのだろうか?赤ん坊は?
どうも特異体質で、乾燥した体質をもった子どものようだ。
赤ん坊の名前をスターシスという花の名前にした。
あっと驚くという意味ももった名前だ。まさにこの子に相応しい。
赤子の性別は女だ。嗚呼。彼は女に生まれ変わったんだわ。
娘を見ると、ミモザは彼を忘れない。永久に途絶えない記憶が蘇る。嗚呼。彼はまだ生きている。
わたしとわたしの娘に永久に宿るのだ。
わたしが唯一愛した男の記憶だ。
スターシスは貴族の血を引いた暗殺者として育てられた。密かに彼の遺産も継いだ。
娘は生まれながらの貴族にして昏い血も引いたのだ。
娘は母親を偽りなく愛した。ミモザは微笑んで享受した。
美しい母親と娘だった。
不都合な貴族を暗殺するには、身も心も貴族の血を引く侍女とかに化けて潜入しなければならない。
ダリア様の息がかかっている貴族は、養子縁組をして一代限りの養女として、標的の近くにミモザのような暗殺者を忍ばせる。
ミモザは訛りや方言を徹底的に矯正され、歯も綺麗にされ、貴族らしく教育された。
そしてある日、命令が来たら、どれほど情をかけている相手であっても迷わず任務を遂行する。
その非情な手腕は、花の淑女とも言われた。
嫋やかな麗しき容姿の夫人に見えて、情けもない苛烈な暗殺部隊に入っているミモザや、花の名前を持っている彼女らは、普通の貴族より貴族らしく、どこか影を纏っていた。
酔狂な貴族の男は、戯れにミモザを愛人にしようとしたりする。
『寝床で首を掻き切られてもよろしいのですか?』
ミモザは不思議で尋ねた。男は、破顔して「君のような美しい淑女なら本望かも知れないね。」
と本気半分でミモザに求愛した。
男は病気で余命僅かだった。ミモザのような毛色の変わった女に興味を覚え、次第に愛するようになった。
ミモザは何て酔狂なお方だと思いながらもしばし、愛の遊戯に付き合った。
男の容姿は好ましく、彼の求愛も好ましかった。
不意にミモザは男が惜しくなり、シズナ様の力で病を治してくれてもらおうと男に言った。
だが、男は断った。彼は別の宗教の信者だった。
病は天命であると、余計な延命は不要だと彼のポリシーもあった。
ミモザには解らなかった。生きられるのならそれに越したことはないと思うのだ。
ミモザやかのじょは生きたいから、こんな昏い仕事もする。
なのに、彼は天命と死を受け入れる。ミモザはなんだかそれがつらかった。
宗教とはいったい何なのか? 人生に影響をアタエルモノ。いつも助けてはくれないが、時々はっとさせるもの。
精神に影響を与えるモノ。
ミモザはこのリコリス部隊に入って幸福になった。彼女はオダマキと言われるようになった。
愚かと言われる花。しかし勝利への決意という意味もある。
かのじょはシズナ様に治してもらってより強く良く変容した。
ミモザは、彼女の頭に光り輝く王冠 クラウンが見えた。
かのじょは運命に勝ったのだ。
愚かな王として蘇ったのだ。
彼女は天衣無縫になり、愉快に人を裁くようになった。
ミモザは彼が惜しくなって、彼の子どもが欲しいと密かに懇願して、幾夜もまぐわった。
そして最後の逢瀬の後。彼は天命で死んだ。ミモザは寂しかった。涙が出てきた。
これが愛なのだろうか?
ミモザにはわからなかった。
ミモザは宗教施設の教祖、シズナ様に願った。祈った。
彼の痕跡、証が宿りますように。
シズナ様は願いを叶えた。
1年後、ミモザは赤子を抱いていた。彼によく似た瞳とミモザと同じ髪。
嗚呼・・わたしが母親になるとは・・運命は全く不思議だ。
赤子はどこかカサカサした肌をもっていた。 ミモザは驚いた。
こんなに老化した肌をもっているのだろうか?赤ん坊は?
どうも特異体質で、乾燥した体質をもった子どものようだ。
赤ん坊の名前をスターシスという花の名前にした。
あっと驚くという意味ももった名前だ。まさにこの子に相応しい。
赤子の性別は女だ。嗚呼。彼は女に生まれ変わったんだわ。
娘を見ると、ミモザは彼を忘れない。永久に途絶えない記憶が蘇る。嗚呼。彼はまだ生きている。
わたしとわたしの娘に永久に宿るのだ。
わたしが唯一愛した男の記憶だ。
スターシスは貴族の血を引いた暗殺者として育てられた。密かに彼の遺産も継いだ。
娘は生まれながらの貴族にして昏い血も引いたのだ。
娘は母親を偽りなく愛した。ミモザは微笑んで享受した。
美しい母親と娘だった。
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