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ワンコのおもてなし
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冷蔵庫の中、チラッとしか見えなかったけど、結構綺麗に整理されてたなぁ。中身はよく分からなかったけど、ラップしてある平皿とかあった。
お醤油とか味噌もあったし、ちゃんと料理してんだ。でも、調味料は基本的なものだけだったみたいだし、よかった……
私の家に波留が来る時は、大抵外でご飯食べるか、時々私が料理するって感じで、波留にご飯作ってもらうのはこれが初めて。
どんな料理なんだろう……
シャンパンのキャップシールを切り取り、ボトルを少し斜めに傾け、コルクの上部を親指で抑えながらワイヤーを外す。
栓抜き、いらないのに……ほんとにお酒飲まないんだな。
そんな波留がまた可愛く思えた。
コルクをしっかりと固定したまま、慎重にボトルを回していく。手応えを感じた瞬間、コルクとの隙間からガスが抜ける静かな音が聞こえ、ホッと息を吐いた。この緊張感と安堵が堪らない。
そうだ、グラス……
立ち上がろうとした瞬間、ガラス戸がゆっくりと開かれ、波留がグラス片手に入ってきた。
さっすが、私の嫁♪
「美緒先輩、乾杯しましょ♪」
波留はワイングラス(シャンパングラスでないのが残念だけど、おそらくこれが唯一のお酒用のグラスなのだろう)を2つ片手に持ち、もう片方にはペリエを持っていた。
気分だけでも、ってやつね。
テーブルに置かれたワイングラスに自分でボトルからシャンパンを注ごうとすると、波留がそれを制して注いでくれた。
なんとなくそうなるんじゃないかって気はしていたけど、見事に泡が立ちまくり、泡が消えた後のグラスには3分の1程しかシャンパンが残っていなかった。
「なんか……僕、下手くそですよね、すみません……」
波留は肩を竦めて小さくし、萎縮している。
そんなところも微笑ましくて、抱き締めたくなるとか、ホント作戦なの?
「じゃ、私も……」
目で優しく(気にしないで……)と合図してから、ペリエの蓋を開け、グラスを傾けてゆっくりと注いで、波留の目の前に置いた。
「美緒先輩、ズルいです……
大人の女性見せつけられて……僕、自信なくします……」
波留はシュン……とワンコ耳を垂れた。
「そりゃ、5年多く生きてるからね、無駄に知識と経験が増えてるだけ。
さっ、乾杯しよっ!」
グラスを指に掛け、波留にも目線で促す。波留は慌ててグラスを手に取った。
「ハッピーホワイトデー♪」
全身から幸せオーラを溢れさせ、私のことを愛しく見つめながらキャラメル色の瞳を柔らかく細め、頬を緩めながらグラスを傾ける波留。
や、やだ……す、ごい……
キュンキュンした……
「……う、うん」
頬が…熱い……
グラスが重なる音を聞いてから、シャンパンを一気に喉に流し込んだ。
「じゃあ、食べ物持ってくるんで、待ってて下さいね♪」
波留はスキップでもしそうな勢いで、嬉しそうに席を立って出て行った。
「お待たせ致しました」
波留はウェイターのような口調でそう言うと、アペタイザーを優雅な仕草でテーブルに置いた。それから私の目の前に座ると落ち着かない様子で、ご主人様の様子を窺うワンコのように私の反応をジーッと見つめる。
白い平皿の上にはカボチャ、人参、じゃがいもの温野菜ときゅうり、トマト、セロリの冷野菜にバーニャカウダが添えてあった。
きゅうりを手に取り、バーニャカウダにディップして口に入れる。アンチョビの塩味とニンニクの風味が口の中にフワッと広がる。
「美味しい……」
「ほんとですか!? 嬉しいですっっ♪
初めて作ったんで、凄く不安だったんで……」
「えっ!! 作ったの!?
