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1.虐げられる性
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美羽はベッドで義昭に抱かれながら、溜息を吐いた。
夫はセックスの仕方をまるで分かっていない。どこに女性の性感帯があるのか、どんな風にすれば濡れるのかなんて、気にしたことなどないのだ。セックスはただ単に自分の欲求を満たすためだけのものでしかない。
苛々を溜息で訴えてみたところで、それは義昭にとって切ない吐息としか感じていないのだろう。
義昭は、セックスに対して潔癖なところがあった。それは、初めて躰を重ねる前に「もちろん、処女だよね?」と聞かれた時に理解していたはずだった。当然、義昭は童貞で、恐らく風俗すら行ったことがなかった。
最近は、行為の際に口づけすら交わさない。口内には何憶もの細菌がいて、キスを交わすことにより……そんな説明を聞かされた時点で、夫への愛情は半減した。
力任せに揉みしだく胸の感触に、思わず顔を顰める。今は生理前で胸が張っているので、敏感になっていて痛いのだ。こんな風に揉まれて気持ちいいわけがない。一番感じる胸の先端のピンクに染まった部分は申し訳程度に摘まれ、軽く舐められ、儀式は終わる。
全く濡れていない下半身へと指が下りていくと、美羽の憂鬱度は更に増す。
花弁を広げ、指をやたらに動かすものの、肝心な部分を掠めてしまう。それは焦らしなどというテクニックではなく、美羽がどこをどうすれば感じるのか分かっていないだけだ。
自然に見えるように腰を捻り、敏感な部分に擦り付けようとしても、義昭の指がすぐに動いてしまう。まるで自分がテクニシャンであることを誇示するかのように、乾いた蜜壺に指が捻じ込まれて高速で抜き差しされ、摩擦の痛みに顔が引き攣る。
満たされない焦燥感が、不満が募り、それは少しずつ諦めと憎しみに似た怒りとなって胸の内に巣食う。
そんな時、美羽が思い描くのは、決まって類とのセックスだった。
焦らすようにして唇の輪郭を辿られ、たっぷりと濡らされたところで吸い付き合う唇の柔らかい感触。舌を絡め合い、互いの口内を探り、擽られると背筋に何本もの線が駆け巡った。飽きることなく繰り返される口づけに、やがて唇がぽってりと赤みを帯びていき、気持ち良さが何倍も増す。本当に溶けてしまうのではないかと、錯覚さえ覚えた。
白く細い華奢な手は美羽の敏感な場所を知り尽くしていて、焦らしが与えられる時間も、欲しいものが与えられるタイミングも完璧で、美羽自身よりも心得ていた。類に触れられた部分からビリビリと肌がさざめき、熱くなる。躰の内奥から濃厚な蜜が溢れ出し、自分が女であることに幸福を覚える。
もう類が胸の膨らみに触れる頃には、美羽の期待は膨らみきっていて、触れられる前に乳房の先端の蕾は紅く色づき、硬くなっていた。それを綺麗な長い指で弄びながら「可愛い……」と、クスリと笑みを浮かべられると堪らなくなる。膨らんだ唇に挟まれて揺らされるだけで、下半身がジンジンと疼いた。吸い付かれて絶頂に達することもあった。
類の指が美羽の肌をなぞり、くびれから臍、そして薄い茂みを掻き分ける頃には、べっとりと手に愛蜜が絡みつくほどになっていた。それを揶揄う時の意地悪く細められた瞳を思い出すと、胸がキュンと切なく震える。
類、欲しい……
背徳と欲望の深みに堕ちていく感覚が、興奮を呼び醒ます。
「ウッ、ハッ、ハッ、ハッ……」
現実には、義昭が美羽の上で前後運動の真っ最中だった。
まるで盛りのついた雄犬のようにガクガクと腰を振る様が、瞳を閉じていても伝わってくる。義昭のパターンはいつも決まっていて、おざなりな前戯、正常位、後背位、そして最後に正常位でフィニッシュする。
美羽のペースで進められる騎乗位や座位でなら、あるいはオーガズムを得られるかもしれないと、体位を変えてみようと試みたこともあったが、義昭は女性に主導権を握られる体位を嫌がり、いつもその体勢に入ろうとすると無理やり修正させられた。
美羽は、義昭とのセックスで絶頂に達したことは一度としてなかった。
妄想から現実へと強制送還させられた美羽は、激しく躰を揺さぶられながら低く呻いた。
「ウッ」
そう呻いてからすぐ、義昭のものが美羽の中から抜かれた。余韻を味わうことなど、まったくない。
ゴムを外して縛ると寝室の隣の浴室へと向かう。ゴミ箱に捨てた後、神経質に手を洗う音が寝室にまで響いてくる。それは、この交わりが汚れたものであったことを美羽に感じさせ、心を曇らせる。
類とは、いつまでだってベッドに寝転がってじゃれあっていられた。飽きることなくキスを交わし、互いの肌が恋しくて、いつまでも離れたくなくて抱き合っているうちに、欲情が再び熱を取り戻し、そのまま次の交わりを迎えることも度々だった。
義昭は浴室から出てくると素早く夜着を身につけ、ベッドに横たわる美羽を見下ろした。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
挨拶を交わすと、義昭は自分の寝室へと戻っていく。自分ひとりのベッドでないと眠れないのだ。セックスの為だけに美羽の寝室を訪れ、事が終わるとさっさと帰っていく。
最初はそんなやり取りを寂しく思っていたはずなのに、今では扉が閉まる音を聞くと安堵の息を吐くようになっていた。
