ままのひみつ ぼくのひみつ

栗菓子

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おにいちゃんのひみつ

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うちの家族にはひみつがある。
ままにはタスケテとこころの声がきこえることだ。
ままはそのおかげでお金とかもらって人助けなどをしてそれなりに裕福じゃないけど、母子家庭にしてはかなり余裕がある家庭になった。
家も助けてもらった人たちの恩で古いが、かなり住みやすい大きな家だ。
子ども二人、ままが住むには十分すぎるぐらいだ。

ままもおっとりしたお嬢様暮らしからぱぱが急に天国へ行ってしまって生活が激変して大変だったろう。
本当は、ままのようなおっとりした世間知らずが、ぱぱのような保護者がいなくなったら悪い奴らに食い物食い物だと狙われただろう。
ままは、ぱぱが天国へ行ったショックで、神様の祠を一日中回った。
そのせいだろうか。ままにはタスケテと聞こえる力を与えられた。ままは珍しく善良でお人よしだから、神様も哀れと思って力を分けたのかもしれない。それとも天国のぱぱが力を貸せと神様を脅したのかもしれない。
ぱぱはままにだけはやさしいひとだったけど、とても怖いひとだったよ。
ままのようにお人よしじゃなかった。ぱぱは悪い人にとても厳しいひとだった。
普通の人にも、少し悪いところがあったら直すようにとはっきりという人だった。
子どもにも容赦なかったよ。ままを悪く言ったら叩かれたことがある。
「ままを泣かすな。ままほど善良な人は珍しいんだ。息子のお前が泣かしてはいけない。」
ぱぱは大ウソつきだね。そんなことを言ったぱぱは早く天国へ行ってままを一番泣かした。
ぱぱはままにとって一番わるいひとだよ。ままをあんなに泣かせて。

弟にもひみつがある。ユルセナイとこころのこえがきこえることだ。
弟はままのように善良じゃない。ちょい悪いところがある。こどもだもの。そういうところあるよ。
身勝手なところがある。自己中心で聞こえてもうるさいなあと耳をふさぐことがある。
ユルセナイと言い続けているおんなの人が夫を刺しても悪いことをしたとはあまり思わないだろう。
だって酷い目にあわされ続けた人がやりかえしただけだもの。
すっきりしていたよ。と弟はおれに言った。あれでよかったんじゃないかと思うと弟は呟いた。
おれは何も言えなかった。 ぱぱとままのことが気になった。
こんな時ぱぱはどう言ったんだろう。
ああ、おれには何も言えないな。可愛い弟だもの。ぱぱならそれでも悪いことだというんだろうな。

おれにもひみつがある。真っ黒な心がみえることだ。そして時折悪い考えが聞こえることもある。
とても悪い心を持っている持ち主がわかることだ。
何故、おれには見えて、聞こえて ままと弟は聞こえるだけなんだろう。


一度だけ、ままは親しくなった男の人がいる。とてもかっこいいやつだった。
でもそいつの友人がとても真っ黒で嫌な悪いやつだったことがわかった。
おれは黙ってままにそっといった。「とてもかっこいい人だけど、お友達が悪いよ。」
ままはびっくりして、まさかあんたもといった。そうだよ。家族だもん。
「悪いやつの心が真っ黒に見える。時々悪い考えが聞こえる。」
「ままと親しくなった人は良い人だけど、友人が悪い人。離れた方が良い。」
ままはオロオロとしてどうしようといった。
「おれがままと親しくなったひとにいうよ。その人と一緒にいる友人は悪いことばかり考えているって。悪い事を言っていることを聞いたってそれとなくいうよ。」
ままはぱぱを見るように俺を見た。頼んだよと言う目をした。

おれはとてもかっこいい奴で良い人にそれとなく何も知らぬ子どものように見せかけて、
「おじさんは、ままによくしてくれる?これからも仲良くしてくれる。助けてくれる?ままはああいう人だから
心配なんだ。頼りないし。」
「おじさんはとてもかっこいいし、ままと仲良くなってくれて嬉しい。でもおじさんと一緒にいたひとが気になるんだ。」

