【18禁】てとくち

クナリ

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第一章 ずっとずっと好きだったけれどもういけない

青四季海と、養護教諭の女良陽菜の家2

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「せ、先生!」
「はあい?」

「お、お願いですっ! ペニスに、ペニスに触ってくださいっ!」
「どうして?」

「す、凄く硬くなってます! おれの、凄く……! 触って欲しくて……おれ、もう、我慢できないです……! 先生の、先生の指で……」

 たん、と五本の指の先が海の下腹部に置かれた。爪の感触が分かる。
 指は大きく割り広げられており、おそらくは人差し指と中指の間であろう空隙に、海のペニスがあった。屹立したそれは、びくびくとしゃくり上げるように動きながら、横には動けないため、まだ指が触れてくれない。

「先生……ッ!」

 海の声がかすれた。
 爪の感覚が消える。

「どうして、先生……! おれに、……おれに……!」
「ふふぅ。濡れてきたね、海くん」
「ぬ、濡れる……?」

「知ってるでしょう、男の子も、興奮すると濡れちゃうんだよ。あ、凄い。先のほうでどんどん膨らんでくる……もうすぐ垂れちゃうよ。いつも、こんなに濡れるの?」
「あ……あ……そんなこと、……まだ、触られても……」

「そう、触られてもないのにね。ほんとに、すっごくいやらしいね、これ……」

 ペニスが一度、びくんと震えた。
 そのせいで、とうとう雫が一つ、海のへそのしたに落ちる。ぽたりという感触がした。

 経験したことがないほどの興奮を焦らされて、海はおかしくなりそうだった。
 なにかを叫びそうになる。
 しかしなにを言っていいのか分からない。
 その瞬間に、ついに、かつてなく敏感に張り詰めたペニスに、柔らかい手のひらが添えられた。

「ああはッ!? ああああ……!」

 幹の部分をつかんだ手が、海の声に驚いたのか、びくりと驚いて一度引き返しかける。それを、自由の利かない腰で、海が追いかけた。
 もう、これ以上のお預けには耐えられなかった。恥ずかしくても、どうしても、触れて欲しい。

「ふふ。気持ちいいの?」

 海はがくがくとうなずく。

「き、気持ちいいですっ! つ、続けてっ! ああ……!」

 筒状になった手のひらが、しゅるしゅるとペニスを上下にさする。
 さっきまでの、焦らしながら海をコントロールするような動きと違い、どこか海を気遣うような遠慮がちな動きだったが、海は手も足も出ずに悶えた。

「海くん、これでいいの? これだけでいい? もっとして欲しいことはない?」
「し、して欲しい、こと……」

 幹からは、充分な快感が流れ込んでくる。
 これを続けられれば、遠からず射精してしまうだろう。
 そういう意味では、不満などはなかったが。

「そう。もっとこうしたら気持ちいいとか、こうして欲しいとか、そういうの」
「じゃ、……じゃあ……」

 海は一度歯を食いしばった。
 いくらすべてを見せ、見たことのある仲でも、性癖や性感帯を白状するのは、別の恥ずかしさがある。
 しかし、ここで遠慮して中途半端なことをするよりは、素直な気持ちを告げたほうがいい。そう決めて、言う。

「さ……先のほうを、……してください……」
「先のほう? この、パンパンになってるところ? ここが好きなの?」

「そ、そうです……一番、硬くなるところ……」
「今濡れてるから、ぬるぬるするよ?」

「す、すみません、おれ、そんなつもりじゃ……濡れるなんて……先生の手が……」
「あはは、そんなこと気にしてるんじゃないよ。先が好きなんだ? じゃあ――」

 じゃあ、してあげるね。そう続くのだろうと、海は思った。
 しかし、違った。

「――じゃあ、一人でする時も、先を一番触るんだ?」

 限界だったはずのペニスが、さらに硬度を増した。
 ばれてしまった。誰にも言うことはないはずの、内緒の行為。その時に自分だけが触れる、一番の場所。それがばれてしまった。
 でも、いい。
 もう、なにを知られても。なにを見せても。

「そ、そうですっ……おれ、そこを……触って、しますっ……だ、だから……」
「だから?」

「だから、……先生も……」

 そこから数拍、手の動きが止まった。
 しかし、陽菜は、やめてしまったわけではない。それが海には分かった。
 手が離れ、ペニスが再び孤独に屹立したが。

 あ。
 くる。

 身構える寸前に、海の過敏な先端が、柔らかい手のひらにくるまれた。

「ああはッ!」

 子供の頭をなでるように、手のひらがくるくると動き出す。
言われた通り、すぐにぬるぬるとした感触がペニスに広がった。
思っていたよりもずっと多く濡れていたことを思い知らされ、驚くと同時に、今までに味わったことのない未知の快感が、海のペニスを圧倒した。