息を潜め、次の物音に耳を澄ませる。義昭が、自分の寝室の扉を閉める音を。
夫はセックスの仕方をまるで分かっていない。どこに女性の性感帯があるのか、どんな風にすれば濡れるのかなんて、気にしたことなどないのだ。セックスはただ単に自分の欲求を満たすためだけのものでしかない。
苛々を溜息で訴えてみたところで、それは義昭にとって切ない吐息としか感じていないのだろう。
義昭は、セックスに対して潔癖なところがあった。それは、初めて躰を重ねる前に「もちろん、処女だよね?」と聞かれた時に理解していたはずだった。当然、義昭は童貞で、恐らく風俗すら行ったことがなかった。
最近は、行為の際に口づけすら交わさない。口内には何憶もの細菌がいて、キスを交わすことにより……そんな説明を聞かされた時点で、夫への愛情は半減した。
力任せに揉みしだく胸の感触に、思わず顔を顰める。今は生理前で胸が張っているので、敏感になっていて痛いのだ。こんな風に揉まれて気持ちいいわけがない。一番感じる胸の先端のピンクに染まった部分は申し訳程度に摘まれ、軽く舐められ、儀式は終わる。
全く濡れていない下半身へと指が下りていくと、美羽の憂鬱度は更に増す。
花弁を広げ、指をやたらに動かすものの、肝心な部分を掠めてしまう。それは焦らしなどというテクニックではなく、美羽がどこをどうすれば感じるのか分かっていないだけだ。
自然に見えるように腰を捻り、敏感な部分に擦り付けようとしても、義昭の指がすぐに動いてしまう。まるで自分がテクニシャンであることを誇示するかのように、乾いた蜜壺に指が捻じ込まれて高速で抜き差しされ、摩擦の痛みに顔が引き攣る。
満たされない焦燥感が、不満が募り、それは少しずつ諦めと憎しみに似た怒りとなって胸の内に巣食う。
そんな時、美羽が思い描くのは、決まって類とのセックスだった。
焦らすようにして唇の輪郭を辿られ、たっぷりと濡らされたところで吸い付き合う唇の柔らかい感触。舌を絡め合い、互いの口内を探り、擽られると背筋に何本もの線が駆け巡った。飽きることなく繰り返される口づけに、やがて唇がぽってりと赤みを帯びていき、気持ち良さが何倍も増す。本当に溶けてしまうのではないかと、錯覚さえ覚えた。
白く細い華奢な手は美羽の敏感な場所を知り尽くしていて、焦らしが与えられる時間も、欲しいものが与えられるタイミングも完璧で、美羽自身よりも心得ていた。類に触れられた部分からビリビリと肌がさざめき、熱くなる。躰の内奥から濃厚な蜜が溢れ出し、自分が女であることに幸福を覚える。
もう類が胸の膨らみに触れる頃には、美羽の期待は膨らみきっていて、触れられる前に乳房の先端の蕾は紅く色づき、硬くなっていた。それを綺麗な長い指で弄びながら「可愛い……」と、クスリと笑みを浮かべられると堪らなくなる。膨らんだ唇に挟まれて揺らされるだけで、下半身がジンジンと疼いた。吸い付かれて絶頂に達することもあった。
類の指が美羽の肌をなぞり、くびれから臍、そして薄い茂みを掻き分ける頃には、べっとりと手に愛蜜が絡みつくほどになっていた。それを揶揄う時の意地悪く細められた瞳を思い出すと、胸がキュンと切なく震える。
類、欲しい……
背徳と欲望の深みに堕ちていく感覚が、興奮を呼び醒ます。
「ウッ、ハッ、ハッ、ハッ……」
現実には、義昭が美羽の上で前後運動の真っ最中だった。
まるで盛りのついた雄犬のようにガクガクと腰を振る様が、瞳を閉じていても伝わってくる。義昭のパターンはいつも決まっていて、おざなりな前戯、正常位、後背位、そして最後に正常位でフィニッシュする。
美羽のペースで進められる騎乗位や座位でなら、あるいはオーガズムを得られるかもしれないと、体位を変えてみようと試みたこともあったが、義昭は女性に主導権を握られる体位を嫌がり、いつもその体勢に入ろうとすると無理やり修正させられた。
美羽は、義昭とのセックスで絶頂に達したことは一度としてなかった。
妄想から現実へと強制送還させられた美羽は、激しく躰を揺さぶられながら低く呻いた。
「ウッ」
そう呻いてからすぐ、義昭のものが美羽の中から抜かれた。余韻を味わうことなど、まったくない。
ゴムを外して縛ると寝室の隣の浴室へと向かう。ゴミ箱に捨てた後、神経質に手を洗う音が寝室にまで響いてくる。それは、この交わりが汚れたものであったことを美羽に感じさせ、心を曇らせる。
類とは、いつまでだってベッドに寝転がってじゃれあっていられた。飽きることなくキスを交わし、互いの肌が恋しくて、いつまでも離れたくなくて抱き合っているうちに、欲情が再び熱を取り戻し、そのまま次の交わりを迎えることも度々だった。
義昭は浴室から出てくると素早く夜着を身につけ、ベッドに横たわる美羽を見下ろした。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
挨拶を交わすと、義昭は自分の寝室へと戻っていく。自分ひとりのベッドでないと眠れないのだ。セックスの為だけに美羽の寝室を訪れ、事が終わるとさっさと帰っていく。
最初はそんなやり取りを寂しく思っていたはずなのに、今では扉が閉まる音を聞くと安堵の息を吐くようになっていた。
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