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第三章 蝶の行方
26※
「ならばちゃんと強請れるようになるまで教えてやるだけのこと」
そしてまだいきり立つ前の王子の、萎えて下がっている中心を掴んで手荒く玩弄しはじめる。
「っぁ――あ!! 嫌だ……い、やぁ」
苦しみと悦楽の綯い交ぜになった悲鳴が、途端に王子の唇から迸る。
王はナシェルの分身への愛撫を執拗に繰り返し、睾丸を強く握るなどして彼を苦痛に泣き喘がせた。
王子の体はその思惟とは裏腹に薔薇色に上気してゆき、はりつめた性器はたちまち白濁をこぼしはじめる。
王はしかしナシェルが極みに達しないよう注意深く加減し、時間をかけていたぶるのだった。
突起の尖端からあふれた白蜜を典雅な指で強くこすりあげる。王子は耐え難い父の指の蠢きに失神寸前にまで高められ、しかし決して絶頂に堕ちることは許されずに、気品に満ちた眦を濡らして狂い悶える。
いやあ、いや、嫌だ、と拒否の言葉を吐いていた唇からはいつしか意味のある言葉は聞こえなくなり、代わりに細長い悶え声が聞かれ始めた。
卓上に立てた膝をひくひくと喜悦に奮わせて、本来聡明であるはずの眼差しは王を通り越して、ありもしない虚空の楽園を凝視しているかのように焦点をずらしはじめる。
冥王がまとめていた両手首に自由を与えても、もう抵抗が返ってくることは無かった。
両手が自由になったことにすら気づいておらぬのであろう、細い両手を頭上に投げ出したまま、ナシェルは信じ難い愛撫が加えられている下半身を痙攣するように波打たせ、開ききった唇から断続的な嬌声を撒き散らして、泣いた。
こすられていた尖端部から王の指が離れたかと思うや、それがそのまま後庭に宛がわれた。
一息に三本の指が挿入される。反対側の手がふたたびナシェルのはりつめた弓形を覆い包む。今度は前と後ろ同時に、悪逆的な愛撫が再開された。
「っひぁ、あ、ぁう、っあ―――ん…!」
たくさんの指輪の嵌った冥王の冷たい指は、ナシェルの内部で獰猛な生物のように蠢く。
狂わされ、悲痛に満ちた善がり声を上げるナシェルの耳に、王が何事かを吹き込む。
王子は息も絶え絶えに、朦朧とした眼差しを王に向け、だらしなく開いた唇でとうとう求められるままに隷属の言葉を吐いた。
「はぁ……はぁ……お――お情けを、くださいませ、我がきみ、」
「もっと具体的に申してみよ」
「いれて…もういれて。…あついの――いっぱい出して……中に、父上の……」
しどけなく虚ろな泣願に、王はようやく眼を細めてナシェルの下肢から手を放し、己の儀礼用の衣装を寛げた。
大きくそそり立った屹立が綻び出でるや、ナシェルは蒼くうるんだ瞳を暗い待望に輝かせ、みずから進んで割り開いた脚を踏みしめて尻を上げ、準備の整った秘部を父に晒した――。
ナシェルの先走りの蜜でてらてらと濡れ光っているその場所に、聳り立つものをあてがうと、王は見せしめのようにゆっくりと己を進め容れる。
「ああああ――、ん……!」
まだ成神と呼ぶには頼りない、ナシェルの若々しい背がしなり、悲鳴があがる。
王がそのまま抽送をはじめると、ナシェルは奥処を突き上げられる底無しの快楽に錯乱し、感極まった声を上げて先に放精てた。
竜首の燭台のほのかな明かりの下、王の熱い躯がナシェルの白い太腿の裏側にぶつかる淫らな音だけが、室内に響く。
先に果てたナシェルの腕が、がくりと円卓の下にぶらさがる。
力無いその腕を持ち上げ、ナシェルの体を丸く包むように抱え込んだ王は、徐々に突き上げを深め、最後は一息に狙い澄ました場所に穿ち入れて、ナシェルの欲しがったものを柔襞の奥へと注ぎ込んだ――。
満ち足りたあえかな喘ぎを漏らし、瀕死の蝶のように胸を上下させているナシェルの頬を、冥王は撫でる。
繋げた下肢はそのままに、王子のわななく唇を啄み、諭すようにゆっくりと云い聞かせるのだった。
「分かっただろう、――そなたの体はね、所詮、余以外の者から愛されることができるようには出来ておらぬのだよ。
それが分かったのなら、もう興味本位で相手を漁ることなどせずに、余の用意した褥の中でのみ乱れるがよい」
ナシェルは熱い睦いに疲れ果て、なかば放心状態でそれを聞いていた。
王は汗みずくのナシェルの体を己の長衣でくるみ、呼吸が落ち着くまで長椅子に横座りにさせて、まるで子猫をあやすように王子を介抱した。
ナシェルは王の神司を得た満足感と、王の優しい手に対する思慕と、それでもやはり拭い去ることのできぬ王への憎悪と、定められた己の生き方への憤懣と、恐怖……そうしたありとあらゆる感情を全てひとつの胸にかかえて、どの方角に精神を進めてよいのかも分からずに、なすすべなく王の介抱を受け入れるのだった。
まだ魂は深い汚泥のような迷路の奥を彷徨っていて、出口を見いだせずにいたのだ。
――ナシェルが迷いを抱いたまま暗黒界の領主に封じられるのはこの後すぐのこと。
父を愛し、同じ強さで憎んでもいる彼が、父への稚拙な報復手段を思い立ち、やがて底無しの沼のように一時それにのめりこんでゆくまでには、
これよりまだおよそ百年の歳月を待たねばならない。
