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81.伝わる絶頂

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「美羽、顔が真っ赤だよ!! やっぱり、具合い悪いんじゃないの!?」

 香織が心配そうに美羽の顔を覗き込んだ。

 大学に入ってから仲良くなった香織は、それまで類中心だった美羽の人生において、初めてまともに友人として付き合うことの出来た女友達だった。美羽の紹介でこのカフェでも働くようになり、就活がうまくいかなかった香織は卒業後もここでフルタイムで働いていた。もちろん義昭との馴れ初めも知っている。

「だ、大丈夫……ちょっと、トイレ行ってくるね……」

 心配する香織に無理やり笑みをつくり、美羽は控室の横に備え付けてあるトイレに入った。

 躰が、熱い……あそこが、ジンジンする……

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」

 躰の深奥を掻き混ぜられているかのようだ。脈がドクドクと速くなり、血液が一気に淫部に流れ込んでくる。

「ンッ……ンンッ……」

 押し寄せる肉欲を必死で抑え、美羽は一方の手で壁に寄りかかり、もう一方で口を抑えた。ブラジャー越しにも胸の尖りが硬くなっているのを敏感に感じ取る。全身が焼け付くように熱く、下半身がドクドクと脈打ち始めた。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……ンクッ」

 ブルブルッと花芽が震え、次第に熱が引いていくと同時に頭が冴えて冷静になってくる。絶頂に達した後にも余韻がじわじわと躰中に広がっていく、いつもの感覚とは違っていた。



 間違いない。
 類は今、私の家で……



 ベッドに横たわり、淫らに自慰にふける類が浮かび上がり、再び熱を持ちそうになって慌てて掻き消した。


 ハァ、と大きく溜息を吐いて個室から出て表に戻ると、香織が美羽の顔を再び覗き込んだ。背の高い香織がそうすると、まるで母親が娘を心配しているかのように見える。

 実際、香織は姉御肌で面倒見がいい。大学で友人を作るきっかけを見つけられず、ひとりポツンと講義室で座っていた美羽に声をかけてくれたのが香織だった。

「美羽、大丈夫なの?」

 まさか、類の自慰にあてられて気分が悪くなったとは言えず、美羽は困ったような笑顔を浮かべた。

「うん、もう大丈夫だから。心配かけてごめんね」
「今日は雨だからそんなにお客さんも多くないし、私ともえたんだけでこっちは何とかなるから、隼斗さんに話してみたら?」
「そ、そんなんじゃないの!!」

 強めの調子で言うと、香織は目をみはった。美羽とはもう7年以上の付き合いになるが、いつもクールで落ち着いている彼女が感情を剥き出しにしている。そんな友人の初めて見る姿に、香織は戸惑っていた。

 そんな香織の心情を感じ取り、美羽は慌てて微笑んだ。

「ご、ごめん……本当に、大丈夫……だから」
「そう? 無理しないでね」
「うん。かおりん、ありがとう……」

 美羽は余計な考えを追い出すためと、病気だと思われないよう、いつも以上に仕事に熱心に取り組んだ。



 類が待つ家にひとりで帰るなんて、出来ない。
 せめて、義昭さんが帰ってくるまでは働かないと……


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