【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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103.危うい夫婦関係

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 その日、美羽が仕事から帰ると義昭が先に帰っていたが、類は出かけていて不在だった。

 類、いないんだ……

 以前ならホッとしていたのに、今は寂しさがまさってしまう。

「ごめんなさい、遅くなってしまって……」
「腹が減ってるんだ。早く用意してくれるか」

 リビングを覗いて告げると、義昭はTVから視線を外すことなく、苛ついた調子で答えた。美羽の顔がカーッと熱くなり、全身が火照ってくる。

 どうして、そんな言い方しか出来ないの……

 美羽はカフェでまかないを食べているので、義昭の為だけに食事を用意することになるのに、感謝の気持ちなど一切感じられない。

 冷蔵庫には朝のうちにあらかじめ下準備をしておいた材料が入っている。以前、類は冷蔵庫にそれが入っているのを見て、作り方を教えてくれれば自分で作るからと言われ、調理をお願いしたことがあった。それ以来、材料と共に作り方のメモも添えて置いていた。

 だが、義昭はそれを使って調理することがないどころか、メモの存在すら知らないのだろう。

 重苦しい空気に息苦しさを感じながら、タイマーでセットしておいたきのこの炊き込みご飯と豚汁とほうれん草のおひたし、だし巻き、前日の残り物の筑前煮を用意した。

「義昭さん、夕飯の用意出来たよ」
「あぁ……」

 義昭が気の無い返事をする。その視線がTVから離れることはなかった。画面には芸能人夫婦が映し出され、家事も何もせず家にいる時はひたすらゴロゴロしている夫を妻が訴え、夫がゲストから非難を浴びて焦りながら謝っていた。

 こんな風に、私も夫のことを糾弾出来たらいいのに……

 食卓の食事はこうしている間に冷めていく。それは、今の自分たちの夫婦関係のようだと、心の中で苦笑いする。 
 
 それから5分ほどしてCMが入ったのをきっかけに、ようやく義昭がTVのスイッチを切った。

 ダイニングテーブルに義昭が座ったタイミングで熱い緑茶を出すと、目の前に置かれた筑前煮に不満そうな声を漏らした。

「なんだこれ、昨日の残りじゃないか」

 義昭の言葉に、カチンとくる。

「煮物は材料の種類が多いからどうしても量が多くなるし、こういうのは次の日の方が味がよく染み込んでて美味しいんだよ?」
「でも筍も椎茸も好きじゃないから、次の日まで食べたくないんだよな」

 昨日類と食べた時には、文句なんて一切言ってなかったのに……

 美羽はグッと拳を握り締めた。

「類は、美味しいって喜んで食べてたけど?」

 その言葉に義昭が黙り込み、お茶を啜ると食事に手をつけ始めた。美羽の気が緩み、洗濯物を取りに2階へ上がろうとすると、義昭がボソッと呟いた。

「ルイ、遅いな……いつ、帰ってくるんだ?」
「知らない。もうすぐ帰ってくるんじゃない」

 以前ならもっと言い方に気をつけていたけれど、つい刺々しい言い方になってしまう。

 美羽は階段を上がりながら、苛立ちを募らせた。

 私も義昭さんも、もう類なしの生活は考えられない。
 類がいるからこそ成り立っている危うい夫婦関係に違和感を覚えながらも、どうすることも出来ない。

 洗濯物を抱えて下に下りていくと、義昭は既に夕食を食べ終えて自分の部屋へと戻っていた。もちろん食器はダイニングテーブルに置きっ放しのままで、筑前煮は手をつけられていなかった。

 食器を洗う気力もなく、美羽はひとり、見るでもないTVのバラエティ番組から流れる声をBGMに、洗濯物を畳み始めた。洗濯物を手に取りながら、無意識のうちに義昭のものを避けてしまっている。無機質なモノトーンで統一された服や下着は、まるで彼そのもののように感じる。

 それとは対照的な、色味溢れる類の服を手に取ると、愛しさが込み上げてくる。本当に一緒に生活をしているのだと身に沁みて感じて嬉しくなってしまう。

 こんな気持ち、抱いちゃいけないのに。

 後ろ暗い思いに、胸が痛くなる。

 ふと気づくと、既にバラエティ番組は終わり、報道番組へと切り替わっていた。

 あれ、類。まだ、帰って来ない……

 外出することはよくあるものの、美羽が戻る頃には帰宅しているのが殆どで、こんなに遅くなることは初めてだった。スマホをチェックしたものの、着信もLINEも入っていない。

 どこかで何かあったのではと心配する気持ちと、もうこのまま帰ってこなければこんな後ろめたい気持ちを抱えずにすむかもしれないという相反する気持ちが渦を巻く。

 どうしよう……電話した方がいいかな。

 そう考えていると、玄関からガチャリと鍵が外される音がした。

 「ただいまー」

 類の声を聞いた途端、ホッと安堵する自分に気づき、やっぱり自分は類を待ち遠しく感じていたのだと思い知らされて、唇を噛んだ。
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