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求めて、いいんだ
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薫子の唇に悠が口づける。
「嬉しい……」
悠の甘く蕩けるような笑顔でそう言われて、薫子は恥ずかしい気持ちを上回る程の狂しさで、心の底から自分も嬉しいと思った。
白昼夢を見ているかのような、焦点の合わない微睡んだ瞳で気怠げに躰を横たえる薫子は、20歳になっても未だ少女のようなあどけなさの残っていた悠の知るそれとはもう、違っていた。彼女の表情、息遣い、彼女を纏っている匂いですら変化していく様が感じられる。
自分の腕の中で薫子は、性的な意味での大人の女へと脱皮しているのだと思うと、悠は高揚感に包まれた。
「……じゃあ、指……入れるから、痛かったら、言って……」
薫子はそのひと言で夢から醒めたように躰をピクッとさせた。ほんわかしかけた雰囲気が、一気に緊張感に包まれる。
悠の細い指が薫子の蜜の溢れる入口の周りを撫でながら、徐々に中心に向かって近づいていく。
ドクドクドクドクドク……
不安と緊張で胸の前で手を握り、瞳を閉じていた薫子は、手の上に感触を覚えてピクッとして視線を下に向けた。悠の大きな手が、優しく薫子の手を包み込むように重なっている。
悠、私を安心させようとして……
その先には、悠の心配そうな顔が薫子を見つめている。
フゥーッと息を吐き出した後、大丈夫だから……と言うように笑顔で頷いた。緊張で少し引き攣った笑顔にはなってしまったが、悠はそれを確認して止まっていた指をまた動かし始めた。
大丈夫……悠がいれば。
「入るよ……」
つぷ…という音ともに、侵されたことのない純潔の扉が愛しい人の指によって開けられる。
「いっっ!!!」
たいっっ!!!
思わず薫子が声を上げる。
「痛い?」
指を止め気遣う悠に、申し訳ない気持ちになる。悠に気遣って欲しくなくて、絶対に弱音は吐かないつもりだったのに、つい声が出てしまった。
「まだ、大丈夫……」
額に浮き出る汗を感じながら、薫子は無理やり笑顔をつくった。
「無理、しないで……」
そう言いながら悠は慎重に、更に指を進める。
痛いっっ……
今度は声に出さず、心の奥で痛みをやり過ごす。今まで経験してきた痛みの中で、群を抜く痛さだ。
悠に全てを、捧げたい……
その信念と愛情を胸に、不安と恐れと痛みに挑む。
「入ったよ……」
そのひと言でふぅっと止めていた呼吸を吐き出す。
「じゃあ次……」
悠の中指が既に入口付近を撫でている。
えっ……次、って……ふたりが繋がるためにこんなセオリーを通り抜けなければいけないだなんて、知らなかった……
薫子は絶望的な気持ちになった。
「薫子、無理しなくていい。今日出来なければ、また機会はあるだろうし」
本当は、今すぐにでも薫子と繋がりたいけど……
猛る欲情を懸命に抑え込み、悠が慰める。
薫子にもそれは、悠の精一杯の優しさだってことは痛い程分かった。
悠の欲情を受け止めたい、その気持ちももちろんある。けれど、何よりも薫子の心の中を占めていたもの、それは……
私の中のナニカが、訴えてる。ここでやめたら、後悔するって……
お見合いで遼と再会して、相変わらずの強引さに不安になったのかもしれない。
「今じゃなきゃ……だめ、なの……悠と、どうしても……繋がりたいの」
「はぁぁぁ……薫子……」
悠が大きく溜息をついた。
えっ、私……悠を怒らせるようなこと、言ったの?
