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第一章 愛証
5※
ナシェルは寝台の上に仰臥し、上から父王の熱い眼差しを浴びていた。父の紅い瞳の奥で情欲が燃え盛っていることは疑いようもなく明らかで、王子は恐怖にその身を固くする。
「さあ、服を脱いで」
父の声色が突如、断固たるものに変わった。
これから甘美な教示が歓びとともに己の躯に降り注いでくるのだと、ナシェルははっきりと理解した。
そして王の視線に煽られ己の色情までもが小さな種火のごとく燻り出すのも感じていた。
心の奥にある淫欲を、すでにこの歳にして知ってしまっているナシェルは、他の神々と比べることはできないにしても早熟には違いない。
たとえ彼らが神族という、他の常識の当てはまらぬ種族であったにしても、それはまだ魂に根を張り芽吹くにはあまりに早すぎるものだというのに、すでにその種は沿い臥の夜々に少しずつ、ナシェルの内部に植えつけられてしまっていたのだ。
天幕の外からは、あの不気味な風音に混じって、魔族たちが盛り上がる声が聞こえてくる。酒宴がはじまったのだろう。
彼らと自分たちを隔てているのは魔獣の皮をなめして作った天幕と、簡易の衝立だけだ。あまりに心許ない。普段はひっそりと閉ざされた王の褥の奥で行うはずのそれを、今、こんな場所で強要されているのだ。
ナシェルは首を振って拒絶の意を示したが、そもそも選択肢は用意されていないようだった。父はナシェルの両脚の上に跨るような形で下肢の動きを封じ込めているのだ。退路はない。
王は己の服を寛げはじめた。眼差しは幼い王子に注がれたままだ。
王の、鎖骨から肩にかけての隆起が露わとなる。帯が解かれ、次々に脱ぎ捨てられてゆく装束。ナシェルは王の引き締まった艶麗な裸身を目の当たりにし、思わず頬を染めた。
「早くしなさい。余を待たせるつもりか?」
抗うことを認めぬ態度に、ナシェルはなすすべなく従うしかなかった。
「………はい、父上」
寝台に横たわったまま、おずおずと、指を服に掛ける。釦を外す指が冷たく悴む。
落ち着いて、と自分に言い聞かせた。こんな場所だけれど、いつものように、ただ王に恭順し、甘い快楽を得れば良いのだ。
幼い指が戦慄きながら己の装束を取り去っていく様を、冥王は愉悦の眼差しで上から見守っている。
ナシェルは父の意図を諒解していた。父はナシェルが恥じらいに頬を染めながらゆっくりと服を脱いでゆくのを見るのが好きなのだ。父を悦ばせるために、彼は父を見つめ返し、時折羞恥に目を瞑ってはまた開いて潤んだ眼差しを向けながら、ひとつひとつ、ゆっくりと釦を外してゆく。
「いい子だね……」
王は取り去られてゆく衣服とその中から零れ出る肢体に交互に眼差しを送り、あたたかい微笑を投げた。
……やがて一糸まとわぬ蒼白い裸体が炎の灯りの中に浮かび上がる。
ナシェルは恐怖と歓喜の狭間のなか、脱いだものをひとつひとつゆっくりと、寝台の脇に落としてゆく。ぱさり、ぱさりと鳴る衣擦れの音が、快楽への導べのように耳に心地良い。
僅かに頬を上気させ、ナシェルは王を見あげた。衣服を取り払ってしまえば、今度はナシェルが愉悦を得る番だ。
王の手によって細い肢体が軽々と抱き起こされた。
「来なさい。気持ちよくしてあげる」
王は寝台の上に胡坐をかき、ナシェルを背を向けて胡坐の上に座らせると、その小さな両膝を割り開いて自分の太腿の外側へ引っかけるようにして、脚を左右に広げさせた。
「あ………、」
まだ柔らかな躯は、無理に大きく開脚させられても痛くはなかったが、下半身を外気に晒すような姿勢に、頬がますます紅潮する。
「腕を上げて、余の首に廻して」
「ん……、は、はい……」
云われたとおりに、腕を伸ばして父の首の後ろで両指を組んだ。ナシェルの上半身は後ろへ反り返るような形になる。二人の躯の密着性が高まり、ナシェルの背中は王の広い胸にぴったりと重なった。
背に触れる父の胸が、熱い。
やや浮き上がりかけたお尻の下にも、王の情熱の昂ぶりを感じる。
自分への愛の温度だと、感じた。
「手を下ろしてはいけないよ。その姿勢でいなさい。苦しくはないね?」
すぐ耳元で意地悪くささやかれる。
「…は………い、」
両脚を広げ、両腕を高く組まされ、淫らに体を開かされたナシェルは、震える声で応じる。浅ましい姿で嬲られることへの羞恥と期待が入り交り、体全体が上気して薔薇色に染まりつつある。
王の両手が腋下から腰のあたりを撫でながら、緩やかに前へ廻された。
片方の手は肉づきのない小鳥のような胸に咲く可憐な莟を捕まえて嬲りはじめ、もう片方の手はそれに続いて太腿の内側を焦らすようにしばらく撫でてから、その中心にある、まだうなだれたままの性器を探り当てる。
「あ………ん………っ!」
それに触れられて、ナシェルの口からか細い喜悦の声が洩れた。割り開かれた左右の膝が跳ねる。
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