【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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3.突然の手紙

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 目覚ましの音が、頭の遠くで鳴っている。美羽は手を伸ばし、アラームを消した。躰の向きを変えようとして違和感を覚え、別の手を伸ばす。

 触れたのは、昨夜自慰で使った電気マッサージ器だった。カーテン越しに明るい陽光を浴びながら感じるそれは、美羽の罪の意識を余計に増大させた。

 のろのろと起き上がり、シーツの皺を伸ばしてベッドメイキングしてから浴室に行き、洗面所で玩具を綺麗に洗う。更に専用のスプレーをシュッと吹きかけて消毒すると、ラベンダーの香りが鼻を掠めた。ペーパータオルで拭き取ると部屋に戻り、素早くサイドテーブルの定位置へと戻した。

 熱めのシャワーを滝のように浴び、昨夜の欲情を罪悪感と共に全て洗い流していく。ぼんやりと頭にかかった靄が次第にクリアになっていくにつれ、朝の準備に向けて脳が活動し始めた。

 シャワーを浴び終えると厚手のバスタオルで丹念に水気を拭き取り、薔薇の香りのボディローションを全身にたっぷりと塗りこむ。

 類が好きだった香り。
 もう誰もこの匂いを気にする人なんていないのに、未だにこだわっている自分が可笑しくなる。

 シルク製の繊細なブラジャーとパンティーを丁寧に身につけ、姿見で全身をチェックする。

 胸もお尻も張りがあり、くびれも綺麗だ。この躰を活かすことができずに年老いていくことを想像すると、堪らなく悲しくなる。

 ドレッサーの前に座り、ドライヤーで髪を乾かしてから丹念にヘアブラシで梳かしていく。類は、美羽の髪を指で梳かすのが好きだった。

 化粧水を惜しげもなくたっぷりとつけて肌に浸透するまで待ち、美容液、乳液で保湿したら、さっと薄化粧をほどこしていく。

 どこにも出かける用事がなくても、義昭はすっぴんでいるのを良しとしないし、完璧なメイクも好まない。

 薄づきのファンデーションに自然なカーブを描く眉ライン、見えるか見えないかギリギリのラインで引かれたアイライナー、適度なボリュームと長さの睫毛、ほんのり赤みを帯びたチーク、唇の色に合わせた控えめな口紅は、それでも美羽を美しく華やかに見せるには十分だった。

 鎖骨が綺麗に見えつつも上品に見える黒のカットソーに、動きやすいカーキのフレアワイドパンツを合わせる。邪魔にならないように緩く後ろに髪を纏め、黒革のシンプルなバブーシュを履いた。

 バブーシュとはモロッコの伝統的な履物で、踵を踏みつぶしたようなデザインが特徴だ。履き心地の良さと機能性に美羽は気に入っているが、義昭は「みっともない」と顔を顰めた。

 そう言われながらもこれを履いているのは、ささやかな反抗心からかもしれない。

 義昭を起こさないよう静かに階段を下り、玄関を出ると、朝の冷たい空気がシン……と澄み渡り、清々しい気持ちになって胸いっぱいに吸い込んだ。小さなポーチに植えられたクレマチスが可愛らしい花を咲かせている。下向きで控えめな咲き方に愛しい気持ちが込み上げてきて、自然と笑みが零れた。

 新聞を取り出そうとシルバーの郵便受けに伸ばした手が、止まる。そこに書かれた『朝野』の文字に、未だ違和感を覚えてしまう。

 ここが私の家。ずっと暮らしていく、私の居場所……

 あの頃には戻れないと分かっているのに、気を抜くと昔の生活を懐かしんでしまう自分がいる。思い出の渦に、飲み込まれそうになる。

 斜めがけ鞄を背負った高校生が家の前を自転車で通り過ぎ、現実に戻った美羽は新聞を取り出した。だが、そこにはもう一通、白い封筒が入っていた。美羽はもう一度手を伸ばし、封筒を手にした。日本語でタイプされた住所の下に『Air mail to Japan』と赤い文字で斜めに手書きされている。

 誰からだろう?

 不審に思いながら封筒を裏返す。

 そこにある名前を見た途端、

「ッッ!!」

 美羽の手から、封筒がヒラリと舞い落ちた。
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