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191.後悔
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休憩時間に入り、美羽が控え室に入った途端、香織の大声が響いてきた。
「えっ、萌もスノボ一緒に行くの!?」
「そぉなんすよ。今まで誘っても寒いのやだとか言ってたくせに、類くんが行くって聞いた途端行きたいとか言い出して。ま、人数多い方が楽しいからいいんすけどねー」
美羽は動揺を悟られないようにしながらトレイをテーブルに置き、静かに椅子を引いて座ると会話に加わった。
「そんな急に人数増えても大丈夫なの?」
浩平は『お疲れ様です』というように軽く美羽に頭を下げてから、会話を繋いだ。
「あぁ、俺のツレの親父さんがスキー場の近くに別荘持ってて、毎年そこに泊めてもらってるんすよ。ま、人数多いと男女別に雑魚寝って感じになるんすけど、結局みんな酒飲んで朝まで行き倒れみたいな感じになってますねー、ハハッ」
「そう、なんだ……楽しそうだね」
もしそんなところに類が行けば、萌だけでなく、他の女性たちからもアプローチされるかもしれない。今までの類なら自分以外の女性に彼が惹かれるはずがない、何も起こるはずなどないと信じられた。
だが、最近の類を見ていると香織や萌と親しくしたり、客からプレゼントや手紙を受け取ったりしていて、不安は募るばかりだ。
「美羽さんも来られたら良かったんすけどね。遅れて1日だけ参加とかでも無理っすか?」
「バーカ。人妻誘ってんじゃないわよ。旦那さんがせっかく正月休みなのに、付き合うわけないでしょ」
「あ! じゃあ旦那さんも一緒にどうっすか?」
「えと……あの人は、スキーとかしないから」
美羽は口角を歪ませて微笑んだ。スキーやスノボだけでなく、義昭が何かのスポーツをやっていたなど聞いたことないし、TVでスポーツ観戦することもないので、興味すらないだろう。
それに、浩平たちのような若者と馴れ合うことなど絶対にしないし、嫌悪するだろうことも分かっているので聞くことすら躊躇われる。
「かおりんはどうっすか? どうせ恋人は家族や親戚と正月過ごすだろうし、実家帰っても自分の居場所ないって言ってたじゃないっすか!
俺らと一緒に行ったら嫌なこと忘れて楽しく過ごせますよー」
親友の美羽でも避けるような話題を躊躇いもなくスラッと言えてしまう浩平の性格は、ある意味才能かもしれない。
いつもならここで必ず香織のきついツッコミが入るのだが、香織はふと考え込むような表情になり、呟いた。
「そうねー。年越しを一緒に過ごしてくれる恋人もいないし、実家に帰ったって家族や親戚から結婚の話されて煩いし、私も行こっかな……」
その寂しげな表情に、美羽の胸が締め付けられる。
かお、りん? 何か、あったの……?
「うわっ、マジっすか!! 行きましょ、行きましょー!!
