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第9章~再会と記憶~
第54話
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ピピは俺たちが帰ってくるまで、野菜スープの横でおとなしく待っていてくれた。食べ物を前に「待て」ができるなんて賢いうさぎだ。
「じゃあいただこうか。好きなだけ食べていいからね」
と、フレインがミルク粥を皿に盛ってくれる。ミルクの甘い香りとチーズの香ばしさが漂ってきて、何故か気分がホッとした。
「いただきます……」
そっと一口味わってみる。すると、程よい塩気とまろやかな味が舌の上に広がった。覚えていないはずなのに、とても懐かしい味がする。少し涙が出そうになった。
「ああ、美味しいね。やっぱり一人で食事するより、お前と一緒の方が何倍も美味しいな」
「…………」
「お前も、遠慮せずにどんどん食べなさい。お腹空いてるだろう?」
俺は一度スプーンを置いて、視線を落とした。
何だか申し訳なくてたまらない。フレインは何かと俺を気遣って優しくしてくれるのに、そんな俺は彼のことを何一つ覚えていない。兄だというなら大切な人には違いないだろうに、そんな人すら思い出せない自分に嫌気が差す。
いっそ突き放された方が楽なんじゃないか。そんなことすら考えてしまう。
「あの……フレインさん、俺……」
「……いいよ、わかってる。記憶がハッキリしないんだろう?」
そう言われ、ドキッとして顔を上げた。フレインはやや悲しげに微笑みながら、続けた。
「じゃあいただこうか。好きなだけ食べていいからね」
と、フレインがミルク粥を皿に盛ってくれる。ミルクの甘い香りとチーズの香ばしさが漂ってきて、何故か気分がホッとした。
「いただきます……」
そっと一口味わってみる。すると、程よい塩気とまろやかな味が舌の上に広がった。覚えていないはずなのに、とても懐かしい味がする。少し涙が出そうになった。
「ああ、美味しいね。やっぱり一人で食事するより、お前と一緒の方が何倍も美味しいな」
「…………」
「お前も、遠慮せずにどんどん食べなさい。お腹空いてるだろう?」
俺は一度スプーンを置いて、視線を落とした。
何だか申し訳なくてたまらない。フレインは何かと俺を気遣って優しくしてくれるのに、そんな俺は彼のことを何一つ覚えていない。兄だというなら大切な人には違いないだろうに、そんな人すら思い出せない自分に嫌気が差す。
いっそ突き放された方が楽なんじゃないか。そんなことすら考えてしまう。
「あの……フレインさん、俺……」
「……いいよ、わかってる。記憶がハッキリしないんだろう?」
そう言われ、ドキッとして顔を上げた。フレインはやや悲しげに微笑みながら、続けた。
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