【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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政略見合い

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「薫子さん、ご無沙汰しています。いやぁ、すっかりお綺麗になられて……見違えましたね」

 その言葉に薫子は呆気にとられた。

 う、そ……遼ちゃんが、そんなことを言うなんて……

 あのガキ大将だった遼からそんな言葉を聞く日が来るなんて、あの頃の薫子には想像すらできなかった。

 ううん。今……目の前にしていてさえも、信じられない。

「ふふっ、この子ったら薫子さんに会える今日の日をずっと心待ちにしてたんですよ。なんせ、初恋の君ですものねぇ」
「ばっ!!!か、母様っ……!!!」
「でも薫子さんにお会いして、すぐに納得できたわ。こんな素敵なお嬢さんがうちの義娘になるかと思うと、私もとても楽しみですわ」

 肩までのショートボブにベージュのパンツスーツ、胸元には白いカサブランカのコサージュをつけた遼の母親である逸子が、遼を楽しそうにからかった。

 遼は顔を真っ赤にして逸子を一瞬睨みつけた後、大きな咳払いをして真面目な顔に戻った。

 ……え。初恋の君、って……私のこと?

 薫子は突然の逸子からの告白に、目を丸くした。

「遼くんは、薫子とは幼稚舎から小等部まで同じだったそうだね」

 恐らく、釣書を見て言っているのであろう。龍太郎が、まるで薫子のことをよく知っているかのような口振りで遼に話し掛けた。

 「えぇ。その後、父の仕事の都合でアメリカへと渡り、最近日本に戻ってきました。大学は、薫子さんと学部は違いますが、同じ青海学園大学の国際政治経済学部に転入しました。」

 うそ……

 それは……悠と大和と同じ学部だった。

 もし、私と悠が一緒にいるところを見られたら……遼ちゃんを通じて、お父様達にも私達の関係が暴かれてしまう。

 そんなことになったら、薫子と悠は大学卒業後に海外に住む計画どころか、大学在学中にすべてを終わりにされてしまうに違いなかった。

「薫子さん、驚かせてすみません……でも、再会はドラマチックな方が感動も大きいかと思いまして」

 遼が、少し悪戯っぽい笑顔を薫子に向けた。その表情は、薫子に幼い頃の記憶を彷彿させた。

「はっはっは……確かにそうだな」

 愉快そうに声を上げる父の姿に、薫子は不快な気持ちがどうしようもなく募った。
 
 その後、お互いの経歴を確認したり、今後結婚した後にどう事業を絡ませていくのかなどの話で盛り上がった。

 薫子は微笑み、時々頷いたりはしていたが、心の中では一刻も早くこの場から抜け出し、悠の元へと駆け出したい気持ちで一心だった。

 遼は仕事の話にかなり詳しく、積極的に事業プランについても語っていた。

「いやはや、なんとも頼もしい婿養子だ。将来が楽しみだわい」

 龍太郎は遼を仕事のパートナーとして高く評価しており、それは即ち薫子の結婚相手として認めたということでもあった。

 心ここにあらず、といった薫子に気遣ったばあやが遠慮がちに声を掛けた。

「旦那様、お仕事の話はこれぐらいにされて……」

 その言葉に、薫子はようやくお見合いから解放される、とホッとした。

「そろそろお若い二人だけで、お話してもらったらいかがでしょうか」

 ば、ばあやっっ……

 それは、束の間の安息に過ぎなかった。

「おぉ、すまんすまん……すっかり仕事の話で盛り上がってしまって、薫子にはつまらない思いをさせてしまったな」

 プライベートでは一切薫子に気遣うことなどない龍太郎ですら、上機嫌に娘への気遣いを見せた。

 皆は、龍太郎の言葉を合図に料亭を後にした。

 仲居が薫子と遼を庭へと案内して去っていき、ふたりだけになった。

 どうしよう……誰もいなくなっちゃった……

 楓やもみじが有終の美を誇るように鮮やかに紅葉した庭園を、薫子は遼の少し後ろを黙って歩いた。

 美しい紅葉を抜けると、先程縁側から見えた立派な池へと出た。そこに架かっている、小さいけれど細かな細工の施された朱塗りの橋を渡ると、中央で遼が立ち止まり、突然大きくあくびをしながら伸びをした。

「ふぁーっ!!おっさん相手にすんの、疲れるぜ……」

 え……

 薫子が驚いて見上げると、遼が振り向いた。

 そこには、薫子の知るちょっと意地悪そうにニヤッと笑う遼がいた。
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