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第一章 愛証
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「そなたの成長が楽しみだよ……。いずれは余と同等の神司を得て、三界最強の神のひとりになるであろう。さらにそなたは、余に無いものを持っている……神聖なる美という鋭利な武器さえも」
王は滑らかなナシェルの柔肌に唇を寄せながら、うっとりと呟く。
ナシェルは熱い吐息を首筋に受けて心躍らせ、夢うつつにそれを聞いていた。
「暗黒界など、そなたの歩む王道のほんの些細な踏み台に過ぎぬのだ」
冥王はナシェルの腕をとらえ、白い肌を舐め上げながら続ける。
「そなたにはもっとたくさんの、もっと大きなものをあげる。それは余にしかあげられぬものだし、それを受け取れるのはそなただけなのだ」
「大きな、もの…………?」
ナシェルはぼんやりと問い返した。
「何ですか……それは?」
「力だよ。神司だ」
ナシェルは濃藍の双眸を数回瞬かせた。
「……神司……?」
何だろう。精霊を使ったりする力のことだろうか?
「そうだ。そなたも神として、もっと多くの力を得たいと望んでいるだろう」
王は優しく微笑む。
そんなものを、あげたり貰ったりすることができるのだろうか?
自分はそうした力など、欲したことはなかったのだけれど。
父がくれるというなら、貰わなければならないのだろう。それがいくら恐ろしいものであったとしても。
それに、実際には、父がくれるものは何であろうと少し嬉しい……。
「でも、どうやって………?」
「方法がある」
王は背後の寝台にナシェルを導きながら指を立てた。
「今から、その方法を試してみよう。なに、いつもしていることとそれほど大差はないのだがな」
王は寝台に腰かけ、身構えるナシェルを、抗うことを認めぬ剛さで捕まえた。
「おいで。これからそなたに余の力を注いでやろう。そなたは、その不可侵な尊さはそのままに、余の神司を浴びることで、これから永い時間をかけて少しずつ余に近づいてゆくのだよ」
ナシェルは抗いがたい強さで腕を引き摺られ、寝具の上にぱったりと倒れ伏した。
「……!」
驚きに、息が詰まる。
軽く結われていた髪が解け、ぱさりと広がった。
仰向けに寝かされ、瞑っていた瞼を開けると、至近に父の秀麗な相貌がある。
「父、上………」
ナシェルは愕然と、愉悦の表情を浮かべる王を見上げた。
ナシェルはたびたび父王の寝処に呼ばれることがあった。
もう添い寝を必要としない年ごろであるのに、そのようにされるのは、父は父なりに、母を知らぬ自分に、母性の代理としての父性を――少しずれてはいるが――、注いでいるつもりなのだろうと、幼なながらにナシェルは思っていた。
王は傍から見ればいささか異常なほど過分な父性を発揮し、王子を慈しみ、寂寥を慰めるための寝物語を語った。実際には、唯一かれの元に遺された“同族”であるナシェルを愛でることによって、寂寥を癒されていたのは冥王のほうだったのだが、ナシェルにはそれを知る由もない。
……彼がごく幼い時分は、そうして同衾するだけであったものの、近頃では王の添い臥の目的が明らかに別のところにあるとナシェルは気づかされていた。600歳ごろから王は徐々にだが、待ちかねていたように彼の躯をゆるやかに、弄びはじめたのだ。
まだ性を知らずにいた幼神は、それ以降「手ほどき」という聞こえの良い名のついた愛玩によってさまざまな角度から感受性を高められ、精通前から王の指姦に慣れるよう乳首や局部を開発され、王の手により精通を成し遂げさせられていた。
ナシェルの躯はいま、性愛の何たるかをつぶさに覚え込まされていく過程にあるのだ。
それはもう最終段階といってもよい。
そしていよいよ今宵、愛の教えの終着点としての行いが待ち受けているのだが……、
まだ指戯と口淫しか施されたことのないナシェルは、まだそのことを、与り知らぬ。
彼は蒼い眸をぽっかりと見開いて王を見上げた。
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