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ワンコと2軒目
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まさか、柚木くんがまたその話をしてくるとは思っていなかった私は、突然の質問にたじろいだ。
「えっ!? あ、う、うん。もしかして、年上好き、とか?」
あぁ、なんで私はいつも余計なこと言っちゃうんだろう。そんなつもり、ないのに。
「え、原田先輩。そんな風に思ってたんですか?」
柚木くんが瞳を揺らし、悲しそうな表情で私を見つめる。
そんな目で、見ないで……
「そ、んなこと……思ってない」
柚木くんは私の言葉を受けて、ホッとしたように安堵の息を洩らした。
「僕、先輩には誤解されたくないんです。
僕は本当に……原田先輩のことが好きだから」
そう言って真っ直ぐに私を見つめる柚木くんが、なんだかいつもよりもかっこよく見えて……正視、できない。
私の気持ちを見透かされそうだから。ズルい私の本心を知って、愛想つかされちゃうんじゃないかってこわいから。
でも、なんでこわいって思うんだろう……
「最初は、綺麗だし、すごく頼りになる先輩だな、って思ってました。それにいつも明るくて笑顔で、失敗しても優しく励ましてくれて……それから原田先輩のことをお姉さんのように慕うようになりました」
柚木くんが柔らかい笑みを向けた。
お姉さん、か……
言葉を発しようとする私を目で遮り、一口カクテルを口にした後、柚木くんが話を続ける。
「でも、いつからかそれとは違う感情が芽生えてきて……先輩に頭撫でられるのが嬉しかったりするのと同時に切なくなったり、抱き締められると胸が苦しくなったり……」
柚木、くん……
「あ、実は……欲情、したりもしてたんですけど……」
そう言うと、柚木くんは顔を真っ赤にして俯いた。
ど、どうして欲しいのこの子は……ここで襲えと言ってるんですか!?
「原田先輩に近づく男の人とか嫉妬したりして。仕事なのに……
今朝もそれで、先輩にたまらず聞いちゃうし……」
あぁ、あれね……
私は給湯室から帰ってきたときのことを思い出した。
「原田先輩は……こんな僕でも好き、ですか?」
柚木くんの痛くなるほどの視線と想いに圧倒される。
「わ、たしは……」
柚木くんに告白されて舞い上がっていた気持ちが、『お付き合いする』となると、急に現実的な考えが渦巻き始めた。
「柚木くんの『好き』とは違う、かも……」
「え……」
「柚木くんのこと、好きだし、可愛いと思ってる……」
し、エッチなことしたいと思ってる……
「けど……付き合う、とか恋愛に踏み出せない自分もいて……
柚木くん、まだ入社1年目で若いし、私はもう6年目でしょ。これから付き合う人とは結婚も視野に入れられるような人じゃないと、なんて……今までそんなこと考えたことなかったのに、いざとなると考えたりして。
……柚木くん、まだ結婚なんて考えられないでしょ?」
柚木くんは無言になった。
暫くの沈黙の後、小さい声が響いた。
「はい、今はまだ……」
そりゃ、そうだよね。社会人1年生の男の子に結婚とか考えられるわけないよね。
私は小さく溜息をついた。
せっかく気持ちを盛り上げる為にバーに来たのに、逆効果になっちゃった……
柚木くん、襲うつもりだったのになぁ。
柚木くんは切ない表情で俯いたまま。
「ご、めんね。柚木、くん……」
そう言って、柚木くんの肩に手を置いた。すると、柚木くんが私の手を肩から払いのけた。
え、怒った!?
