泉界のアリア

佐宗

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第四部 至高の奥園

25悦楽の波間②※

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 白灰色の湯に腰まで浸かったまま、双りはそうして下肢を密着させ、昂ぶりを確かめあうように互いの中心をこすりつけ合う。

「あっ……あっ………ん……」

 父の腰はやや下から緩やかに蠢く。固く緊まった弓形ゆみなりでゆっくりとナシェルのそれをつつき、共に高まろうと扱きあげてゆく。
 大きく脚を拡げさせられたナシェルは恥ずかしさを自覚しつつも、王の首にしがみついて快感に耐える。

 えもいわれぬ戦慄に、徐々に喘ぎがつよくなる。

 双りが上下に律動するたび、浴槽に張った薬湯がたぷん……たぷんと、まろやかな音を立てた。
 王は亀頭のくびれの凹凸を使って、ナシェルの中心をいやというほど強張らせ、玩ぶ。

「ほら……こっちも、もうこんなに張りつめてきた……」

 濁った湯の中で、膨張した性器が早くも悲鳴を上げかける。

「あん、あっ、あっ、」
「ふふ、達きたいか」
「あっ……ぁぁ……イ、きたい、です」
「駄目だよ、こんな刺激でさっさと達きたがるなんて、我慢の足らぬ子だね」

 王はそう窘めて、腰の動きを止める。
 王の大きなものが下から掬い上げるようにナシェルの双玉に触れ、そのまま意地悪に静止した。

 最初の絶頂までを限りなく引き伸ばしてたっぷりナシェルを喘がせるのが、王の究極の愉しみだ。

「や、……もっと、動いて、父上……」

 絶頂が遠のいたナシェルは慌てて、それなら自分で快感を得ようと王の太腿の上で尻を揺らし、腰をくねらせる。
 ふたたび弓張り同士がこすれ合うが、上になったナシェルがいくら腰を振っても射精するまでの感触には至らない。
  
「もうっ……」

 悲しくなり、もっと刺激が欲しくて思わず唇を尖らすと、王に額を指でつつかれた。

「お利口はどうした?」
「あ……はい、おりこうに……、します……」
「いい子だ。まだイクのは早いよ。ちゃんと寝台に行ってからにしよう。大事な場所を清めてからね」
「だ……大事な、場所……って」

 びくりと震えたナシェルは途端、急に体を持ち上げられて湯船から立たされた。
 思わず立ちくらんでいると、背を向けさせられ、屈んで浴槽のへりに両腕でしがみ付かされた。
 王はすかさず背後から尻を撫でてくる。

「んっ…………」

 立ち上がった体に、蒼い花弁が点々と張り付いていた。

「ここだよ……」

 王の指がゆるゆると這い、白い双丘の谷間に濡れそぼつ秘蕾を見出した。
 だが王はすぐには挿れず、周りの筋肉の具合を確かめるように谷間に沿って、指を滑らせる。

「ああ……っ」

 早く指をいっぱいに含みたくて、ナシェルは自然に腰を振ってしまう。王は引き緊まった尻が目の前で揺れる様を、たっぷりと堪能した。

「ここもちゃんと綺麗にしてあげなければな……」
「ん……早く……して、」
「綺麗にしてください、だ」
「き……綺麗に、して……下さい」
「どうやって?」
 
 恥ずかしい言葉を強要され、頬に熱が灯るのを感じる。

「えっと……その……父上の、指を……中に、入れて……」
「入れて、どうするの?」
「……ぐちゅぐちゅって、動かして、ナカを綺麗に洗ってください……」
「よくお願いできたね……こうかな?」

 懇願に応えるように漸く中指が侵入してくる。
 とろみのある湯に濡れているので易々と呑みこんだ。
 刹那、ナシェルの背筋が歓喜にわななき、力む。

「ぁぁあ………っ」
「動いては駄目だよ、じっとして……もっと緩めて。
 そんなにめてしまっては、綺麗にしてあげられないよ」
「あ……ふぁ…………ん」

 愛撫というよりは洗浄という言葉に相応しく、王はすぐに指を二本、三本と増やして孔の内部全体を揉みしだく。わざと心のこもらぬ無機質な動きを繰り返す。
 それでもナシェルの秘蕾は嬉しげにひくひくと収縮する。

