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SS7 「うれしいひな祭り」
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あとは遼が来るのを待つだけだということで、子供達も手伝ってパーティーの料理をダイニングテーブルに並べていく。
ケーキのように層が重なったちらし寿司は、まるで花畑のようだ。その横には小さな口でも頬ばれるぐらいの小さな手鞠寿司が飾られている。アボカドとミニトマト、錦糸卵とほぐしたカニカマを載せたグラスに盛られたポテトサラダ、可愛いピックが刺してある様々な種類のピンチョス。
「うわぁー、うまそう!」
テーブルから覗き込む大和に、美姫がフフッと笑う。
「みんなきてから、たべようねぇ♪」
その途端インターホンが鳴り、大和を先頭にして美姫と手を繋がれた薫子が玄関に向かって駆け出した。大和が扉を開ける。
「すごーい、やまとくんちからもちー!!」
はしゃぐ美姫と尊敬の眼差しで見つめる薫子に、へへっと嬉しそうに大和が笑いかけると、その先で遼が叫んだ。
「なんか、すっげーあまいにおいするー!」
その途端、佳那を片手に抱いていた遼の母、逸子が遼を軽く叩く。
「いってぇな、かーちゃん!」
「先に挨拶でしょうが!ほら、美姫ちゃんたちに迷惑かけないのよ」
それを聞き、美姫と薫子と大和はビシッと姿勢を正し、行儀よく挨拶した。
『こんにちはー』
「まぁっ、みんなちゃんと挨拶できてえらいわねぇ。青海幼稚園は躾がしっかりしてるって聞いたから入れたんだけど、なんでうちの子だけ相変わらずがさつなのかしら」
「うっせぇ、かーちゃん!もうかえれって!」
そこへ、佐和がエプロンを手で拭きながら現れた。
「まぁま、どうぞおあがりください」
「いえいえ、私たちはこれで帰りますから」
すると、逸子の腕に大人しくおさまっていた佳那が暴れ出した。
「にいにー!にいにといくー!」
「だめよ、佳那ぁ。私たちはこれから買い物にいくんだから」
「いくー!いくのぉー!!」
背中をえび反りにし、泣き叫ぶ佳那を必死で説得する逸子を美姫は驚いたように見つめ、薫子はハラハラしながら見つめていた。
そんな中、大和が逸子に声をかけた。
「じゃあ、いっしょにきたらいいんじゃねーの?」
「えっ!!ぜったいやだ!!」
大和の提案に、遼が即座に反応する。
「かながいるとうるせーし、ついてくるし、ぜんぜんあそべねーもん」
「こらっ、遼!そんな意地悪言わないの!! ありがとう、大和くん。でも、佳那いると迷惑かけちゃうから帰るわぁ」
「えっ、いいんですよ。もし用事で出掛けるんでしたら、佳那ちゃんこちらでお預かりしますよ?」
佐和が気遣ってそう言ったが、逸子は首を振った。
「うちのは美姫ちゃんと違って、ほんっと大変なんですよ。それに、遼がいるといっつも兄妹ゲンカになっちゃうし、みんなも落ち着いて遊べないんで退散します。
遼!あんた、お家の人のことよく聞くのよ?迷惑かけないでね、わかった?」
「ったく、わかったから。はやくいけよ!」
早く帰らせようとする遼に、逸子はハハーンとしたり顔をした。
「あんた、可愛い女の子たちの前だからってかっこつけたいんでしょ?ったくもう、生意気なんだからー。そんなとこが可愛いけど」
「もういいから、はやくいけって!」
「いやぁー、かないくーっ!いくのぉー!!」
再び暴れ出した佳那を抱え、逸子が後手に手を振って出て行く。
「はいはい、じゃあ後で迎えに来るから!」
「あ、逸子さ……」
佐和の言葉は、逸子が扉を閉めたバタンという音で掻き消されてしまった。
ケーキのように層が重なったちらし寿司は、まるで花畑のようだ。その横には小さな口でも頬ばれるぐらいの小さな手鞠寿司が飾られている。アボカドとミニトマト、錦糸卵とほぐしたカニカマを載せたグラスに盛られたポテトサラダ、可愛いピックが刺してある様々な種類のピンチョス。
「うわぁー、うまそう!」
テーブルから覗き込む大和に、美姫がフフッと笑う。
「みんなきてから、たべようねぇ♪」
その途端インターホンが鳴り、大和を先頭にして美姫と手を繋がれた薫子が玄関に向かって駆け出した。大和が扉を開ける。
「すごーい、やまとくんちからもちー!!」
はしゃぐ美姫と尊敬の眼差しで見つめる薫子に、へへっと嬉しそうに大和が笑いかけると、その先で遼が叫んだ。
「なんか、すっげーあまいにおいするー!」
その途端、佳那を片手に抱いていた遼の母、逸子が遼を軽く叩く。
「いってぇな、かーちゃん!」
「先に挨拶でしょうが!ほら、美姫ちゃんたちに迷惑かけないのよ」
それを聞き、美姫と薫子と大和はビシッと姿勢を正し、行儀よく挨拶した。
『こんにちはー』
「まぁっ、みんなちゃんと挨拶できてえらいわねぇ。青海幼稚園は躾がしっかりしてるって聞いたから入れたんだけど、なんでうちの子だけ相変わらずがさつなのかしら」
「うっせぇ、かーちゃん!もうかえれって!」
そこへ、佐和がエプロンを手で拭きながら現れた。
「まぁま、どうぞおあがりください」
「いえいえ、私たちはこれで帰りますから」
すると、逸子の腕に大人しくおさまっていた佳那が暴れ出した。
「にいにー!にいにといくー!」
「だめよ、佳那ぁ。私たちはこれから買い物にいくんだから」
「いくー!いくのぉー!!」
背中をえび反りにし、泣き叫ぶ佳那を必死で説得する逸子を美姫は驚いたように見つめ、薫子はハラハラしながら見つめていた。
そんな中、大和が逸子に声をかけた。
「じゃあ、いっしょにきたらいいんじゃねーの?」
「えっ!!ぜったいやだ!!」
大和の提案に、遼が即座に反応する。
「かながいるとうるせーし、ついてくるし、ぜんぜんあそべねーもん」
「こらっ、遼!そんな意地悪言わないの!! ありがとう、大和くん。でも、佳那いると迷惑かけちゃうから帰るわぁ」
「えっ、いいんですよ。もし用事で出掛けるんでしたら、佳那ちゃんこちらでお預かりしますよ?」
佐和が気遣ってそう言ったが、逸子は首を振った。
「うちのは美姫ちゃんと違って、ほんっと大変なんですよ。それに、遼がいるといっつも兄妹ゲンカになっちゃうし、みんなも落ち着いて遊べないんで退散します。
遼!あんた、お家の人のことよく聞くのよ?迷惑かけないでね、わかった?」
「ったく、わかったから。はやくいけよ!」
早く帰らせようとする遼に、逸子はハハーンとしたり顔をした。
「あんた、可愛い女の子たちの前だからってかっこつけたいんでしょ?ったくもう、生意気なんだからー。そんなとこが可愛いけど」
「もういいから、はやくいけって!」
「いやぁー、かないくーっ!いくのぉー!!」
再び暴れ出した佳那を抱え、逸子が後手に手を振って出て行く。
「はいはい、じゃあ後で迎えに来るから!」
「あ、逸子さ……」
佐和の言葉は、逸子が扉を閉めたバタンという音で掻き消されてしまった。
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