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初めての共同作業
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クロード様に、家庭的なお料理を作って差し上げたいですわ。
ルチアは貯蔵庫から材料を手に取ると、厨房へと向かった。
「何を、作るのだ?」
クロードが、興味深そうに並べられた食材を見つめる。
「私の国でよく作られております、グーラシュを」
「あぁ、グーラッシュ、牛煮込みシチューだな。我が国でも、一般的な家庭料理のようだな」
「グレートブルタン国とシュタート王国では、食材と使われるスパイスに少し違いがあるんですのよ」
「ルチアの作る家庭料理か。楽しみだ」
クロード様に、喜んでいただけると嬉しいですわ……
頬を緩めたルチアに、クロードが食材を手に取りながら尋ねる。
「で、私は何をすればいいのだ?」
「えっと……では、野菜を洗っていただけますか」
「分かった」
クロードがシャツの袖を捲り上げ、細いけれど逞しい腕にルチアの胸が高鳴る。ぎこちない仕草で野菜を洗うクロードに、愛しさがこみあげる。
いつも、何事も完璧にこなすクロード様のこんなお姿が見られるなんて……嬉しいですわ。
「出来たぞ」
どこか満足そうな顔でルチアを見つめるその姿に、可愛い……とルチアは思わず微笑んだ。
「では次に、玉ねぎを切っていただいてもよろしいですか?」
「どうすればいい?」
あ。もしかして包丁を触ったことも、ないのでしょうか?
ルチアはクロードの横に立ち、包丁を握ると説明する。
「包丁はこのように握りまして、材料を抑えるときには手を切らないように、指を丸めて抑えて下さいませ」
クロードはルチアの手元を見ながら、真剣に包丁を握る。
「これは……剣を扱うより、難しいな」
「あ、クロード様……」
ルチアは自分の包丁を置くと、まな板に対して平行に立っていたクロードの後ろに回り、腰に手を添えると少し右へ向かせた。
「こうなさいますと、材料を切るときに真っ直ぐ切ることができますのよ」
クロードがルチアの方へと振り返り、片方の口角を上げる。
「まさかルチアに、後ろから抱きつかれるとはな」
「え。えぇっ……!?」
ルチアは、腰に添えていた手を慌ててバッと離した。
「不意打ちというのも、なかなかいいものだ」
愉しそうに告げるクロードの言葉に、ルチアは顔を紅らめていく。
この城に来てから、クロード様にはからかわれてばかりですわ……
まるで新婚夫婦のようですわね……そう思ったルチアの火照りは、おさまることはなかった。
あとは、お肉が柔らかくなるまで煮込むだけですわね。
ルチアは、グーラシュの入った鍋に蓋をすると、他に何かやることはないか考えた。
サラダもご用意いたしましたし、パンは朝、料理長が焼いてくれたものがありますし……他にご用意しても、食べ切れないですわよね。
デザートは……
そう考えたルチアは、ふとクロードの言葉を思い出した。
『これはデザートとして、後でもらうことにしよう』
その途端に再びルチアの躰が熱を持ち始め、中心が甘く疼く。
もう……クロード様は私をからかって、冗談でおっしゃっただけなのに本気にするだなんて。
「これで、出来たのか?」
背後から響くクロードの声に、ルチアはビクリと肩を震わせた。
「あ、いえ……まだ、お肉が柔らかくなるまで煮込まないといけませんので」
「そうか。料理とは時間がかかるものなのだな。今までは出されたものを食すだけだったが、これからは見方が変わりそうだ」
クロードの言葉に嬉しくなって、ついルチアの声が弾んでしまう。
「ふふっ、クロード様の初めてをご一緒に体験することができて、嬉しく思います」
「あぁ。お前と過ごす時間は、いつも私に新たな世界を見せてくれる」
そんな風に思って頂けるなんて……嬉しいですわ。
僅かに染まるルチアの頬を、クロードが大きな両手で優しく包み込んだ。
