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240.美羽と類の隠し事
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パジャマに着替え終えて浴室から出ると、隼斗はビールを飲んでいた。仕事の時はもちろん、プラベートでもあまり飲まない隼斗がビールを自ら飲むなんて珍しい。
「美羽も飲むか?」
「うん……じゃあ、飲もうかな」
ベッドに横になったところで、類のことが気になって眠れないのは明らかだ。少しでも気を紛らわせたかったので、隼斗の申し出がありがたかった。
隼斗は椅子から立ち上がり、ミニ冷蔵庫の前で腰を屈めた。ピタッとした部屋着のせいで、硬く引き締まった臀部のラインがくっきりと露わになっている。
隼斗がビールを取り出して振り返り、美羽に腕を伸ばした。
「ありがとう」
袖から伸ばされた太く筋肉質な腕が露わになる。なんとなく背徳感を覚えて目を逸らすと、正面に座った隼斗の大胸筋が薄い生地を通して盛り上がっているのが見え、目のやり場に困って受け取ったビールへと視線を落とした。
普段の仕事で重い食材を運んでいるせいか、特にジムなどで鍛えていなくても隼斗は引き締まった筋肉質な体つきをしている。いつもはそんなことを意識しないが、ふたりきりの部屋で目の前で晒されて落ち着かない気持ちになってしまう。
やっぱりフロントに電話して、ちゃんとした部屋着を持ってきてもらえば良かったな……
そう考えながら美羽がプルトップを開けると、隼斗が缶ビールを持ち上げた。
「乾杯」
「乾杯」
隼斗がグイと一気に缶ビールを開け、ポツリと漏らした。
「……不思議だな」
「え、何が?」
美羽は傾けたビールを戻し、隼斗を見上げた。
「俺が、美羽と兄妹になってから9年が経つ。それなのに、俺は美羽に弟がいたなんて、ふたりの間に15年もの過ごしてきた時間があったなんて、ついこの間まで知らなかった」
「ご、ごめんなさいっっ」
「いや、責めてるんじゃない。事情は大体分かったし。
でも類にとって美羽は、たとえ10年離れていようとも大事な姉さんだったんだな……」
感慨深げに漏らした隼斗の言葉に、美羽の胸がチクチクと痛む。
隼斗兄さん……
それは、私たちが普通の姉弟とは違うからだよ。
美羽は缶ビールを持つ手に力を込めた。
隼斗が美羽を真っ直ぐに見つめた。
「だが、類がお前を大切な姉さんだと思ってるように、俺もお前のことを大切な妹だと思ってる」
「隼斗、兄さん……」
美羽の胸が強く掻き乱される。
違う、違うんだよ。類の私への感情と、隼斗兄さんの私への感情は全然違うの。
違う種類の、愛なの……
俯いて震える唇をグッと噛み締める美羽に気づき、隼斗が眉間に力を入れた。
「美羽……昔、類と一緒に住んでた時に何かあったんじゃないか」
美羽は肩を震わせ、顔を上げた。怯えた自分の顔が、隼斗の真摯な眼に映し出されている。
隼斗兄さんに、私と類の関係を気づかれた!?
「な、何かって……何?」
どうしよう。類とのことを追求されたら、隼斗兄さんにうまく誤魔化せる自信なんて、ないよ……
緊張で身を固くする美羽を前に、隼斗はビールの缶を置いてテーブルについた両手をグッと指で絡めて合わせた。
「うちの親父とあの人が再婚した時、あの人は類のことを隠してただろ? 離婚して元夫が息子を引き取ったとはいえ、自分の息子の存在を話さず、美羽にも口止めしてたなんて普通じゃない。お前に弟がいると知った時、まずそれを疑問に思った。
類は母親に嫌われていると話していた。だから、母親に日本にいることを知られたくないとも。
なぁ……昔、お前たちに一体、何があったんだ?」
隼斗に追求され、美羽の緊張がピークに達する。
なんて返せばいいの? こんなに真剣に心配してくれてる隼斗兄さんに、また嘘を重ねるなんて……出来ない。
もう正直に類との関係を話すべきなの!?
