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第一章 愛証
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しおりを挟むナシェルにとって彼は父であり、半身ともいうべき存在。
この世界に生まれて、冥王以外の同族を知らずに育った。
いくら激しい凌辱を受けた後とて、親愛の情をこの一事だけをもって捨て去ることはできないのだ。ましてや、禍々しい行為とともに与えられたのが、あの絶大な神の力であれば、なおのこと………。
「ほ………んと……に、お………終わっ……たの……?」
王子はしゃくりあげながら、か細い声を絞り出した。脳裏ではまだあの業苦が続いているような錯覚に囚われているのだろう。
「も、……もぅ、しない……?」
「ああ。もうしないよ……」
王は囁いた。それを聞いた王子が僅かな安堵の表情を浮かべて腕の中で頽れ、夢のない深い眠りに堕ちてゆく様をつぶさに観察しながら、王は付け加えた。
「今宵は、これで終わりにしておこう。そなたはまだ慣れていないから……」
本当は一晩中抱きたいのだが。
冥王は、眠る王子の、さまざまな液に穢れた体を優しく拭き清めた。
淡いすみれ色に色づいた後孔に優しく膏薬を塗ってやる。己の欲望を埋め込んだときの、あの感動が甦る。
時間をかけてこの日のために、少しづつ指を入れ馴らしてきたつもりだったが、やはり出血させてしまった……そのことは済まなかったと反省している。
膏薬をのせた指で丹念に手当てするうち、深い眠りに移行しようとしている王子の躯が強張り、幽かに声が漏れた。
「ちちうえ、………、」
可愛らしい声で何かうわごとを呟くと、王子は再び、昏睡に落ちて行った。
王は眠るナシェルに口づけの雨を降らせ、慈愛を込めて掛け布を着せかけ、己はローブを羽織って、天幕を出た。
とたん、凄まじい風が頬を擦り、王の黒髪を舞いあげる。
……そなたには、これからもっともっと沢山のものをあげよう。
愛と、神司。そして支配と歓楽……。
これから永い永い時間をかけてゆっくりと、そなたを、余の魂の傍へと、近づけていこう。
そなたの躯に余の所有物たる証を刻みこんだ今、吾らの道は完全にひとつに繋がったのだよ。
余の神司を浴びた瞬間、そなたも感じたであろう。
そなたがその小さな足で軽やかに歩んできた小径が、余の歩む大道へと重なるのを。
これは余とそなたの共に歩むべき道への、第一歩に過ぎぬ。
共に歩もう。何も恐れることはない。もしどうしても怖いならば、眸を閉じていなさい。
そなたの手を引き、導いてやるから………。
冥王は感慨を込めてそう独白し、満ち足りた表情で、焚火の踊る、酒宴の輪の中に加わっていくのだった。
過去編 第一章「愛 証」了
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