愛と死の輪廻

栗菓子

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第10話 象嵌の煌めき

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象嵌とは、ある素材に異種の素材や、何種類かを加工してはめ込む異国の技巧である。
見たこともない異国の華と蔓のような文様をした、中には照明の光を反射する様々な物が埋め込まれて、とても豪奢で綺麗だった。

夫ジェイムスは大変この細工を気に入っていた。
直ぐに、職人に命じて大きな円環の卓と対になる頑丈な象嵌の椅子をいくつか創らせて、自室に配置した。

そこで紅茶や、珍しい菓子や、美味しい食事を頂くのがジェイムスにとって何よりの至福であった。

照明も、当時の随一の名職人に創らせて、煌めく透明な淡い飾りをつけた豪華なものであった。

その中で、ジェイムスのお楽しみができた。

妻アンを全裸にして、象嵌の卓に横たわらせ、性の遊戯をすることだ。

アンはすっかりジェイムスの前では娼婦のように妖艶になって、性奴隷のように従順にかすかに俯いて横たわった。

以前より艶やかな長い髪が象嵌の煌めきでより幻想的な美しさを強調した。

媚薬をかすかに混ぜた香料を炊いた小道具も、象嵌で煌めいていた。

そのかすかに理性が溶けるような甘く危険な匂いを嗅ぎながら、ジェイムスは好みの男を夢想し、己の男根を自分の手でしごき、勃起させた。

アンは中性的な肢体をしていた。女らしい胸ではなくかすかに膨らんだ胸。まろやかな肢体はしていたが少女らしい硬質な潔癖な気配もしていた。

そのおかげもあって、媚薬にかすかに惑わされたジェイムスは男色家であっても、アンという女にむしゃぶりつくことができた。

柔らかな手触りのいい髪、艶やかな肌。きゃしやな身体。こんな身体で子を孕めるのかと思うほどアンはほっそりしていた。
かすかな嫌悪を押し殺しながら、ジェイムスは思い切ってアンの胸をしゃぶった。甘かった。思っていたより美味しかった。いつまでも舐めていたい感覚だった。勇気が出たジェイムスは胸をきつく跡が残るほどわしつかみ、小さい胸を無理矢理持ち上げた。
「嗚呼・・痛い・・。止めて・・。」かすかに制止の声がアンから出たが、ジェイムスは無視して小さな果実を舐め貪った。孕んだら母乳が出るのだろうか?ジェイムスはアンの母乳を飲んでみたかった。
まだ見ぬ子どもがジェイムスは羨ましかった。その子はアンの母乳を独占するのだ。
いや俺も試してみよう。ジェイムスは何でもアンの身体を貪り試してみたかった。


アンは生贄であり、ジェイムスの妻でもあった。
アンは悲し気に夫を見て、諦めたように、夫の玩具として奉仕した。

アンが男の証を持っていたらもっと寵愛できたのにとジェイムスは残念でならなかった。

ある名医者は、女を男のように改造する手術ができると聞いたが・・
流石にアンをこれ以上いじくるのは哀れだとかすかな良心がジェイムスを制止した。

アンの父親は生存しているが、とうに見放している。アンの父にとってアンは政略のための道具にすぎず、その運命の行方は興味が無いのだろう。その方がジェイムスにとっても都合が良かった。

アンはとても都合の良い妻であり、逃げ場のない奴隷であった。

強引に挿入しようとすると、アンは思わずジェイムスの侵入を阻もうと足をあわせ、阻もうとする拒絶の意思を見せた。ジェイムスは傲慢にもそれが赦せず、強かに顔を血が出るほど殴った。
白い顔が血に染まって、腫れ上がって、「な、何故・・こんなことを・・?。」震えながら泣いて呻いたアンは壮絶に美しかった。

「拒絶するのは許さん。お前は俺の妻だから、いつでも俺の催したときには受け入れろ。それがお前の妻としての役目だ。」

アンは信じられないように夫を見て、かすかに目を閉じて泣いて大人しく足を開いた。

穴だ。ジェイムスは勢いよく男根を貫いた。俺だけの穴。いつでもやれる穴。
彼はその穴に侵入して、何回も射精した。血が染まったがかまわない。ジェイムスは夫でここでは何でもできる。

アンの苦痛に泣いた顔が良かった。 いつも澄ましかえっている大人しい女が、露わに感情を見せるのは心地いい。

妻は良い。いつでもやれる奴隷だ。アンは諦めて奉仕するようになった。

高級男娼に教わっただけはあって、アンは子どものように吸収し、男を悦楽に導く術を学んだ。

膣をきつく柔らかく締め上げて、夫の射精を早く出るように技巧をするようになった。

「うまくなったな・・。お前は良くなった。」

ジェイムスは興味がないつまらない人形だと思っていた妻がここまで魅力的な奴隷になるとはとこどものように喜んだ。

アンは唯ぼんやりと夫を見ていた。豪奢な円卓でアンは食い物として貪られていた。

煌めく象嵌の光が、アンを僅かに綺麗だなと現実逃避をさせた。
味方は誰も居ない。アンは一人で孤独に夫に奉仕して戦うのだ。生き延びるのだ。
アンはそう達観していた。


それを遠くから除いている物好きな使用人が蒼白になってアンとジェイムスの強姦にも近い性交を見ていた。
アンは度々殴られたりして、白い肌が痣に染まったりした。

アンは気づかなかったが虚ろに、夫に従うさまは哀れで痛々しかった。

事情を察して、同情しているが、怖くて何もできない使用人は少なからずいた。
ジェイムスの異常性癖と、暴虐を目のあたりにした人も居るが、彼らは自己保身や、家族を守るため、権力を持つジェイムスの悪癖には逆らえなかった。

この事は、家でも禁忌のことになって彼らは黙っていた。しかし何も思わぬわけではなかった。

その綻びは後に破綻することになる。


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