【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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179.萌

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 類と共に、裏口から控え室へと入る。

「おはようございます」

 控え室には既に隼斗と浩平と香織……そして、昨日まったく連絡の取れなかった萌が座っていた。

 萌は皆と違って制服は着ていなかった。縦ロールの入った明るい茶髪のツインテールの片側にピンクの大きな薔薇の飾りがついたレースの縁取りのヘッドドレスを被り、それとお揃いのパフスリーブのふわふわ甘々なロリータドレス。足元は白のレースのソックスに厚底ヒールを履いていた。どこかのイベントに参加するわけではなく、これが萌の普段着なのだ。

「萌たんもミーティング来れたんだ、良かった。
 あ、そっか。もう冬休みだから、学校ないんだ」

 けれど、いつもならこちらが引くぐらいテンションが高い萌が何も言葉を発さず、俯いている。代わりに、香織が顔を上げた。

「昨日ずっと連絡し続けて、ようやく掴まったの。それから萌の家行って、よっしーが入院して緊急事態だからって話して、ミーティングに引き摺って連れてきたの」

 萌は肩を震わせ、ぐずぐず鼻を啜っていた。



「うっ、うぅっ……もぉ、仕事なんてぇ……やる気出ないよぉ。
 うぐっ……しょーたんのバカぁぁぁぁあああ!!」



 萌は彼氏の名前を叫ぶとテーブルに突っ伏し、泣き出した。

「萌たーん、元気出してくださいよー。男なんてこの世にいっぱいいるし、イブに他の女と浮気するような彼氏なんてクソですよ、クソ! さっさと忘れましょーよ! あ、なんなら俺のダチとか紹介しましょうか? 萌たんみたいなアニメキャラ好きなオタクは俺のダチにはいないっすけど、みんないい奴らですよー」

 浩平は萌の背中を軽くポンポンしながら、励ますつもりで次々と地雷を投下していた。いつもなら浩平のミスはすかさず叱責する隼斗だが恋愛に関しては為す術なく、ロッカーに凭れ掛かって腕組みし、じっと萌を見つめるだけだった。

「うっ、うっ……美羽たーん!!」

 萌が甲高い声で叫ぶ。椅子からガバッと立ち上がり、泣きながら美羽に向かって突進してきた。

「ふぇーーーん!!」

 萌に思いっきり飛びつかれた小柄な美羽はバランスを崩し、後ろに倒れそうになる。

「きゃっ!!」
「危なっ……」

 隼斗が手を伸ばす前に、類が美羽の背中を後ろからしっかりと支えた。

「フフッ、セーフ♪」

 その声に顔を上げた萌が瞳孔をこれ以上出来ないぐらい大きくし、「はわわっっ!!」と、今度は後ろに仰け反った。



「みっ、美羽たんがふたりいるぅぅっっ!!」



 まるでアニメのようなリアクションと声で、一気に二次元の世界が広がっていく。それをぶった切るように、香織が溜息を吐きながら説明した。

「だからぁ、美羽の双子の弟の類くんが新しく入ったって昨日、萌に話したでしょーが」

 香織は何度萌に『もぉっ、私のことは萌たんって呼んでくださいって言ってるじゃないですかぁぁ!!』と言われても、断固として『萌』としか呼ばない。

 萌は誰にでも甘えたり、頼ったりする性格で、姉御肌の香織とは気が合いそうなのに、香織は萌に対して冷たい。『アニメ声で近くでキャンキャン言われると耳が痛くなる』というのが理由だと言ってるが、真相のほどは美羽にも分からない。

「ふぁぁ、双子ぉ!! 可愛い美羽たんと同じ顔がこの世界にふたりもいるなんて、びっくりたん!! もしかして萌たん、空想世界バーチャルワールドに突然入りこんじゃった!?」

 萌は自分や他人の名前に『たん』を付けるだけでなく、語尾にもよく『たん』を付け、自ら『萌たん語』と呼んでいる。最近流行ってる語尾に『たん』を付ける若者言葉は自分が発祥だとも。

 ちなみに仕事中は隼人に禁止されているため、『萌たん語』は封印している。

「おーい、萌たーん、かえってこーい」

 浩平の目が横一直線になり、手をひらひらさせたが、萌の興奮は収まらない。ひとりでブツブツと理解不能な言葉を唱えている。

「もうほっときなさいよ、あの子は。ひとりどっかにトリップしてるから」
「そうっすね」

 香織と浩平が話す中、美羽は肩を竦め、萌に声を掛けた。

「え、えっと……類はこういった職場で働くの初めてだから慣れないけど、よろしくね」

 すると、類が美羽の背中を抱いたまま後ろからにこっと笑みを見せた。

「萌さん、どうぞよろしくね」

 身長差があるため、美羽を抱いていても余裕で類の顔が見える。萌は右側の額に親指と人差し指をあてて蹌踉よろめくような仕草を見せ、壁に凭れかかった。

「ふはっ! お、王子さまっっ……
 美羽たんは男になるとこんなに見目麗しい王子さまになるのですねっ!! と、尊いたん!! あ、私のことはどうぞ萌たんと呼んでくださぁい♪」

 ハァーッという盛大な香織の溜息が、控え室中に響き渡る。

「萌が元気になったとこで、ミーティング始めよっか。
 ……てか、昨日一晩中この子の泣き言に付き合ってやった過去の私に思いっきり後ろ蹴り食らわしたい気分だわ」
「かおりん、おつかれさまっす」

 浩平が同情するように、香織の肩を軽く叩いた。
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