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第一章 愛証
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躯を揺すぶられて、一瞬喪失していた意識を浮上させた幼いナシェルは、まだ躯の中に甚だしい異物感があるのに気づくと、もう身も世もなく泣き咽び、両腕を伸ばして王の首にとり縋り、後生だからこれを止めてくれ、外してくれと哀願を繰り返した。
「父上、……お願い、もう許して………!」
「欲しくないの?さっきみたいなのが……。余の力を浴びると、自分が変わっていく感じが、そなたも判っただろうに……」
闇の神司という甘美な餌をちらつかせて、王は誑かす。まるで神としての格が上がるような、あの極上の褒美を一度与えられてしまえば、王子があれの虜になるのはまず間違いないのだ。
しかしその快楽を抑えてあまりある苦痛に、今ナシェルの心は折れてしまっていた。王子はぶるぶるとかぶりを振って拒絶を露わにした。
「もう要らない! もう無理……おねがい、もう、やめて……」
魂の奥底から搾り出すような、泣訴だった。
「そう云われてもな……そなたがあまりに可愛い声で啼くから、我慢できそうにないのだよ」
高まってしまった己の怒張をどう収拾すれば良いものかと、王はしばし考える。
やがて首にしがみ付いて咽ぶナシェルの、その白い腕をもぎ離すと、王は彼を優しく説き伏せた。
「では、こうしよう。この姿勢は少し辛かっただろうからね。他の、もっと楽な姿勢でしてあげよう」
「いやぁ……! もういや……!」
慄き嫌がる王子を、そのまま寝台に横向きに寝かせた。
「膝を抱えて、躯を丸くしていなさい」
両脚を揃えて膝を丸めさせると、王子の躯は卵のなかの雛のように柔らかく縮こまった。父がまだ解放してくれぬのだと分かり、しくしくと涙に暮れながら、ナシェルは諦め、恭順した。
そのようにさせた上で、王はナシェルの側面を抱くようにして覆いかぶさり、挿入した。
「ひぃぅ――……! ひぃぅ――……!」
痛みを逃そうとする王子の、延々とつづくあえかな呼吸と啜り泣きが、王にとっては何とも耳に心地良い刺激である。両脚を揃えて丸まっているので、より孔内が狭くなる。図らずも創り出されたそうした素晴らしい狭小空間を、王は心行くまで満喫した。
側臥位は先ほどまでの座位と異なり、躯の深い部分までは挿入しない姿勢であるし、何より全身を抱き締めてやることが可能だった。王の腕のなかで、熱い愛を一突きごとに確かめさせられながら、囚われの王子は話すことのできぬ赤子のように、ただただ哭いた。
冥王は再び歓楽の峠にたどり着き、二度目の精と、それに付随する有り余る神司とをナシェルの中に放出した。
ふたたびナシェルの躯が、目に見えぬ大きな神気で弾けたような、耀いたような感じがあった。
「…………ッ………!」
ナシェルが、声にならない悲鳴を漏らす。
闇の気という、確実に甘い食餌を得て王子が結果的に歓んでいるのは間違いなかった。
だが躯のほうはそれ以上の苦しみも味わわされて、王がやっと雄茎を引き抜いても脱け殻のようにくったりと、何の反応も示すことはない。
やはり体力的にはまだ一回が限度のようだ。欲望の尽きせぬままに二度も姦してしまったが、初めてで二度はさすがに辛かっただろう………。
愛おしさとともに、幾許かの悔恨が込み上げ、冥王はナシェルを掻き抱いて頬をさすった。幾筋もの涙の跡が、王子の味わった苦痛を物語っている。
「いい子だったね………終わりにしよう」
「………………、」
目を泳がせて、ナシェルは見上げてきた。長い睫毛に縁取られたそれは、泣き濡れて真っ赤に充血していたが、群青色の光彩だけは曇ることがない。
冥王はその蒼い眼差しのなかに、己に対する恐怖と、凶行を貫徹したことに対する抗議の色を、確かに見出した。王が初めて目にする眼差しだった。
無理もない……。
だが、王子の目線での抗議は長くは続かなかった。彼はすぐに思い直したように目を伏せるという形で、それを隠したのだ……。
次に見上げてきたとき、王子の眼差しのなかにもう反骨の意図は微塵も感じられなかった。かわりにあったのは、悲壮なまでの決意と、愛慕の色だった。
どれほどの苦難を経ても、己は王と共に在らねばならぬのだという諦観なのか。
義務感なのか。
愛に応えようとする素直さなのか。
或いはその、すべてなのだろう。
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