と思ったら、払いのけた私の手をテーブルの上に乗せ、自分の手を重ねた。
「僕……諦められません」
「ゆ、ずき……くん?」
柚木くんは頬を赤く染めながらも、潤んだ瞳で私を切なく見つめて訴えた。
「僕、原田先輩の可愛い後輩ワンコでいいから……傍においてください。
もし、原田先輩に好きな人ができたら……その時は諦めるんで」
一瞬辛そうに眉を顰めた後、唇をキュッと結んで、私を見つめ直した。
「原田先輩が……好き、なんです」
「えっ!? あ、う、うん。もしかして、年上好き、とか?」
あぁ、なんで私はいつも余計なこと言っちゃうんだろう。そんなつもり、ないのに。
「え、原田先輩。そんな風に思ってたんですか?」
柚木くんが瞳を揺らし、悲しそうな表情で私を見つめる。
そんな目で、見ないで……
「そ、んなこと……思ってない」
柚木くんは私の言葉を受けて、ホッとしたように安堵の息を洩らした。
「僕、先輩には誤解されたくないんです。
僕は本当に……原田先輩のことが好きだから」
そう言って真っ直ぐに私を見つめる柚木くんが、なんだかいつもよりもかっこよく見えて……正視、できない。
私の気持ちを見透かされそうだから。ズルい私の本心を知って、愛想つかされちゃうんじゃないかってこわいから。
でも、なんでこわいって思うんだろう……
「最初は、綺麗だし、すごく頼りになる先輩だな、って思ってました。それにいつも明るくて笑顔で、失敗しても優しく励ましてくれて……それから原田先輩のことをお姉さんのように慕うようになりました」
柚木くんが柔らかい笑みを向けた。
お姉さん、か……
言葉を発しようとする私を目で遮り、一口カクテルを口にした後、柚木くんが話を続ける。
「でも、いつからかそれとは違う感情が芽生えてきて……先輩に頭撫でられるのが嬉しかったりするのと同時に切なくなったり、抱き締められると胸が苦しくなったり……」
柚木、くん……
「あ、実は……欲情、したりもしてたんですけど……」
そう言うと、柚木くんは顔を真っ赤にして俯いた。
ど、どうして欲しいのこの子は……ここで襲えと言ってるんですか!?
「原田先輩に近づく男の人とか嫉妬したりして。仕事なのに……
今朝もそれで、先輩にたまらず聞いちゃうし……」
あぁ、あれね……
私は給湯室から帰ってきたときのことを思い出した。
「原田先輩は……こんな僕でも好き、ですか?」
柚木くんの痛くなるほどの視線と想いに圧倒される。
「わ、たしは……」
柚木くんに告白されて舞い上がっていた気持ちが、『お付き合いする』となると、急に現実的な考えが渦巻き始めた。
「柚木くんの『好き』とは違う、かも……」
「え……」
「柚木くんのこと、好きだし、可愛いと思ってる……」
し、エッチなことしたいと思ってる……
「けど……付き合う、とか恋愛に踏み出せない自分もいて……
柚木くん、まだ入社1年目で若いし、私はもう6年目でしょ。これから付き合う人とは結婚も視野に入れられるような人じゃないと、なんて……今までそんなこと考えたことなかったのに、いざとなると考えたりして。
……柚木くん、まだ結婚なんて考えられないでしょ?」
柚木くんは無言になった。
暫くの沈黙の後、小さい声が響いた。
「はい、今はまだ……」
そりゃ、そうだよね。社会人1年生の男の子に結婚とか考えられるわけないよね。
私は小さく溜息をついた。
せっかく気持ちを盛り上げる為にバーに来たのに、逆効果になっちゃった……
柚木くん、襲うつもりだったのになぁ。
柚木くんは切ない表情で俯いたまま。
「ご、めんね。柚木、くん……」
そう言って、柚木くんの肩に手を置いた。すると、柚木くんが私の手を肩から払いのけた。
え、怒った!?
と思ったら、払いのけた私の手をテーブルの上に乗せ、自分の手を重ねた。
「僕……諦められません」
「ゆ、ずき……くん?」
柚木くんは頬を赤く染めながらも、潤んだ瞳で私を切なく見つめて訴えた。
「僕、原田先輩の可愛い後輩ワンコでいいから……傍においてください。
もし、原田先輩に好きな人ができたら……その時は諦めるんで」
一瞬辛そうに眉を顰めた後、唇をキュッと結んで、私を見つめ直した。
「原田先輩が……好き、なんです」
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