「俺を……殺す気?」
「えっ?」
「君は……どれだけ俺を夢中にさせたら気が済むの?」
悠が、重なった薫子の手をぎゅっと上から握った。その顔は先程よりも更に真っ赤になり、耳まで染まっている。瞳は誘うように濡れて潤み、唇もツヤツヤとしていてゾクゾクするほどの妖艶さを纏っていた。
「嬉しい……」
悠の甘く蕩けるような笑顔でそう言われて、薫子は恥ずかしい気持ちを上回る程の狂しさで、心の底から自分も嬉しいと思った。
白昼夢を見ているかのような、焦点の合わない微睡んだ瞳で気怠げに躰を横たえる薫子は、20歳になっても未だ少女のようなあどけなさの残っていた悠の知るそれとはもう、違っていた。彼女の表情、息遣い、彼女を纏っている匂いですら変化していく様が感じられる。
自分の腕の中で薫子は、性的な意味での大人の女へと脱皮しているのだと思うと、悠は高揚感に包まれた。
「……じゃあ、指……入れるから、痛かったら、言って……」
薫子はそのひと言で夢から醒めたように躰をピクッとさせた。ほんわかしかけた雰囲気が、一気に緊張感に包まれる。
悠の細い指が薫子の蜜の溢れる入口の周りを撫でながら、徐々に中心に向かって近づいていく。
ドクドクドクドクドク……
不安と緊張で胸の前で手を握り、瞳を閉じていた薫子は、手の上に感触を覚えてピクッとして視線を下に向けた。悠の大きな手が、優しく薫子の手を包み込むように重なっている。
悠、私を安心させようとして……
その先には、悠の心配そうな顔が薫子を見つめている。
フゥーッと息を吐き出した後、大丈夫だから……と言うように笑顔で頷いた。緊張で少し引き攣った笑顔にはなってしまったが、悠はそれを確認して止まっていた指をまた動かし始めた。
大丈夫……悠がいれば。
「入るよ……」
つぷ…という音ともに、侵されたことのない純潔の扉が愛しい人の指によって開けられる。
「いっっ!!!」
たいっっ!!!
思わず薫子が声を上げる。
「痛い?」
指を止め気遣う悠に、申し訳ない気持ちになる。悠に気遣って欲しくなくて、絶対に弱音は吐かないつもりだったのに、つい声が出てしまった。
「まだ、大丈夫……」
額に浮き出る汗を感じながら、薫子は無理やり笑顔をつくった。
「無理、しないで……」
そう言いながら悠は慎重に、更に指を進める。
痛いっっ……
今度は声に出さず、心の奥で痛みをやり過ごす。今まで経験してきた痛みの中で、群を抜く痛さだ。
悠に全てを、捧げたい……
その信念と愛情を胸に、不安と恐れと痛みに挑む。
「入ったよ……」
そのひと言でふぅっと止めていた呼吸を吐き出す。
「じゃあ次……」
悠の中指が既に入口付近を撫でている。
えっ……次、って……ふたりが繋がるためにこんなセオリーを通り抜けなければいけないだなんて、知らなかった……
薫子は絶望的な気持ちになった。
「薫子、無理しなくていい。今日出来なければ、また機会はあるだろうし」
本当は、今すぐにでも薫子と繋がりたいけど……
猛る欲情を懸命に抑え込み、悠が慰める。
薫子にもそれは、悠の精一杯の優しさだってことは痛い程分かった。
悠の欲情を受け止めたい、その気持ちももちろんある。けれど、何よりも薫子の心の中を占めていたもの、それは……
私の中のナニカが、訴えてる。ここでやめたら、後悔するって……
お見合いで遼と再会して、相変わらずの強引さに不安になったのかもしれない。
「今じゃなきゃ……だめ、なの……悠と、どうしても……繋がりたいの」
「はぁぁぁ……薫子……」
悠が大きく溜息をついた。
えっ、私……悠を怒らせるようなこと、言ったの?
「俺を……殺す気?」
「えっ?」
「君は……どれだけ俺を夢中にさせたら気が済むの?」
悠が、重なった薫子の手をぎゅっと上から握った。その顔は先程よりも更に真っ赤になり、耳まで染まっている。瞳は誘うように濡れて潤み、唇もツヤツヤとしていてゾクゾクするほどの妖艶さを纏っていた。
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