「――ひぁぁ……あ……っ……!!」

 両脚に力が入らない。

 崩れ落ちそうになる下肢を、王が後ろから密着し片腕で抱えた。そのまま執拗に、指を抜き差しされる。

 王の長い指が、内側のもっとも敏感な場所をこそぐ。

「やぁぁあああ……は……、う……ッ……あン、ぁあ――」
 湯船のふちを掴む腕がとうとう先に負け、上体がくったりと弛緩する。

 縁に顔を伏せて尻だけ後ろに突き出すような、えもいわれぬ卑猥な姿勢をとらされながら、ナシェルはひたすらに内膜へ感じる蠢きに善がった。

「あ――だめ――……あ、もう……!」

 血流と鼓動がみるみる頂点まで上ってゆく。
 冷たい黒大理石に頬を擦りつけながら、首をぶるぶると振った。後ろの蕾は王の指を咥えこんだまま、もうとうに別のもっと素晴らしいものを欲しがって、ぱくぱくと喘ぐように引き攣る。

 前もさんざんに焦らされて、触ってほしくて仕方がない。

 しかし王は後孔の洗浄をいささか呆気なく終了し、指を抜いた。

「これぐらいで良いだろう」
「はぁ……はぁ……は……」

 脱力しかかった下肢を背後から保持される。
 尻たぶを掴まれてびくっと我に返った。

 熱く濡れた王の舌が、ひくついたナシェルの孔に割り入ってくる。

「ひ………ゃ……ぁああっ……っ、それ、だめ、だめ、父上―――」

 気持ち良すぎて、意識が飛びそうになった。

 王の熱い舌が粘膜を抉るように押し入ってくる。

 尻たぶを掴まれ極限に拡げられて、もっとも秘すべき部分を王の眼前に晒していることだけでも羞恥で耐えられないのに、王は舌先をナシェルの内膜に押しつけて中で蠢かせ、唇でわざとチュッと音を立てて後孔を吸い上げる。

「っぁ……はぁ……! だめ、そんなっ、とこ、ぁんっ、ああ………!」

 とんでもない快感にナシェルは我を忘れて叫ぶ。

 押しのけようと後ろへ伸ばした片手を、すぐさま掴まれ持っていかれる。

 王はナシェルの手首を保持し、舌をぎりぎりまで引き抜き、また深く埋没させる。
 じゅく、じゅくとリズムよく響く水音に、ナシェルも自然と腰の動きを合わせ応じはじめる。
 だが如何せん、舌の長さではナシェルの快楽の壺までは届かない。

 気持ちいいけれどもの足りず、いつの間にか王の舌をもっと深く呑み込もうと尻を突きだしていた。

「はぁ……っはあっ…っ、父上、もっと、奥……っ」

 背中をしならせ無我夢中で父の舌を咥え込み、己の奥へ導く。
 甘く掠れた声で紡がれる卑猥な懇願が、自分のものではないかのように遠くに聞こえる。

 王はやがてゆっくりと舌を抜き、ナシェルの下肢から手を離した。
 高まりかけていたところで喪失感に見舞われ、脱力したナシェルはざぶんと薬湯の中に頽れて、湯船の縁に身を伏せる。

「はぁっ……はぁっ……は……」

 まだ前戯なのに既に疲労困憊している。縁に伏せたまま顔を持ち上げられないでいると、顎を掴まれぐいと仰向かされる。

 王の嗜虐的で愛情深い双眸があった。

「大丈夫か?」
「ええ……」
 ナシェルはぼんやりと答える。

「続きは寝台でしよう。上がれるか?」
「少し、休ませて……このまま……少しだけ、」

 ナシェルは首を振り、花びらのあわいに沈んだ。
 とろんと瞼を落とし、風呂の縁に顎を預けたナシェルを、王は苦笑まじりに見つめてから立ち上がる。

「では暫しそこで休んでおれ。後で出るのを手伝ってやる」

 王は長い髪から水滴を滴らせながら湯船から上がり、先に湯殿を出て行った。……己を休ませる間に体を拭き、煙管で一服するつもりらしい。
 
 これから待ち望んだもので延々と愛し抜かれるのだと思うと、ナシェルの心は歓喜で張り裂けそうになる。

 ……そういえば、今、何刻なのだろう。
 王は審判の途中であったという。ということは王宮中が活動している時間だ。
 今後の政務の予定もあっただろう。
 それらを全て放り出してなりふり構わず自分を抱きしめにきた王の、己への愛と、
 垣間見せるいい加減さが、愛おしかった。

 ……他に何も考える気力が沸かない。
 ナシェルは余韻に浸るために再び眸を閉じ、王の作り出していった湯の波に陶然と身を委ねた。

 迫りくる、真なる発芽の刻への期待が溜息となって薄い唇を割り出で、灰白の泡沫うたかたとなって溶けていった。






―――

※次回以降少々倒錯的な性行為(軽い縛り等)も入りますのでご注意下さい


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