「ああ……! ああ……! ああああ……!」

 もう、言葉をしゃべることはできなかった。
 ただひたすらに声を上げ、縛られた手では口を抑えることもできずに、のけぞって悲鳴を放ち続けた。

 縦や横の直線運動では、ターンの時に必ず一瞬動きが止まるが、円を描く運動ならばそうしたクールダウンがなく、快感の曲線はどこまでも上昇していく。
 海自身が、「仕事」で愛撫をする時に心得ている法則そのままだった。愛撫のどの動き方にも長所と難点があるが、円運動の最大の美点はこれだった。まさか、自分の体で味わうことになるとは思わなかったが。

 とどめる間もなく膨れ上がっていく快感の前に、海には、耐える余地がない。
 なんとか絞り出したのは、懇願の言葉だった。

「お願い、です……先生……」
「どうしたの? やめたほうがいい?」

「や、やめないで……絶対やめないで……おれ、もう、……」
「もう、だめ? ……いく?」

「い、いきます……だから先生、手を、かざしててください……」
「かざす?」

 どう言えば正しく伝わるのものか、息も絶え絶えになりながら頭を回転させ、海は必至で言葉にした。

「お、おれ、たくさん出ちゃいます……分かるんです、これ、絶対たくさん出る……だから、手で押さえてもらわないと、周りに……」
「周りに飛んじゃうの? 海くん、この手が気持ち良すぎて、いっぱい出ちゃうから?」

 ちゅくちゅくちゅくちゅく……と、ペニスとは思えない水音が、海の限界を知らせていた。
 もう一刻の猶予もない。

「そう、です……今、手のひらでやってますよね? う、あ、……そのまま、受け止めてもらえれば、だい、じょ……あああああ……!」
「出るの? 海くん、出ちゃう?」

「ああ……もう、もうだめ……出ます、全部、全部出ちゃうッ……いいですか、先生……!」
「いいよ、手で押さえたりしないから、思いっきり出して」

 え? と、一瞬、海が我に返りかけた。

「お、押さえないって? 先生?」
「最後、ここでいかせてあげる」

 すると、一度ペニスから手が離れ、またも筒状になって、幹をつかんだ。
 ただし今度は、先ほどよりもだいぶ上に手が来ており、先端を横からくるむ形になっている。

「せ、先生っ? それはっ?」
「段差のところ、好きでしょ? こんなにパンパンになってるんだもん……絶対、気持ちいよね……」

 そして、すっかり濡れそぼってしまったペニスと手が、再び上下のピストン運動にさらされた。
 確かに、陽菜の言った通りだった。硬く形作られた段差部分に指が引っかかって弾かれると、先端だけよりもさらに鋭い快感が生まれた。
しかも手の筒は、先端もすっぽりと包んでいて、そちらも凄まじい快感を生み出している。
 くちくちくちくち……と水音が響いた。すでに、ペニスは根元まで濡れていた。

「あッあッあああ……うああッ! あー! あーッ!」

 ペニスの扱いでは、海よりも、陽菜のほうが一枚上手だった。
 のぼせきった少年の体では、耐えるなどとは及びもつかなかった。
 なすすべもなく快楽の通路が開き、一気に精液が駆け上ってくる。

「先生ッ! いきます、お、お願いです、手を! 手でくるんで……! じゃないと、部屋が、……先生の……部屋に……お、おれ、もう……!」
「いいよ! 私、海くんがいっぱい出すところが見たいの! だから手で押さえたりしない! 全部出してくれるところ、見たい! だから、出して!」

「だめ……そんなところ、見ちゃ……ああ……!」

 びゅうッ!

「あ、うあああああッ!」

 海が悲鳴を上げる。
 その時同時に、部屋の中にいるもう一人が息をのんだ。海には気づけなかったが。

「あはははっ! ほんとだ海くん、すっごく出てるよ! いいよ、全部出して! いくら出してもいいから!」
「あー……! あー……!」

 愛撫は続いた。
 二度目、三度目、と激しい射精が続く。
 陽菜の部屋に容赦なく精液をまき散らす罪悪感にさいなまれながら、なすすべもなく、海は弓なりになった体で鳴き声のようにあえいだ。なのに、そんな海の気持ちをあざ笑うように、射精の快感は普段よりはるかに激しかった。

 やがて、射精が収まると、手の動きも緩やかになってきた。
 体のどこにも力が入らず、ぐったりと体をベッドに沈める海は、かちかちと歯を震わせている。

 手がペニスから離れ、柔らかい布地――新しいタオルらしい――が、海の汗と精液をぬぐっていく。
 性感とは別の心地よさにさらわれて、海はしばらくぼうっとしていた。
 かろうじて、ありがとうございます、とつぶやく。いいえ、という声が返ってきた。