美羽の鼓動がドクドクと脈打つ。
真実を話したら、隼斗はなんと言うだろう。これまで自分のことを妹として受け入れてくれていたのに、拒絶されてしまうかもしれない。
非難され、軽蔑の目を向けられてしまうかもしれない。
そんなことを考えたら、喉に石が詰まったようになり、熱くなった。一言も、発せない。
すると、隼斗の眉間に寄せていた皺が消えた。美羽を映し出すダークブラウンの瞳が揺れている。
「なんとなくは、分かるがな」
やっぱり、隼斗兄さん気付いて……
美羽は短く息を吸い込むと、身を縮めた。
消えてしまいたい。自分の存在をなくしてしまいたい。
そんな気持ちでいっぱいだった。
もし類が弟でなければ、こんな罪悪感を持たずに済むのに。けれど、美羽は類が双子の弟であるからこそ、深く愛しているのだ。
底なしの沼に沈んでいく自分はもう、誰とも関わらず、身を隠し、生きていくしかない。
「美羽も飲むか?」
「うん……じゃあ、飲もうかな」
ベッドに横になったところで、類のことが気になって眠れないのは明らかだ。少しでも気を紛らわせたかったので、隼斗の申し出がありがたかった。
隼斗は椅子から立ち上がり、ミニ冷蔵庫の前で腰を屈めた。ピタッとした部屋着のせいで、硬く引き締まった臀部のラインがくっきりと露わになっている。
隼斗がビールを取り出して振り返り、美羽に腕を伸ばした。
「ありがとう」
袖から伸ばされた太く筋肉質な腕が露わになる。なんとなく背徳感を覚えて目を逸らすと、正面に座った隼斗の大胸筋が薄い生地を通して盛り上がっているのが見え、目のやり場に困って受け取ったビールへと視線を落とした。
普段の仕事で重い食材を運んでいるせいか、特にジムなどで鍛えていなくても隼斗は引き締まった筋肉質な体つきをしている。いつもはそんなことを意識しないが、ふたりきりの部屋で目の前で晒されて落ち着かない気持ちになってしまう。
やっぱりフロントに電話して、ちゃんとした部屋着を持ってきてもらえば良かったな……
そう考えながら美羽がプルトップを開けると、隼斗が缶ビールを持ち上げた。
「乾杯」
「乾杯」
隼斗がグイと一気に缶ビールを開け、ポツリと漏らした。
「……不思議だな」
「え、何が?」
美羽は傾けたビールを戻し、隼斗を見上げた。
「俺が、美羽と兄妹になってから9年が経つ。それなのに、俺は美羽に弟がいたなんて、ふたりの間に15年もの過ごしてきた時間があったなんて、ついこの間まで知らなかった」
「ご、ごめんなさいっっ」
「いや、責めてるんじゃない。事情は大体分かったし。
でも類にとって美羽は、たとえ10年離れていようとも大事な姉さんだったんだな……」
感慨深げに漏らした隼斗の言葉に、美羽の胸がチクチクと痛む。
隼斗兄さん……
それは、私たちが普通の姉弟とは違うからだよ。
美羽は缶ビールを持つ手に力を込めた。
隼斗が美羽を真っ直ぐに見つめた。
「だが、類がお前を大切な姉さんだと思ってるように、俺もお前のことを大切な妹だと思ってる」
「隼斗、兄さん……」
美羽の胸が強く掻き乱される。
違う、違うんだよ。類の私への感情と、隼斗兄さんの私への感情は全然違うの。
違う種類の、愛なの……
俯いて震える唇をグッと噛み締める美羽に気づき、隼斗が眉間に力を入れた。
「美羽……昔、類と一緒に住んでた時に何かあったんじゃないか」
美羽は肩を震わせ、顔を上げた。怯えた自分の顔が、隼斗の真摯な眼に映し出されている。
隼斗兄さんに、私と類の関係を気づかれた!?
「な、何かって……何?」
どうしよう。類とのことを追求されたら、隼斗兄さんにうまく誤魔化せる自信なんて、ないよ……
緊張で身を固くする美羽を前に、隼斗はビールの缶を置いてテーブルについた両手をグッと指で絡めて合わせた。
「うちの親父とあの人が再婚した時、あの人は類のことを隠してただろ? 離婚して元夫が息子を引き取ったとはいえ、自分の息子の存在を話さず、美羽にも口止めしてたなんて普通じゃない。お前に弟がいると知った時、まずそれを疑問に思った。
類は母親に嫌われていると話していた。だから、母親に日本にいることを知られたくないとも。
なぁ……昔、お前たちに一体、何があったんだ?」
隼斗に追求され、美羽の緊張がピークに達する。
なんて返せばいいの? こんなに真剣に心配してくれてる隼斗兄さんに、また嘘を重ねるなんて……出来ない。
もう正直に類との関係を話すべきなの!?
美羽の鼓動がドクドクと脈打つ。
真実を話したら、隼斗はなんと言うだろう。これまで自分のことを妹として受け入れてくれていたのに、拒絶されてしまうかもしれない。
非難され、軽蔑の目を向けられてしまうかもしれない。
そんなことを考えたら、喉に石が詰まったようになり、熱くなった。一言も、発せない。
すると、隼斗の眉間に寄せていた皺が消えた。美羽を映し出すダークブラウンの瞳が揺れている。
「なんとなくは、分かるがな」
やっぱり、隼斗兄さん気付いて……
美羽は短く息を吸い込むと、身を縮めた。
消えてしまいたい。自分の存在をなくしてしまいたい。
そんな気持ちでいっぱいだった。
もし類が弟でなければ、こんな罪悪感を持たずに済むのに。けれど、美羽は類が双子の弟であるからこそ、深く愛しているのだ。
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