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彼女の決意、私の思い
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それは別段、薫子にとって驚くことではなかった。秀一なら、愛する美姫が凌辱されたことに対し、穏やかでいられるはずがないと思った。彼なら、その男に対し、それ相応の報いを受けさせるであろうことも。
美姫はその時のことを思い出したのか、瞳をきつく閉じ、口に手を当てた。
それを見た薫子は、ハッとした。
もしかして、美姫はその現場にいたの!?
まさか......その復讐に、美姫も加わっていたなんて、そんなこと......ない、よね!?
あの優しく思いやりがあり、誰にも愛される美姫がそんなことするとはどう考えてもありえないと思いつつも、その推測を踏み躙ることも出来ずにいた。
「秀一さんが礼音に復讐した後......久美---私の大学の友人が彼を訪ねて、その現場を見たの。
彼女......ずっと、礼音に思いを寄せてて......礼音の為に、犯人に復讐を誓ったって......」
『久美』という名前は、美姫から何回か聞いたことがあった。大学寮で隣同士の部屋だったことから仲良くなり、よく一緒に行動するようになったと言っていた。
薫子は礼音とは一度しか会ったことはなかったが、その態度から美姫に気がありそうな雰囲気だった。自分の好きな人が友達を好きになった挙句レイプし、その報復を受けた現場に居合わせるのは、どんな気持ちなのだろう。
薫子の心は、深く沈んだ。
「久美は、お姉さんの元夫である報道カメラマンに頼み、私たちのことを嗅ぎ回らせたの。私たちがいるウィーンにまで追ってきて......」
その時に、あの写真が撮られたんだ......
あれは、ホテルの向かい側のビルから撮られたものだった。確かに......一大学生である彼女がウィーンに行って美姫達を密かに尾行し、盗撮するなんて、出来るはずない。
元親戚とはいえ、復讐のためにプロまで雇って偵察させてただなんて......
久美の復讐心を恐ろしく感じている薫子に、美姫が更に告げた。
「久美は、週刊誌が発売されるその前に......私の両親にも、同じ写真を送りつけたの」
「ッッ......」
それを聞き、薫子の全身に鳥肌がたった。
なんて、酷いことを......
弟が娘と交わっている写真を送りつけられた美姫の両親のことを思うと、胸が塞がれた。しかもその写真は、週刊誌のように目隠しされておらず、ふたりの顔が鮮明に分かるようになっていただろう。
「それから久美は、それらの写真に加え、礼音の現場の写真も私に送りつけてきて......復讐だと、言った。
そして、週刊誌に載せ、私たちの関係を世間に露呈させると」
凄まじいまでの久美の復讐心に、薫子は寒気が止まらなかった。
「秀一さんが、久美を説得しようとしたけれど......無理だった」
美姫は柔らかい表現を使っているが、秀一はきっと久美を脅迫し、週刊誌に記事を載せないよう迫ったであろうことは容易に想像がついた。
「それで、私たちは......秀一さんが以前からピアノの練習の為に購入していたログハウスへと向かったの」
そこで美姫は、大きく息を吐いた。
「正直......その時の私は、両親や世間に自分たちの関係が知られてしまったことへの不安よりも、秀一さんとこれからふたりきりで過ごせるのだという高揚感の方が強かった。
誰にも認められなくてもいい、ただ秀一さんだけいてくれればいいと......そう、思っていたの」
あまりにも激しい美姫の秀一への愛情に、薫子は圧倒された。
美姫はその時のことを思い出したのか、瞳をきつく閉じ、口に手を当てた。
それを見た薫子は、ハッとした。
もしかして、美姫はその現場にいたの!?
まさか......その復讐に、美姫も加わっていたなんて、そんなこと......ない、よね!?
あの優しく思いやりがあり、誰にも愛される美姫がそんなことするとはどう考えてもありえないと思いつつも、その推測を踏み躙ることも出来ずにいた。
「秀一さんが礼音に復讐した後......久美---私の大学の友人が彼を訪ねて、その現場を見たの。
彼女......ずっと、礼音に思いを寄せてて......礼音の為に、犯人に復讐を誓ったって......」
『久美』という名前は、美姫から何回か聞いたことがあった。大学寮で隣同士の部屋だったことから仲良くなり、よく一緒に行動するようになったと言っていた。
薫子は礼音とは一度しか会ったことはなかったが、その態度から美姫に気がありそうな雰囲気だった。自分の好きな人が友達を好きになった挙句レイプし、その報復を受けた現場に居合わせるのは、どんな気持ちなのだろう。
薫子の心は、深く沈んだ。
「久美は、お姉さんの元夫である報道カメラマンに頼み、私たちのことを嗅ぎ回らせたの。私たちがいるウィーンにまで追ってきて......」
その時に、あの写真が撮られたんだ......
あれは、ホテルの向かい側のビルから撮られたものだった。確かに......一大学生である彼女がウィーンに行って美姫達を密かに尾行し、盗撮するなんて、出来るはずない。
元親戚とはいえ、復讐のためにプロまで雇って偵察させてただなんて......
久美の復讐心を恐ろしく感じている薫子に、美姫が更に告げた。
「久美は、週刊誌が発売されるその前に......私の両親にも、同じ写真を送りつけたの」
「ッッ......」
それを聞き、薫子の全身に鳥肌がたった。
なんて、酷いことを......
弟が娘と交わっている写真を送りつけられた美姫の両親のことを思うと、胸が塞がれた。しかもその写真は、週刊誌のように目隠しされておらず、ふたりの顔が鮮明に分かるようになっていただろう。
「それから久美は、それらの写真に加え、礼音の現場の写真も私に送りつけてきて......復讐だと、言った。
そして、週刊誌に載せ、私たちの関係を世間に露呈させると」
凄まじいまでの久美の復讐心に、薫子は寒気が止まらなかった。
「秀一さんが、久美を説得しようとしたけれど......無理だった」
美姫は柔らかい表現を使っているが、秀一はきっと久美を脅迫し、週刊誌に記事を載せないよう迫ったであろうことは容易に想像がついた。
「それで、私たちは......秀一さんが以前からピアノの練習の為に購入していたログハウスへと向かったの」
そこで美姫は、大きく息を吐いた。
「正直......その時の私は、両親や世間に自分たちの関係が知られてしまったことへの不安よりも、秀一さんとこれからふたりきりで過ごせるのだという高揚感の方が強かった。
誰にも認められなくてもいい、ただ秀一さんだけいてくれればいいと......そう、思っていたの」
あまりにも激しい美姫の秀一への愛情に、薫子は圧倒された。
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