第三章 蝶の往方 了
そしてまだいきり立つ前の王子の、萎えて下がっている中心を掴んで手荒く玩弄しはじめる。
「っぁ――あ!! 嫌だ……い、やぁ」
苦しみと悦楽の綯い交ぜになった悲鳴が、途端に王子の唇から迸る。
王はナシェルの分身への愛撫を執拗に繰り返し、睾丸を強く握るなどして彼を苦痛に泣き喘がせた。
王子の体はその思惟とは裏腹に薔薇色に上気してゆき、はりつめた性器はたちまち白濁をこぼしはじめる。
王はしかしナシェルが極みに達しないよう注意深く加減し、時間をかけていたぶるのだった。
突起の尖端からあふれた白蜜を典雅な指で強くこすりあげる。王子は耐え難い父の指の蠢きに失神寸前にまで高められ、しかし決して絶頂に堕ちることは許されずに、気品に満ちた眦を濡らして狂い悶える。
いやあ、いや、嫌だ、と拒否の言葉を吐いていた唇からはいつしか意味のある言葉は聞こえなくなり、代わりに細長い悶え声が聞かれ始めた。
卓上に立てた膝をひくひくと喜悦に奮わせて、本来聡明であるはずの眼差しは王を通り越して、ありもしない虚空の楽園を凝視しているかのように焦点をずらしはじめる。
冥王がまとめていた両手首に自由を与えても、もう抵抗が返ってくることは無かった。
両手が自由になったことにすら気づいておらぬのであろう、細い両手を頭上に投げ出したまま、ナシェルは信じ難い愛撫が加えられている下半身を痙攣するように波打たせ、開ききった唇から断続的な嬌声を撒き散らして、泣いた。
こすられていた尖端部から王の指が離れたかと思うや、それがそのまま後庭に宛がわれた。
一息に三本の指が挿入される。反対側の手がふたたびナシェルのはりつめた弓形を覆い包む。今度は前と後ろ同時に、悪逆的な愛撫が再開された。
「っひぁ、あ、ぁう、っあ―――ん…!」
たくさんの指輪の嵌った冥王の冷たい指は、ナシェルの内部で獰猛な生物のように蠢く。
狂わされ、悲痛に満ちた善がり声を上げるナシェルの耳に、王が何事かを吹き込む。
王子は息も絶え絶えに、朦朧とした眼差しを王に向け、だらしなく開いた唇でとうとう求められるままに隷属の言葉を吐いた。
「はぁ……はぁ……お――お情けを、くださいませ、我がきみ、」
「もっと具体的に申してみよ」
「いれて…もういれて。…あついの――いっぱい出して……中に、父上の……」
しどけなく虚ろな泣願に、王はようやく眼を細めてナシェルの下肢から手を放し、己の儀礼用の衣装を寛げた。
大きくそそり立った屹立が綻び出でるや、ナシェルは蒼くうるんだ瞳を暗い待望に輝かせ、みずから進んで割り開いた脚を踏みしめて尻を上げ、準備の整った秘部を父に晒した――。
ナシェルの先走りの蜜でてらてらと濡れ光っているその場所に、聳り立つものをあてがうと、王は見せしめのようにゆっくりと己を進め容れる。
「ああああ――、ん……!」
まだ成神と呼ぶには頼りない、ナシェルの若々しい背がしなり、悲鳴があがる。
王がそのまま抽送をはじめると、ナシェルは奥処を突き上げられる底無しの快楽に錯乱し、感極まった声を上げて先に放精てた。
竜首の燭台のほのかな明かりの下、王の熱い躯がナシェルの白い太腿の裏側にぶつかる淫らな音だけが、室内に響く。
先に果てたナシェルの腕が、がくりと円卓の下にぶらさがる。
力無いその腕を持ち上げ、ナシェルの体を丸く包むように抱え込んだ王は、徐々に突き上げを深め、最後は一息に狙い澄ました場所に穿ち入れて、ナシェルの欲しがったものを柔襞の奥へと注ぎ込んだ――。
満ち足りたあえかな喘ぎを漏らし、瀕死の蝶のように胸を上下させているナシェルの頬を、冥王は撫でる。
繋げた下肢はそのままに、王子のわななく唇を啄み、諭すようにゆっくりと云い聞かせるのだった。
「分かっただろう、――そなたの体はね、所詮、余以外の者から愛されることができるようには出来ておらぬのだよ。
それが分かったのなら、もう興味本位で相手を漁ることなどせずに、余の用意した褥の中でのみ乱れるがよい」
ナシェルは熱い睦いに疲れ果て、なかば放心状態でそれを聞いていた。
王は汗みずくのナシェルの体を己の長衣でくるみ、呼吸が落ち着くまで長椅子に横座りにさせて、まるで子猫をあやすように王子を介抱した。
ナシェルは王の神司を得た満足感と、王の優しい手に対する思慕と、それでもやはり拭い去ることのできぬ王への憎悪と、定められた己の生き方への憤懣と、恐怖……そうしたありとあらゆる感情を全てひとつの胸にかかえて、どの方角に精神を進めてよいのかも分からずに、なすすべなく王の介抱を受け入れるのだった。
まだ魂は深い汚泥のような迷路の奥を彷徨っていて、出口を見いだせずにいたのだ。
――ナシェルが迷いを抱いたまま暗黒界の領主に封じられるのはこの後すぐのこと。
父を愛し、同じ強さで憎んでもいる彼が、父への稚拙な報復手段を思い立ち、やがて底無しの沼のように一時それにのめりこんでゆくまでには、
これよりまだおよそ百年の歳月を待たねばならない。
第三章 蝶の往方 了
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