このバーニャカウダ、買ったのかと思ってた……波留、料理出来るんだ!」
「いや……簡単なものしか、出来ないですよ。
でも、この日の為に美緒先輩に喜んで欲しくて……準備したんです」
波留は顔を真っ赤にして俯いた。
ナニ、コノカワイイ イキモノ……
かなり、襲いたいんですけど。
お醤油とか味噌もあったし、ちゃんと料理してんだ。でも、調味料は基本的なものだけだったみたいだし、よかった……
私の家に波留が来る時は、大抵外でご飯食べるか、時々私が料理するって感じで、波留にご飯作ってもらうのはこれが初めて。
どんな料理なんだろう……
シャンパンのキャップシールを切り取り、ボトルを少し斜めに傾け、コルクの上部を親指で抑えながらワイヤーを外す。
栓抜き、いらないのに……ほんとにお酒飲まないんだな。
そんな波留がまた可愛く思えた。
コルクをしっかりと固定したまま、慎重にボトルを回していく。手応えを感じた瞬間、コルクとの隙間からガスが抜ける静かな音が聞こえ、ホッと息を吐いた。この緊張感と安堵が堪らない。
そうだ、グラス……
立ち上がろうとした瞬間、ガラス戸がゆっくりと開かれ、波留がグラス片手に入ってきた。
さっすが、私の嫁♪
「美緒先輩、乾杯しましょ♪」
波留はワイングラス(シャンパングラスでないのが残念だけど、おそらくこれが唯一のお酒用のグラスなのだろう)を2つ片手に持ち、もう片方にはペリエを持っていた。
気分だけでも、ってやつね。
テーブルに置かれたワイングラスに自分でボトルからシャンパンを注ごうとすると、波留がそれを制して注いでくれた。
なんとなくそうなるんじゃないかって気はしていたけど、見事に泡が立ちまくり、泡が消えた後のグラスには3分の1程しかシャンパンが残っていなかった。
「なんか……僕、下手くそですよね、すみません……」
波留は肩を竦めて小さくし、萎縮している。
そんなところも微笑ましくて、抱き締めたくなるとか、ホント作戦なの?
「じゃ、私も……」
目で優しく(気にしないで……)と合図してから、ペリエの蓋を開け、グラスを傾けてゆっくりと注いで、波留の目の前に置いた。
「美緒先輩、ズルいです……
大人の女性見せつけられて……僕、自信なくします……」
波留はシュン……とワンコ耳を垂れた。
「そりゃ、5年多く生きてるからね、無駄に知識と経験が増えてるだけ。
さっ、乾杯しよっ!」
グラスを指に掛け、波留にも目線で促す。波留は慌ててグラスを手に取った。
「ハッピーホワイトデー♪」
全身から幸せオーラを溢れさせ、私のことを愛しく見つめながらキャラメル色の瞳を柔らかく細め、頬を緩めながらグラスを傾ける波留。
や、やだ……す、ごい……
キュンキュンした……
「……う、うん」
頬が…熱い……
グラスが重なる音を聞いてから、シャンパンを一気に喉に流し込んだ。
「じゃあ、食べ物持ってくるんで、待ってて下さいね♪」
波留はスキップでもしそうな勢いで、嬉しそうに席を立って出て行った。
「お待たせ致しました」
波留はウェイターのような口調でそう言うと、アペタイザーを優雅な仕草でテーブルに置いた。それから私の目の前に座ると落ち着かない様子で、ご主人様の様子を窺うワンコのように私の反応をジーッと見つめる。
白い平皿の上にはカボチャ、人参、じゃがいもの温野菜ときゅうり、トマト、セロリの冷野菜にバーニャカウダが添えてあった。
きゅうりを手に取り、バーニャカウダにディップして口に入れる。アンチョビの塩味とニンニクの風味が口の中にフワッと広がる。
「美味しい……」
「ほんとですか!? 嬉しいですっっ♪
初めて作ったんで、凄く不安だったんで……」
「えっ!! 作ったの!?
このバーニャカウダ、買ったのかと思ってた……波留、料理出来るんだ!」
「いや……簡単なものしか、出来ないですよ。
でも、この日の為に美緒先輩に喜んで欲しくて……準備したんです」
波留は顔を真っ赤にして俯いた。
ナニ、コノカワイイ イキモノ……
かなり、襲いたいんですけど。
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