「だが、こんなに時間がかかるとは……デザートまで、待ちきれなくなった」
ルチアは貯蔵庫から材料を手に取ると、厨房へと向かった。
「何を、作るのだ?」
クロードが、興味深そうに並べられた食材を見つめる。
「私の国でよく作られております、グーラシュを」
「あぁ、グーラッシュ、牛煮込みシチューだな。我が国でも、一般的な家庭料理のようだな」
「グレートブルタン国とシュタート王国では、食材と使われるスパイスに少し違いがあるんですのよ」
「ルチアの作る家庭料理か。楽しみだ」
クロード様に、喜んでいただけると嬉しいですわ……
頬を緩めたルチアに、クロードが食材を手に取りながら尋ねる。
「で、私は何をすればいいのだ?」
「えっと……では、野菜を洗っていただけますか」
「分かった」
クロードがシャツの袖を捲り上げ、細いけれど逞しい腕にルチアの胸が高鳴る。ぎこちない仕草で野菜を洗うクロードに、愛しさがこみあげる。
いつも、何事も完璧にこなすクロード様のこんなお姿が見られるなんて……嬉しいですわ。
「出来たぞ」
どこか満足そうな顔でルチアを見つめるその姿に、可愛い……とルチアは思わず微笑んだ。
「では次に、玉ねぎを切っていただいてもよろしいですか?」
「どうすればいい?」
あ。もしかして包丁を触ったことも、ないのでしょうか?
ルチアはクロードの横に立ち、包丁を握ると説明する。
「包丁はこのように握りまして、材料を抑えるときには手を切らないように、指を丸めて抑えて下さいませ」
クロードはルチアの手元を見ながら、真剣に包丁を握る。
「これは……剣を扱うより、難しいな」
「あ、クロード様……」
ルチアは自分の包丁を置くと、まな板に対して平行に立っていたクロードの後ろに回り、腰に手を添えると少し右へ向かせた。
「こうなさいますと、材料を切るときに真っ直ぐ切ることができますのよ」
クロードがルチアの方へと振り返り、片方の口角を上げる。
「まさかルチアに、後ろから抱きつかれるとはな」
「え。えぇっ……!?」
ルチアは、腰に添えていた手を慌ててバッと離した。
「不意打ちというのも、なかなかいいものだ」
愉しそうに告げるクロードの言葉に、ルチアは顔を紅らめていく。
この城に来てから、クロード様にはからかわれてばかりですわ……
まるで新婚夫婦のようですわね……そう思ったルチアの火照りは、おさまることはなかった。
あとは、お肉が柔らかくなるまで煮込むだけですわね。
ルチアは、グーラシュの入った鍋に蓋をすると、他に何かやることはないか考えた。
サラダもご用意いたしましたし、パンは朝、料理長が焼いてくれたものがありますし……他にご用意しても、食べ切れないですわよね。
デザートは……
そう考えたルチアは、ふとクロードの言葉を思い出した。
『これはデザートとして、後でもらうことにしよう』
その途端に再びルチアの躰が熱を持ち始め、中心が甘く疼く。
もう……クロード様は私をからかって、冗談でおっしゃっただけなのに本気にするだなんて。
「これで、出来たのか?」
背後から響くクロードの声に、ルチアはビクリと肩を震わせた。
「あ、いえ……まだ、お肉が柔らかくなるまで煮込まないといけませんので」
「そうか。料理とは時間がかかるものなのだな。今までは出されたものを食すだけだったが、これからは見方が変わりそうだ」
クロードの言葉に嬉しくなって、ついルチアの声が弾んでしまう。
「ふふっ、クロード様の初めてをご一緒に体験することができて、嬉しく思います」
「あぁ。お前と過ごす時間は、いつも私に新たな世界を見せてくれる」
そんな風に思って頂けるなんて……嬉しいですわ。
僅かに染まるルチアの頬を、クロードが大きな両手で優しく包み込んだ。
「だが、こんなに時間がかかるとは……デザートまで、待ちきれなくなった」
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