CHEAT~銃声が止んだら~

マド

文字の大きさ
2 / 6

1:新参兵の入隊

しおりを挟む
青年は目をつむっていた。
何も視界に入らなければ、今この時どんな状況に置かれているか分かりはしないだろう、と頭の中で思考を巡らせていた。
静寂。静寂。静寂…………トンッ

発砲音が何処からか聞こえた。この音は…グロックじゅう…17?まあいい…にしても、今日はやけに静かだな…。
少し気を抜けば地獄か夢の中に落ちそうだ。いや、もしかしたら地獄はおわって、違う世界かも。なんて思い、薄く目を開けたそこは…

「まあ…一緒だよな。」
見慣れた天井に部屋の冷たさ。机の上にはたまった課題の紙が。壁に立てかけてあるライフル。
「……………」
殺風景にも、これが青年の部屋である。おそらく違う部屋にいる他の奴等も同じようなものであろう。青年は体を起こし、迷彩の戦闘服を羽織った。

ここはとある軍事施設である。
時は****年。世界は荒廃し、人は武器をその手に取った。血を浴び、権力と名誉を求め続け勝利の二文字にその身を焦がした。最初の、事の始まりの、起源の主は誰か。誰も知る由はない。なぜならそこに最初から存在していたからである。誰が始めたわけでもない。虫はカエルに食われる前に告げた。ヒトは武器を取る。勝利の先はなんだ、と。カエルは蛇に告げた。蛇は鷹に。そして鷹は人間に。連鎖は断ち切ることができなかった。
何百年経ち、何人か力を持つ者がその手を挙げ、そこから幾つかの軍が出来上がった。ただ勝つことを目指す軍もいれば、世界修正のためにできた軍もある。
青年が所属している軍はどちらかといえば後者である。軍としての強さもなかなかのもので、隊員同士の仲も悪くない。仲間の中の関係の亀裂は、信用度、作戦にも響くからである。
この軍には五つ得意分野のようなものでわけられ、そこから班が作られていく。だいたい10人くらいで1班。しかし青年が所属している班は五人。それには理由があるのだが、それはまた別の話。

「隊長、いる?」

「…ノックもせずにドアを開けて言うことか?」

少し高身長の隊員と思しき人が"隊長"と呼ばれた青年の部屋に入ってきた。ノックはしていない。
「入隊試験の紙、持ってきた。今日でしょ?新参兵がこの班に入るのは。」
「……ああ。顔はまだ見てねぇけど、この班ってことは…」
「ん……ねぇ、もしかしたらさ。2人とも脱出できたのかな。あんときから、一度も見てない。…もう10年でしょう?」
意味ありげにつぶやき、片手に持っていた紙を隊長の机に置いた。
「誰であろうと関係ない。俺たちはただ、戦うしかないんだろ。」
「相変わらず…まあいいや。先に行ってるよ。あんたも寝てないで早く来なよ。」
まるで隊長への口の利き方だと思えないと青年は呆れていた。しかし憎めない。時間がないのも事実、気だるげに髪をわしゃわしゃとかき、息の詰まる1人の部屋を出て行った。


蛍光灯の切れそうな廊下を歩いていく。ここはA棟の二階。三階はまた違う班が。一階は救急室や多目的室のようなものが。階段を下りて出口へ向かっていると

「あ、隊長。こんにちは。どちらへ?」
「ああ、新参兵の試験の準備の声かけをと思ってな。副隊長がメディには伝えたみたいだけど、俺はエイムに言っておこうと思って。タクト、お前は聞いたか?」

"タクト"と呼ばれた少年は少し風変わりであった。背中にはたくさん巻紙の詰め込まれたリュックを背負っていて、彼の髪は真っ白。黒目である場所は真っ赤だった。別に何かの病気というわけではない。
「ええ、用意できましたよ。といっても紙とペン出しただけなんですけどね。」
「作戦をどうやってたてるかだからな。それでいいだろ。じゃあ、俺はこれで。」
「あ、はい。また後で!」

屋外に出るとさすがに銃声がよく聞こえてきてしまう。好ましいものではないが。それもそのはず、外では射撃やその他もろもろ、訓練が行われているからである。かなり広大な敷地を持っている軍であるため、設備が割といい。他の軍に所属したことないから比較はできないが。これからもずっと。
その中の、銃声が最も聞こえる場所を目指した。

「エイム、ちょっといいか?」
「………?」

"エイム"と呼ばれたのも少年である。少し小さめの背に薄い金色の短い髪。スコープから離した左目は碧く光っていた。右目は茶色である。
「新参兵入隊試験の準備についてで。」
「もうできてるよ?的はあっちにあるし。銃の整備もできてる。」
「さすがだな。副隊長が来たのか?」
「…ううん、隊長知ってるでしょ?僕、勘がいいの。」
表情は変えずにエイムは喋った。装填をしながら、周囲の隊員の状況を確認していた。
「じゃあいいか。また後で。」

思ってたよりもスムーズに情報は伝わってたみたいで助かった。さて、俺も準備するか。
どんな新参兵が入ってくるのかねぇ。


                  *  *  *

「それでは、少し待っていたまえ。君の班の隊員が案内をしにくる。」
「はいっ。ありがとうございます………」

司令官が部屋から出て行った。当然だが緊張している。自分が今いるのが軍隊の敷地内なんていつ撃たれてもおかしくない気がしてきたぞ…。
でもはっきり言って問題はそこじゃなかったりして。

実を言うと、今このときから以前の記憶がない。

強制的にここに連れてこられたとか、そうじゃなくて。なぜなら自分の足でここまできた気はするのだ。で、人が出てきて、待ってたみたいなことを言われて。でも服はボロボロで、なぜこんなどこの誰かもわからない人を受け入れたのか。…ダメだ、わからん。今は隊員さんが来るのを待つしかない。

なんとなくチリっと痛んだ首の左に手をやった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...