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第13話 放浪

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わたくし。パスカ令嬢。いえ。唯のパスカに戻ったわたしは野良猫のように世界中を放浪しました。

勿論。この時のために護身術や、護身のナイフや、目つぶしやまきぶし?相手の足元に投げて、妨害する小物や、
襲われたらとんでもない音が鳴るベルのような護身道具を幾つも持っております。
ほとんどがトートが作ったものです。凄いですわね。

これって、商品化したら、弱者や女や子供も救われる確率が高いのに・・。
アールにもその事を言ったら、アールもなるほどと思案して、何か商品化してくれる会社を探しているようでした。

わたしは髪を短く男のようにきって、胸をきつく布で巻いてあまり女らしさをみせないように男性の服を着ました。スボンはわりと開放的で動きやすいですね。


わたしはたくさん世界を見たかったのです。
まずは世界をめぐる豪華船に乗りました。ま、まあ。わたし。お金はいっぱいありますの。
リーナ夫人から頂いた貴金属をアールにお願いして換金したら相当なお金になりました。
数年は、遊んで暮らせるぐらいかしら・・。勿論、一部はアールに渡しました。

そこにはカジノもあり、最初に幸運でしょうか。試してみたら勝って大金がわたしのもとへ来ました。
わたしは怖くなって、そこで止めました。

わたしは信用できる船の使用人に頼んで金庫に預けました。

それからのわたしの旅は夢のような時間でした。

北の方へ行っては、オーロラのような天空のドレスのような美しいものをたくさんみました。
凍った地面。美しい白鳥が整列して一気に舞い上がる様は圧巻でした。

白い波の花といわれる美しい海の波の泡みたいな厳かな情景。

海の神が創った芸術品のようでした。

南国へいっては、トロピカルな果実や、陽気な漆黒の肌を持った人々。奇妙な旋律をする音楽。
全てが新鮮なものでした。

ある島では、戦った跡があるのを遺跡にしていました。敵と戦ってここで戦死した人は数知れないという。
今でも海で眠っている人はいる。

今は静寂ですが、過去には壮絶な戦があったのですね。歴史をわたしは感じました。

他にも様々な美しい珍しいものを見れてわたしは童心に戻って嗚呼嗚呼と喜びました。


勿論、そんな国も目を反らすほどの汚濁に満ちたスラム街や、闇はあります。でもわたしはもう見ません。
わたしも十分に見てきたからです。それはその国がなんとかすべき問題と思うのです。

アールなら、闇社会でも表社会でも活躍するのではないかとわたしは思います。
彼はとても優秀ですから。 非合法なことも合法化されるのではないかとわたしは思っています。
人間は本当に残酷になれる動物でもありますから・・。

わたしは本当に救われない弱者も居るのは解っています。わたしたちは偶々運が良く生き延びたに過ぎないのですから・・。

わたしが今でも気になるのはセルマ。トート。アール。 タロー。 わたしの仲間たち。
そしてわたしが心を与えたドール様。 レイル。かれには雄の本質も貴族の本質も知らされた。
リーナ夫人・・。彼女はとうに喪ったものを求める死人だった。伯爵もだった。
わたしは彼らの一時の慰めになっただろうか?

わたしの思いが深い彼らはどうなっているだろうか?
わたしは柄にもなく祈りました。彼らの未来がなるべく幸あらんことを。祈りました。

わたしは放浪の間、アールに勧められた宗教施設 セルシーオ・ナミ 至高の華と言う教団を訪れました。
確かに厳粛で、美しい教会のようなものが建てられていました。
でも何故でしょう。貴族めいた意匠も刻まれています。

その当時の神官がわたしの疑問に答えました。
「ダリア様という古い貴族の血をひかれているお方も創設の一人でした。
彼女は始めは下層社会で育って虐げられた民だったのです。
彼女はとても悪い集団に入って、悪行を繰り返していたようです。
でもある女神シズナ様と出会って、彼女は、悪い仲間たちを倒して、より良き社会を創るため、暗殺集団リコリス部隊を創ったようです。虐待された奴隷女や普通の女が主に戦ったようですよ。

内乱や大きな戦が起きて彼女らが今はどうなっているのか行方知らずですよ。
ほんの数十年前ですよ。
子どもたちはここで競ったのです。よりよく素晴らしい人になるために己を磨き上げたそうです。
シズナ様は神の母とも呼ばれ、子どもたちには慕われていたようです。

創設者の一人。ゴルデアという男は傭兵団を創って一時は王国を凌ぐほど強大だったようです。
あの方は存命です。今でもこの宗教施設を守ってほしいとわたくし神官に命じられて居ります。
シズナ様の力は本物の神の力であったと言われました。」


まるで御伽話の様ですね。でもそれが本当なら、弱者も頑張ってこの居場所を築いたのですね。
それなら嬉しいです。

わたしは見も知らぬダリア様。ゴルデア様。 女神シズナ様に祈りました。

彼らも頑張って居場所を創ろうとしたのでしょう。せめて彼らの人生が幸福であることを祈ります。

わたしはここにいると不思議と心が浄化されそうな気持ちでした。

嗚呼。辛かった幼い記憶。 わたしは身の程知らずにもリーナ夫人や伯爵に親としての情を求めていた。
でも彼らの心は既に死者のものだった。
わたしは諦めたのだ。わたしは本当は欲しかった。

わたしは慰み者に過ぎなかった。 辛かった。わたしはやっとわたしの奥深く隠していた心を露わにできた。

わたしは唯、泣き続けた。両手を組んで、祈り続けました。

最後に優しそうな神官はわたしに加護になる水晶の石を渡しました。
「これは貴方を守る力が宿っています。貴方に女神シズナ様の加護が有らんことを。」

わたしは嬉しくて 袋に包んて紐を通してネックレスにしました。胸の中に水晶を入れて置きました。
何故か。わたしの心を安らげてくれるものでした。

まさか本当に女神シズナ様の力が宿るものとは思っていなかったのです。

その力が発揮されるのは随分後になってからでした。

その話はまた後の話にしようと思って居ります。
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