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213.狙われた遺産
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「えっえっ、美羽さん、お父さんの遺産が入ったっていくら貰ったの!?」
「ま、まぁ義昭くんたちが援助してくれるっていうんなら、俺たちも同居の話を考えてみてもいいよな。お義母さんが一緒に住むなら新しい家に引っ越さなきゃならないし、生活費だって余分にかかるんだから」
遺産の話を聞き、圭子に加え、先ほどまで乗り気でなかったはずの晃までもが急に目の色を変えて色めき立った。
「おい! 俺は離婚も別居も同意してないぞ!
勝手に話を進めるな!!」
それまでずっと黙って妻のこれからの行方について聞いていた大作が沈黙を破り、茶托をドン!と叩いた。
琴子が家を出るはずないとタカをくくっていたが、ここに来て急に別居が現実味を帯びてきて焦り始めたのだ。
すっかり父が側にいることを失念していた義昭は驚いてビクッと肩を震わせて怯えたが、圭子と晃はもう父親の存在など気にしてもいなかった。
そんなふたりに対して不機嫌な表情を浮かべたままスックと立ち上がると、家庭での威厳を失った大作は倒れた障子をドスッと踏みつけて、便所へと去って行った。
美羽が倒れた障子を持ち上げ、鴨居に引っ掛けて戻している間、圭子がウキウキした様子で晃に話しかけた。
「ねぇ! 私たちも親戚だから、その遺産って受け取る権利あるんじゃないの?!」
ホクホク顔で話す圭子に、大作がいなくなって精気を取り戻した義昭が、呆れたように大きく息を吐き出した。
「お前は本当にバカだな。美羽の父親の遺産なんだから、受け取る権利があるのは子供である美羽と弟のルイだけだ。俺だって、受け取ってない。
そんなことも分からないなんて、本当に頭が悪いなお前は」
「バカバカ言わないでよ! ほんっとムカつく!!
お母さん引き取って面倒みるのはこっちなんだから、感謝してよね!」
「面倒みるんじゃなくて、面倒みてもらう、の間違いだろ。どうせ母さんと同居したら、家事やほのかの世話を全部任せて遊びまわるつもりだろう」
「っさいなー!
兄さんは黙って金だけ出してくれればいいの!!」
義昭と圭子が言い争う姿に、琴子は呆れたように溜息を吐いた。
「もう……ふたりしかいない兄妹なんだから、もっと仲良くしてちょうだい。家族なんだから、お互いに協力して、ね?」
琴子の言葉により真っ白に塗り潰されていた美羽の脳が、次第に現実と混ざり合って色を少しずつ取り戻していく。
お義母さんは、私がお父さんの遺産を受け取ったことを知ってたから、お義父さんが離婚も別居も同意しなくても平気でいられたんだ。
父の遺産を受け取った際、義昭がそのことを言及せず、今までの生活を続けてくれて安堵していたというのに……
信頼を寄せていた義母からの思わぬ仕打ちに、美羽の心は今掴んでいる障子のように、破れた穴から隙間風が吹き込んでいた。
「ま、まぁ義昭くんたちが援助してくれるっていうんなら、俺たちも同居の話を考えてみてもいいよな。お義母さんが一緒に住むなら新しい家に引っ越さなきゃならないし、生活費だって余分にかかるんだから」
遺産の話を聞き、圭子に加え、先ほどまで乗り気でなかったはずの晃までもが急に目の色を変えて色めき立った。
「おい! 俺は離婚も別居も同意してないぞ!
勝手に話を進めるな!!」
それまでずっと黙って妻のこれからの行方について聞いていた大作が沈黙を破り、茶托をドン!と叩いた。
琴子が家を出るはずないとタカをくくっていたが、ここに来て急に別居が現実味を帯びてきて焦り始めたのだ。
すっかり父が側にいることを失念していた義昭は驚いてビクッと肩を震わせて怯えたが、圭子と晃はもう父親の存在など気にしてもいなかった。
そんなふたりに対して不機嫌な表情を浮かべたままスックと立ち上がると、家庭での威厳を失った大作は倒れた障子をドスッと踏みつけて、便所へと去って行った。
美羽が倒れた障子を持ち上げ、鴨居に引っ掛けて戻している間、圭子がウキウキした様子で晃に話しかけた。
「ねぇ! 私たちも親戚だから、その遺産って受け取る権利あるんじゃないの?!」
ホクホク顔で話す圭子に、大作がいなくなって精気を取り戻した義昭が、呆れたように大きく息を吐き出した。
「お前は本当にバカだな。美羽の父親の遺産なんだから、受け取る権利があるのは子供である美羽と弟のルイだけだ。俺だって、受け取ってない。
そんなことも分からないなんて、本当に頭が悪いなお前は」
「バカバカ言わないでよ! ほんっとムカつく!!
お母さん引き取って面倒みるのはこっちなんだから、感謝してよね!」
「面倒みるんじゃなくて、面倒みてもらう、の間違いだろ。どうせ母さんと同居したら、家事やほのかの世話を全部任せて遊びまわるつもりだろう」
「っさいなー!
兄さんは黙って金だけ出してくれればいいの!!」
義昭と圭子が言い争う姿に、琴子は呆れたように溜息を吐いた。
「もう……ふたりしかいない兄妹なんだから、もっと仲良くしてちょうだい。家族なんだから、お互いに協力して、ね?」
琴子の言葉により真っ白に塗り潰されていた美羽の脳が、次第に現実と混ざり合って色を少しずつ取り戻していく。
お義母さんは、私がお父さんの遺産を受け取ったことを知ってたから、お義父さんが離婚も別居も同意しなくても平気でいられたんだ。
父の遺産を受け取った際、義昭がそのことを言及せず、今までの生活を続けてくれて安堵していたというのに……
信頼を寄せていた義母からの思わぬ仕打ちに、美羽の心は今掴んでいる障子のように、破れた穴から隙間風が吹き込んでいた。
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