そして、再び、ペニスが人の手の中に納まるのを感じた。

「先生?」
「大丈夫、激しくしないから。終わった後、あったかい手で包まれるの、よくない?」

 いい。
 今まであまりそうされたことはなかったが、快感を与えるためではなく慈しむような、力を失いかけたペニスをねぎらうような触れられ方は、いかにも心地いい。

「いいです……気持ちいい」
「よしよし」

 笑いを含んだ陽菜の声に、海は、ふと違和感を覚えた。
 先ほどの愛撫の時から、どうも、余裕をはらんだ陽菜の声に比べて、手の動きは一泊遅れていたような気がする。
声と手が、上手に連動していなかったような――

 そう思った時、海の体が、ぶるっと震えた。

「ん? どうかした、青四季くん?」
「あの、先生……変なこと訊くんですけど……」

「うん。どした?」
「今、この部屋に、……おれと先生以外に、誰かいたり、しませんよね?」

 ペニスを包んでいた手に、わずかに緊張が走るのを、海は感じる。

「せ、先生? うそでしょう? ……まさかこれ、……これ、先生じゃなくて違う人なんですか?」
「えー、やだなあ。なんでそう思うの?」

 そんなわけはない。
 いくらなんでも、陽菜がそんなことをするわけはない。海のこの姿を、海に目隠しをして他人に見せるなんて、そんなはずがない。
 いくら自分にそう言い聞かせても、快感と興奮によるものとはまったく違う感情で動悸が早まるのを、海は止められなかった。

 本当に先生じゃないのか? じゃあ、これは誰の手なんだ?
 知っている人か、赤の他人か? 手だけでは、年齢も、性別も、まるで分らない。
 そんな手で、……おれは、あんなに……

「あ。凄い、海くん。また硬くなってきた」
「なっ……」

 本当だった。柔らかく落ち着いてきていたはずのペニスは、急激に反り返り始めている。

「意地悪してごめんね。嘘嘘、私の手だよ。お詫びに、もう一回してあげる」

 手が動き始めた。

「ああっ……せ、先生、本当に……? あ、だめです、それ……」
「んふふ。精液でいっぱい濡れてるから、気持ちよさそう……」

 ぬるぬるとした感触は、手の動きが早まるにつれて、またくちゅくちゅという水音を伴っていく。
 今度は、最初から、海の最大の弱点に狙いが絞られていた。
 あっという間に、海は快楽の海に引きずり込まれてしまう。

「あ、だめ……」
「いいよ、もう一回。あっ」

 びゅっ、と先端から白い液体が飛び出した。
 先ほどと比べると量も濃さも減っていたが、立て続けの絶頂で、海の体からは今度こそ力が抜けきってしまう。呼吸だけが荒かった。
 自分しか知らなかったとっておきの性感帯に連続して撃ち込まれた快感は、少年の体を完全に無力化してしまった。

「はあい、お疲れ。二回目がこんなにすぐ出るなんて、若いねッ」

 先生だって充分若いじゃないですか、と普段の海なら口にするのだが、この時はあえぐことしかできなかった。
 また、腹の上を、タオルで拭われる感触。
 陽菜はタオルを持っているのとは別の手で、海の頬や胸を撫でてくれた。

 その時、ことん、とごく小さな物音がドアのほうからしたのだが、ほとんど酸欠状態の海には気づけなかった。 

 体が拭かれ終わると、手足のタオルとリストバンドが外された。それから、アイマスクも。
 それでもまだ、海は起き上がれない。
 別人がここにいたのではないかという思考など、はるか彼方に追いやられてしまっている。

「どうだった? 海くん」
「凄い……凄く、よかったです……。先生、凄い……」

 陽菜が、どさりと、海の横に寝転がった。
拭き取っていない精液がついてしまわないかと海は心配したが、バスタオル姿の陽菜は気にしていない様子で、こちらを覗き込んでくる。

「そう? で、どうかな、男の子の性欲も、射精だけじゃないって思える?」
「……そのために、こんな……?」

「それだけってわけじゃないけど、聞き捨てならないなーとは思ったよ。んで、答えは? どう?」
「……相手によっては、ですかね……」

「ということは?」
「満たされます、心が……今、とてもいい気分……」

 陽菜が、寝たまま肘をついて微笑む。

「少し寝る?」
「いえ、……あ、でもじゃあ、五分だけ……」

 海は目を閉じた。
 そして、自分の体についさっき与えられた快感を反芻した。
 体の快楽で、心が癒されることはあると信じていた。そう信じて「仕事」をしてきたし、今もそうだから、女に奉仕ができる。
 それを、自分の体で味わえたというのは、ほかに代えがたい大切な体験だった。
 自分は、それだけの快感を与えてもらうのにふさわしい人間なのだと思えた。
「お客」たちも、そう感じてくれていたらいい。
 ごく浅いまどろみの中で、海は昨日までよりも確かに、自分の体をいとおしく思えた。
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