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決意
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悠は後ろのポケットに入っていた封筒を差し出した。
「これ、は....?」
「開けてみて」
そこには......
「航空券......」
羽田発ーロンドン着の片道オープン航空券が1枚、入っていた。
「本当は...行ったこともない、誰も手の届かない土地に行きたかったけど、それでは生活することすらままならないから......母が永住権をもっていて、俺はイギリスで生まれたからイギリス国籍も持ってるんだ。だから、向こうで働くことが出来る。
イギリスに住んでいた時に世話になった家庭教師が大学で教授をしているんだけど、研究の手伝いをしないかと誘われた。もちろん、俺の両親には俺たちのことは一切話さないという条件付きで話しておいた。住まいは大学寮を無償で提供してくれると言っている。今住んでいるところよりは格段に狭いし、不自由な思いはするだろうけど......しばらく耐えて欲しい。
何があっても君は、俺が一生かけて守るから。信じて、ついて来て欲しい......」
固い決意を宿した深い漆黒の眼差しが、薫子の瞳を熱く貫ぬく。
悠、そこまで具体的に考えてくれていたんだ......
どこか夢物語のように感じていた駆け落ちが、今、目の前で色濃く現実として塗り替えられていくのを感じた。現実として目の前に迫った途端、大きな不安が襲いかかってくる。
私が、自分で言い出したことなのに......
恐い、恐い......恐くて仕方がない。
本当に、そんなこと出来るの? 私、が......
「かお、るこ...?」
悠の言葉に対して何も言わない薫子に、悠が心配そうな眼差しを向けた。
「不安?」
悠が薫子の躰を包み込み、優しく髪を撫でる。悠の逞しい腕と匂いに包まれ、強張っていた薫子の全身から次第に力が抜けていく。
いつでも悠は、私の気持ちを誰よりも理解してくれる。
「うん......」
素直な言葉を吐くと、気持ちが少し軽くなった気がした。
「薫子が不安に思うのは当然だ。でも、ずっと俺は君の傍にいる。どんなことがあっても......」
......そうだ、私は悠を信じてついていくと決めたんだ。
安堵から涙腺が緩み、潤んだ瞳で悠を見上げ、縋り付いた。
「悠......ずっとそばにいて。私は、貴方のいない人生なんて考えられない。
悠と一緒なら......どんなことでも乗り越えていけるって信じてる」
悠が航空券に目を落とす。
「まだ日にちは決めてない......薫子が望むなら、今すぐにでも俺は君を連れて旅立つつもりだ」
悠の情熱に押され、薫子はそうしたい気持ちでいっぱいだったが、かろうじて押し止まった。
もし、悠と日本を離れてしまったら.....二度と戻れないかもしれない。
そう考えた途端、真っ先に浮かんだのは美姫のことだった。
美姫がオーストリアから帰って来たら、真っ先に会って話したい。それに、美姫が元気でいるのかちゃんと確かめたい。
何があったのか、話してもらえるかどうかは...分からないけど。こんなモヤモヤした気持ちのまま、悠と駆け落ちなんて出来ない。
「旅立つ日なんだけど......」
薫子はそう言いながら、頭の中でカレンダーと両親のスケジュールについて考えを巡らしていた。
「成人式の日は、どうかな?
......旅立つ前に、皆で一緒に成人のお祝いを迎えたいの」
薫子の言葉に悠が頷いた。
「そうだね......」
成人式での再会が......もしかしたら、最後の集まりになるのかもしれない......
そんな思いが、悠の言葉に重みを増した。
薫子が旅立ちの日を成人式に選んだのには、もうひとつ理由があった。
青海学園の成人式は櫻ロイヤルホテルで行われ、そこに両親は毎年招待されている。普段は外泊をすることなど滅多にない彼らが、成人式の日だけは決まってホテルのスイートルームで宿泊するのだった。
おそらく、駆け落ちするのに一番絶好の日。これを逃したら、もう他にはチャンスはないかもしれない......
成人の日は11日。あと10日もしたら、私はもうここにはいないんだ......
