愛と死の輪廻

栗菓子

文字の大きさ
上 下
16 / 21

第15話 破綻

しおりを挟む
アンに娼婦としての性調教を仕込んだ美しい男娼と、醜い男は、人形のようになったアンを時折、複雑な感情を帯びた目で見ては、アンに痴態をさらけ出し、ジェイムスの余興と憂さ晴らしのために、アンの目のまえで、いささか演技じみた性交を行っていた。

普通の妻だったら、怒り狂ったり、精神崩壊しただろうが、アンは精神が浮遊した感じで夢を見るように、その見世物をぼんやりと無感動に見ていた。


美しい男娼は、本当に感じてはいない。夫を心のどこかで嫌悪している。

アンは無意識にそう察していた。過剰な媚態。どこか不自然な奉仕。醜い男も機械的に、奉仕していた。


あの美しい男娼が本当に愛している人はいるのかしら。その人との性交はどんなものか?きっととても美しく官能的なのだろう。
嫌悪している夫相手にでも、とても美しい顔を見せるもの。

あの男娼はやはり仕事ではとても売れっ子だろう。
ジェイムスは、なぜか美しい男を自慢げにアンに見せびらかしていた。これはなんだか・・猫が獲物を持ってきて飼い主に与えるようだった。


ジェイムスは人格破綻者で、上手く擬態しているが、もう恐らく何人も人を殺めているだろう。
アンは無意識に全て理解していた。

恐らくあの美しい男娼も気づいているのか知れない。しかし、大金を与えてくれる客でもあり、権力ももつジェイムスに迂闊に逆らったら弱い人は、たちまち処分されるだろう。

とはいえ、嫌悪はどこかで隠しきれないところがあった。
アンは、ジェイムスに命じられて、黙って従順に大人しく、美しい男娼の前で寝台の四つん這いになり、尻を突き出した。アンの尻穴を犯せと嬉々としてジェイムスが命じている姿が目に入った。
アンは無感動になり、アンは自分は唯のジェイムスのための玩具と思うことで、この強制的な行為をやり過ごそうとした。
美しい男娼は、後ろから、汗を流しながら乱暴に、激しく時には優しくアンの尻穴を犯した。
媚薬をずっと飲まされていて、アンも本能のままに、雌猫のように喜びの声を上げた。

ジェイムスが、「あの聖女のような妻がこのような淫売になるとはな・・お前もよくやったな。」
にやにやと美しい男娼に労いの声をかけるのを聞いたときは、アンは思わずこの破綻者。殺したい。と殺意を抱いた。でも媚薬効果で意識が朦朧として、動けない。
美しい男娼は、薄っぺらい笑みで誤魔化したが、アンの夫への殺意に性交しているからか、薄々気づいた。
かすかにアンの耳に、口を寄せて聞き取れないような小さな声で囁いた。
「大丈夫ですか。もう少しで終わりますから・・あの方の異常性格や行動は多分まもなく知れ渡るでしょう。
あの方を怪しいとずっと思い、証拠を探し当てようと躍起になっている方も居ます。お気に入りの男娼を殺されて怒り狂っている貴族もいました。きっともう少ししたら・・。」

美しい男娼は申し訳なさそうな顔をして、アンを性の絶頂へと導いた。

嗚呼・・この人も戦っているのね。いいわ。それが本当なら、破綻は間もなくやって来る。

アンはかすかに頷いて喘いだ。凡庸な女の顔が、妖艶でどこか神聖な淫らな顔に変容するのは、美しい男娼も見惚れるほどだった。

醜い男も、鑑賞しているジェイムスでも魅了されるほど蠱惑的で、いつまでも見ていたいアンと美しい男娼の絡みだった。

どこか神聖で、絵にしたいほどの美しさ。

ジェイムスはかつてないほど昂った。今すぐ、この二人を乱暴に激しく犯したい。
しかし鑑賞の楽しみも捨てきれずジェイムスは呻いた。

ジェイムスの愉悦と快楽の見世物はしばらく破綻の日が来るまで続けられた。


しおりを挟む

処理中です...