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3章:襲撃編

聖女レイナの予知 前編

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シリルが学園を退学して、約1年半が過ぎたころ人界のセロウノ大陸では魔界の魔族の噂が本格的に広まっていた。 それは、皇国からの留学生である髪色がピンクブロンドのレイナを聖女と崇め、彼女の夢見の予知により魔物の氾濫等が的中していたのである。 
そして、今回彼女の見た夢は、来る武道大会の日に、闘技場に魔界の魔族が襲撃してくるという内容であった。


ここは王都の王宮の会議室。
各国の国王や宰相に要人、そしてギルドマスターに聖女レイナ、勇者レツ、魔道国家の学園長のアドルフが集まっている。

「して、聖女様の予知夢で、魔界の魔族が襲撃してくるという話じゃが、本当なのか?」と発言したのは王国の王。
「はい、夢でいつものように女神様が現れておっしゃっておりました。 
 それに、今までの魔物の襲撃も魔界の魔族による仕業だったと今回おっしゃってました」と上目遣いで儚さに言うレイナである。

そんな彼女の言葉と姿に、皆が等しく守ってあげたいと思ってしまうほど儚さを感じているのである。

「国王様、レイナの予知夢のおかげで、いままでの襲撃を事前に防げたことは事実です。」と力強く言うのは勇者レツだ。 この1年半の間に魔物の氾濫が相次ぎ、レツや第二王子エグバート含む仲間もギルド隊員達と協力して討伐に向かっていた。 今や大陸に住む人間達は、レツを勇者として認めている。

「確かに未然に防ぎ、各国の民の被害はほとんどない。 
 だが、フローシア王よ、魔界の魔族となると話は変わるのじゃが。 魔皇帝はなんといっておる。」と王国の国王だ。

「魔皇帝によれば、魔界の魔族は意味もなく襲撃する事はなく、また現、魔王がこの世界に興味がないといっていたという記録がありますゆえ、考えにくいかと思います」

「うむ、確かに、伝承によればそのような話だったはずじゃ。 
 それに魔物の襲撃も魔界の魔族というのも歴史的に考えにくいのじゃ。 のう、フローシア王よ」
「ええ、今は考えにくいかと」

「そ、そんな。 予知夢では女神様がおっしゃっていました。 
 今回の襲撃の目的は、学生および各国の戦闘力の低下ともおっしゃっておられました。 
 これがまず第一段階目とも。 私は、とても恐ろしく、夢から覚めた時は涙がとまりませんでした」といって、涙をながして震えているレイナだ。

そんな様子を見ると居たたまれない周り。
「レイナ、泣かないで。 僕が絶対レイナを守るから。」といってレイナの肩に腕を廻して彼女を自分のほうへ寄せるの勇者レツだ。
「ありがとう、レツ」

そんな2人のやり取りは、若い将来有望な男女の仲の良さに微笑ましくもあり、健気な姿に感動する者達が大多数だ。

「じゃがのう。」という国王はどうしたものかと悩ましい。
「国王様、レイナの予知夢が嘘だとおっしゃられるのですか!」と声を高らかにあげる勇者レツだ。
「そうは言っておらんのじゃ」
「では、先ほどお話にあった魔皇帝とはどなたなんですか?」と聞く勇者レツだ。

その言葉に、しまったという顔をする王国の国王、フローシア王とギルドマスターだ。
それ以外の者は、みな勇者レツと同じで、聞いた事のない呼称に同じ顔をしている。 
魔大陸の存在は、歴代の王国の王、魔道国家の王とギルドマスターしかしらないのであった。

「魔皇帝とは、このセロウノ大陸とは別の大陸を治めている王の呼称でな、その国の者達は魔術を扱うのじゃ。 
 魔道国家にも魔術を扱う生徒が留学生でおるじゃろ。 その者達の故郷じゃ」と苦し紛れの説明をする国王であった。

「もし、聖女レイナの予知夢が本当ならば、魔皇帝が治める国の者達の協力を得る事はできないのですか?」といったのは海洋国家の国王だった。
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