俺のツレで年上好きな奴がいるんで、紹介しますよー♪」
ノリノリでそう言った浩平の頭を香織がポカリと殴る。
「あんたのツレとは絶対付き合わないし、年下は興味ないのっ!」
「そいつの親父さんが別荘持っててボンボンっなんすよー。ニートなんすけど、親から小遣いもらえるから全然金に困ってないっすよ」
「なにその男、クソじゃん! 自分で稼ぎなさいよ!」
美羽が香織の発言にどう反応していいか分からずにいると、ハハッと浩平がお腹を抱えて笑った。
「かおりーん、女の子がクソとか言わなーい。ほら、美羽さんドン引きしてるじゃん」
「もうっ、あんたがどうしょーもないツレの話なんかするからでしょ! 絶対彼女候補とか言って紹介しないでよね!!」
「えー、いい奴なんすけどねー」
目の前で浩平と香織が喋りながらも、ふたりの声がどんどん遠ざかっていく。
萌たんだけでなく、かおりんまで一緒に行くんだ……
浩平くんに、類を誘ってなんて言うんじゃなかった。
美羽は愛想笑いを浮かべながら、チクチクする胸の痛みを堪えた。
「えっ、萌もスノボ一緒に行くの!?」
「そぉなんすよ。今まで誘っても寒いのやだとか言ってたくせに、類くんが行くって聞いた途端行きたいとか言い出して。ま、人数多い方が楽しいからいいんすけどねー」
美羽は動揺を悟られないようにしながらトレイをテーブルに置き、静かに椅子を引いて座ると会話に加わった。
「そんな急に人数増えても大丈夫なの?」
浩平は『お疲れ様です』というように軽く美羽に頭を下げてから、会話を繋いだ。
「あぁ、俺のツレの親父さんがスキー場の近くに別荘持ってて、毎年そこに泊めてもらってるんすよ。ま、人数多いと男女別に雑魚寝って感じになるんすけど、結局みんな酒飲んで朝まで行き倒れみたいな感じになってますねー、ハハッ」
「そう、なんだ……楽しそうだね」
もしそんなところに類が行けば、萌だけでなく、他の女性たちからもアプローチされるかもしれない。今までの類なら自分以外の女性に彼が惹かれるはずがない、何も起こるはずなどないと信じられた。
だが、最近の類を見ていると香織や萌と親しくしたり、客からプレゼントや手紙を受け取ったりしていて、不安は募るばかりだ。
「美羽さんも来られたら良かったんすけどね。遅れて1日だけ参加とかでも無理っすか?」
「バーカ。人妻誘ってんじゃないわよ。旦那さんがせっかく正月休みなのに、付き合うわけないでしょ」
「あ! じゃあ旦那さんも一緒にどうっすか?」
「えと……あの人は、スキーとかしないから」
美羽は口角を歪ませて微笑んだ。スキーやスノボだけでなく、義昭が何かのスポーツをやっていたなど聞いたことないし、TVでスポーツ観戦することもないので、興味すらないだろう。
それに、浩平たちのような若者と馴れ合うことなど絶対にしないし、嫌悪するだろうことも分かっているので聞くことすら躊躇われる。
「かおりんはどうっすか? どうせ恋人は家族や親戚と正月過ごすだろうし、実家帰っても自分の居場所ないって言ってたじゃないっすか!
俺らと一緒に行ったら嫌なこと忘れて楽しく過ごせますよー」
親友の美羽でも避けるような話題を躊躇いもなくスラッと言えてしまう浩平の性格は、ある意味才能かもしれない。
いつもならここで必ず香織のきついツッコミが入るのだが、香織はふと考え込むような表情になり、呟いた。
「そうねー。年越しを一緒に過ごしてくれる恋人もいないし、実家に帰ったって家族や親戚から結婚の話されて煩いし、私も行こっかな……」
その寂しげな表情に、美羽の胸が締め付けられる。
かお、りん? 何か、あったの……?
「うわっ、マジっすか!! 行きましょ、行きましょー!!
俺のツレで年上好きな奴がいるんで、紹介しますよー♪」
ノリノリでそう言った浩平の頭を香織がポカリと殴る。
「あんたのツレとは絶対付き合わないし、年下は興味ないのっ!」
「そいつの親父さんが別荘持っててボンボンっなんすよー。ニートなんすけど、親から小遣いもらえるから全然金に困ってないっすよ」
「なにその男、クソじゃん! 自分で稼ぎなさいよ!」
美羽が香織の発言にどう反応していいか分からずにいると、ハハッと浩平がお腹を抱えて笑った。
「かおりーん、女の子がクソとか言わなーい。ほら、美羽さんドン引きしてるじゃん」
「もうっ、あんたがどうしょーもないツレの話なんかするからでしょ! 絶対彼女候補とか言って紹介しないでよね!!」
「えー、いい奴なんすけどねー」
目の前で浩平と香織が喋りながらも、ふたりの声がどんどん遠ざかっていく。
萌たんだけでなく、かおりんまで一緒に行くんだ……
浩平くんに、類を誘ってなんて言うんじゃなかった。
美羽は愛想笑いを浮かべながら、チクチクする胸の痛みを堪えた。
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