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不意打ち
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「でも......気持ちだけじゃ、駄目なんです。
私には、大和という夫がいます。両親を裏切ることは出来ません。財閥だって、今の仕事だって守っていかなくてはならない。
気持ちだけじゃ、どうしようも出来ないんです」
秀一の眼鏡のレンズが、妖しく光った。
「貴女の言葉からは、義務感しか感じられません。
美姫、貴女はあの男を愛しているのですか」
美姫は喉を詰まらせた。
「彼、は......大切な、私の夫です」
「立場ではありません。私は、愛しているのかと聞いているのです。
答えはシンプルです、イエスかノーか」
そんな、シンプルな答えなんかじゃない......
躊躇う美姫に、秀一がフッと笑みを浮かべる。
「答えは、ノーですね」
「い、イエス!です!」
顔を上げた美姫を、美しいライトグレーの瞳が射抜く。
「即答出来ないのなら、それはノーです」
秀一の言葉に美姫は言い淀み、唇を噛んだ。
秀一の指が鎖骨に触れ、美姫の躰がピクンと跳ねた。
「ぁ......」
思わず悩ましげな声を上げてしまったことに自分でも驚き、固まっていると、秀一の指は鎖骨から躰の横のラインをなぞるように下りていく。ゾクゾクゾクッと震えが縦に走り、一気に躰が熱を持つ。
「や、止めてくださいっっ!!」
美姫は秀一の手を振り払った。
「私が欲しいのでしょう?
ここからでも匂いますよ、あなたの欲に濡れた蜜が溢れ出す香りが」
言われて美姫は顔を真っ赤にし、目を逸らした。ますます躰が火照り、下半身がドクドクと疼き出す。『違う』という抵抗の言葉すら、上げられずにいた。
秀一が距離を詰める。彼の吐息はもう、耳の側まできている。
「貴女だって分かっているでしょう? 美姫、貴女を満足させられるのは私しかいないのだと。
フフッ、当然です。私がそうなるように躾けたのですから」
それからわざと息を吐きかけた。ブルッと躰を震わせた美姫は涙目になり、躰の疼きに必死に耐えた。
「確かに、今の私にはもう......大和に恋愛感情としての愛情はありません。
でも、家族として彼を支えていくと決めたんです。彼には、私が必要なんです」
先ほど電話越しに聞いた大和の声が、耳に残っていた。美姫の膝に泣き縋る大和の姿が、脳裏にこびりついていた。
突き放すことなど、裏切ることなど......出来ない。
美姫は、ギュッと瞼を閉じた。
瞼に、熱い吐息がかかる。
「本当に、そうでしょうか」
「ぇ?」
思わず瞳を開けると、目の前の秀一が意地悪そうに目を細めた。
「美姫のことを『愛している』と言いながら、他の女を抱くことができるような男を、本当に貴女は一生支えていくことが出来ますか。
クッ......『俺の嫁だ』など、よく言えたものです。自分は浮気しておきながら貴女が私と会うことは許さないだなんて、自分勝手で小さい男ですよ、羽鳥大和という男は」
どう、して......秀一さん、知って......
愚問だと知りながら、思わずにはいられなかった。
秀一の瞳に深く見つめられる。
「貴女は若く、美しく、そして気高い。私は、貴女の潤いに満ちていた蜜が枯れ、可憐な花弁が落ちていく様を見ていられないのです。
私なら貴女を再び、美しく咲かせることが出来ます」
それは、抗いがたい誘惑だった。
私には、大和という夫がいます。両親を裏切ることは出来ません。財閥だって、今の仕事だって守っていかなくてはならない。
気持ちだけじゃ、どうしようも出来ないんです」
秀一の眼鏡のレンズが、妖しく光った。
「貴女の言葉からは、義務感しか感じられません。
美姫、貴女はあの男を愛しているのですか」
美姫は喉を詰まらせた。
「彼、は......大切な、私の夫です」
「立場ではありません。私は、愛しているのかと聞いているのです。
答えはシンプルです、イエスかノーか」
そんな、シンプルな答えなんかじゃない......
躊躇う美姫に、秀一がフッと笑みを浮かべる。
「答えは、ノーですね」
「い、イエス!です!」
顔を上げた美姫を、美しいライトグレーの瞳が射抜く。
「即答出来ないのなら、それはノーです」
秀一の言葉に美姫は言い淀み、唇を噛んだ。
秀一の指が鎖骨に触れ、美姫の躰がピクンと跳ねた。
「ぁ......」
思わず悩ましげな声を上げてしまったことに自分でも驚き、固まっていると、秀一の指は鎖骨から躰の横のラインをなぞるように下りていく。ゾクゾクゾクッと震えが縦に走り、一気に躰が熱を持つ。
「や、止めてくださいっっ!!」
美姫は秀一の手を振り払った。
「私が欲しいのでしょう?
ここからでも匂いますよ、あなたの欲に濡れた蜜が溢れ出す香りが」
言われて美姫は顔を真っ赤にし、目を逸らした。ますます躰が火照り、下半身がドクドクと疼き出す。『違う』という抵抗の言葉すら、上げられずにいた。
秀一が距離を詰める。彼の吐息はもう、耳の側まできている。
「貴女だって分かっているでしょう? 美姫、貴女を満足させられるのは私しかいないのだと。
フフッ、当然です。私がそうなるように躾けたのですから」
それからわざと息を吐きかけた。ブルッと躰を震わせた美姫は涙目になり、躰の疼きに必死に耐えた。
「確かに、今の私にはもう......大和に恋愛感情としての愛情はありません。
でも、家族として彼を支えていくと決めたんです。彼には、私が必要なんです」
先ほど電話越しに聞いた大和の声が、耳に残っていた。美姫の膝に泣き縋る大和の姿が、脳裏にこびりついていた。
突き放すことなど、裏切ることなど......出来ない。
美姫は、ギュッと瞼を閉じた。
瞼に、熱い吐息がかかる。
「本当に、そうでしょうか」
「ぇ?」
思わず瞳を開けると、目の前の秀一が意地悪そうに目を細めた。
「美姫のことを『愛している』と言いながら、他の女を抱くことができるような男を、本当に貴女は一生支えていくことが出来ますか。
クッ......『俺の嫁だ』など、よく言えたものです。自分は浮気しておきながら貴女が私と会うことは許さないだなんて、自分勝手で小さい男ですよ、羽鳥大和という男は」
どう、して......秀一さん、知って......
愚問だと知りながら、思わずにはいられなかった。
秀一の瞳に深く見つめられる。
「貴女は若く、美しく、そして気高い。私は、貴女の潤いに満ちていた蜜が枯れ、可憐な花弁が落ちていく様を見ていられないのです。
私なら貴女を再び、美しく咲かせることが出来ます」
それは、抗いがたい誘惑だった。
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