おれは途方に暮れた子どものような表情をした。
おじさんはおろおろとどうしてとおれにたずねた。
「おじさんのお友達は悪い人だよ。おれあいつの独り言聞いたんだ。あのおんなやあの男ぶん殴ったら気持ちがいいだろうな。死ねばいいのに。なんか悪いことばかり考えているみたい。怖い顔していたよ。」
おじさんはええっと声をあげてそれは本当かと尋ねた。
おれはうんとおじさんの目を見た。
「おじさん。一度お友達の事をもう一度よく見たらいいよ。」
「おれはぱぱからままのこと頼まれたんだ。悪いやつは近づけたくない。おれはぱぱの息子だからままを守らないといけない。」
精いっぱい真剣な顔をしておじさんを見た。
おじさんはまさかあいつが・・といいながらも、ちょっと待っててほしいと言った。
おじさんは慌ててどこかへ行った。たぶん本当の事かどうか友人を確かめにいったんだろう。

おじさんは他の友人たちに聞いて回った。その中で悪いうわさもあった。
人に暴力的になることがあると。子どものころ犬や猫に酷いことをしたことがあると。
どれも確かではないが、おじさんはだんだんと悪い真っ黒な心を持った友人から離れていった。

一度だけ、悪い友人と出会った事がある。
「君はあの時のこどもだね。」にこにことそいつは笑って近寄ろうとしていた。
真っ黒な声が聞こえた。このクソ餓鬼。なにをあいつに言った。あいつはいい金ずるだったのに。あいつは運がいいから、こちらもあやかって運を良くしようとしたのに。あいつに近づけばいい目を見られると思ったのに。殺してやりたい。厭な子どもだ。死ねばいいのに。突き落として車にはねられる様にしようか?
「一緒におじさんと行こうか」柔らかな口調。にこにこした顔。それさえ聞けば大抵の子どもは騙されるだろう。
でもおじさん。おれにはあなたの悪い声が聞こえるんです。
「おじさん。厭な奴だね。」
おじさんは黙り込んだ。
「嫌な子どもだ。」おじさんは真っ黒な心に染まった。しまった。しくじった。
逃げようとしたら、おじさんはおれを捕まえて、酷い目に合わせようとした。
「助けてえええ・・・!」とおれは大声を上げた。 
ピーピーと高い音が上がる子供用警笛ベルも出した。悪い奴や危険な目にあったら誰かに知らせるよう、大きな高い音が上がるようになっているベルを押し続けた。

住宅から何事だと、人々が音の在処を探し始めた。 これで良し。
「お前!こどもを捕まえてどうしようというんだ!」
見知らぬ男たちが、嫌がる子どもをさらうように見えたおじさんを誘拐の現場を見た。犯人と思うのも無理はないだろう。
おじさんは見知らぬ男たちに拘束された。
「くそがああ・・この野郎。あいつに何を言った!俺は何も言ってないぞ。」
悪いおじさんの見苦しい罵声が周囲に響き渡った。目を血走って、醜態をさらけ出す悪いおじさんは悪者でしかない。
「子供に何でことを言うんだ。」眉をひそめる老人もいた。
ごめんね。これで悪いおじさんの本性が露わになったね。でもこれでおじさんは悪行がばれると思うよ。

おじさんがなぜあんなかっこいい人と一緒にいたかわかるよ。運が良くなりたかったんだね。
おじさん。相当運が悪いみたいだね。
でもおれはおにいちゃんだから。

悪い心、悪い声が聞こえるんだよ。無駄なんだよ。
家族を守るためなら何でもやるよ。だっておれはぱぱに頼まれたおにいちゃんだから。

おにいちゃんはね。鬼いちゃんでもあるんだよ。
多分、地獄から生まれた鬼の生まれ変わりかもしれないね。
悪い奴らを罰する鬼だったのかもしれない。
だから悪い心、声が聞こえるのかもしれないね。

さよなら。悪いおじさん。

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