そう思うと、緊張感に包まれながらも、どこか不思議な気がした。
「これ、は....?」
「開けてみて」
そこには......
「航空券......」
羽田発ーロンドン着の片道オープン航空券が1枚、入っていた。
「本当は...行ったこともない、誰も手の届かない土地に行きたかったけど、それでは生活することすらままならないから......母が永住権をもっていて、俺はイギリスで生まれたからイギリス国籍も持ってるんだ。だから、向こうで働くことが出来る。
イギリスに住んでいた時に世話になった家庭教師が大学で教授をしているんだけど、研究の手伝いをしないかと誘われた。もちろん、俺の両親には俺たちのことは一切話さないという条件付きで話しておいた。住まいは大学寮を無償で提供してくれると言っている。今住んでいるところよりは格段に狭いし、不自由な思いはするだろうけど......しばらく耐えて欲しい。
何があっても君は、俺が一生かけて守るから。信じて、ついて来て欲しい......」
固い決意を宿した深い漆黒の眼差しが、薫子の瞳を熱く貫ぬく。
悠、そこまで具体的に考えてくれていたんだ......
どこか夢物語のように感じていた駆け落ちが、今、目の前で色濃く現実として塗り替えられていくのを感じた。現実として目の前に迫った途端、大きな不安が襲いかかってくる。
私が、自分で言い出したことなのに......
恐い、恐い......恐くて仕方がない。
本当に、そんなこと出来るの? 私、が......
「かお、るこ...?」
悠の言葉に対して何も言わない薫子に、悠が心配そうな眼差しを向けた。
「不安?」
悠が薫子の躰を包み込み、優しく髪を撫でる。悠の逞しい腕と匂いに包まれ、強張っていた薫子の全身から次第に力が抜けていく。
いつでも悠は、私の気持ちを誰よりも理解してくれる。
「うん......」
素直な言葉を吐くと、気持ちが少し軽くなった気がした。
「薫子が不安に思うのは当然だ。でも、ずっと俺は君の傍にいる。どんなことがあっても......」
......そうだ、私は悠を信じてついていくと決めたんだ。
安堵から涙腺が緩み、潤んだ瞳で悠を見上げ、縋り付いた。
「悠......ずっとそばにいて。私は、貴方のいない人生なんて考えられない。
悠と一緒なら......どんなことでも乗り越えていけるって信じてる」
悠が航空券に目を落とす。
「まだ日にちは決めてない......薫子が望むなら、今すぐにでも俺は君を連れて旅立つつもりだ」
悠の情熱に押され、薫子はそうしたい気持ちでいっぱいだったが、かろうじて押し止まった。
もし、悠と日本を離れてしまったら.....二度と戻れないかもしれない。
そう考えた途端、真っ先に浮かんだのは美姫のことだった。
美姫がオーストリアから帰って来たら、真っ先に会って話したい。それに、美姫が元気でいるのかちゃんと確かめたい。
何があったのか、話してもらえるかどうかは...分からないけど。こんなモヤモヤした気持ちのまま、悠と駆け落ちなんて出来ない。
「旅立つ日なんだけど......」
薫子はそう言いながら、頭の中でカレンダーと両親のスケジュールについて考えを巡らしていた。
「成人式の日は、どうかな?
......旅立つ前に、皆で一緒に成人のお祝いを迎えたいの」
薫子の言葉に悠が頷いた。
「そうだね......」
成人式での再会が......もしかしたら、最後の集まりになるのかもしれない......
そんな思いが、悠の言葉に重みを増した。
薫子が旅立ちの日を成人式に選んだのには、もうひとつ理由があった。
青海学園の成人式は櫻ロイヤルホテルで行われ、そこに両親は毎年招待されている。普段は外泊をすることなど滅多にない彼らが、成人式の日だけは決まってホテルのスイートルームで宿泊するのだった。
おそらく、駆け落ちするのに一番絶好の日。これを逃したら、もう他にはチャンスはないかもしれない......
成人の日は11日。あと10日もしたら、私はもうここにはいないんだ......
そう思うと、緊張感に包まれながらも、どこか不思議な気がした。
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