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248.咄嗟に出た嘘
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カフェからの帰り道、隼斗の車で家に向かいながら美羽はフゥと溜息を吐いた。
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと疲れただけ」
「そうか」
それから、隼斗は運転に集中した。
隼斗も美羽が『マジメくん』に告白されたことは知っているはずだが、それについて何も聞いてくることはない。いつもそうだ。隼斗は自分自身の恋愛話をすることはない代わりに、他人のそういった話に首をつっこむこともない。それが美羽には、とても心地よく感じた。
それに隼斗から話を聞かずとも絵麻との付き合いが順調であることは明らかだったし、今は雇われ店長として働いている隼斗が晴れて夢が叶い、自分の店を持った際には、絵麻と結婚するだろうと思った。
夫婦で店を持つって素敵だな。絵麻さんが隼斗兄さんと結婚したら、絵麻さんは私のお義姉さんになるんだ……お店を盛り立てて、いつかは子供も生まれて、そうしたら私は叔母さんになるってことか、フフッ。
そんな想像をしてから、寂しい気持ちになった。
でも、そんな光景を見ることはないんだ。だって、大学を卒業したら私は……類と一緒になるから。
ここにはもう、いられない。どこか遠くの誰も知り合いのいない街で、ふたりだけの生活を始めるのだから。
その寂しさと引き換えて有り余るほど、類との未来を強く望む自分がいた。
帰ると、いつもはパーティーやら集まりでいない華江が珍しく家にいて、段ボール箱に荷物を詰めていた。
「えっ、お母さん……もう、引っ越しの準備始めてるの!?」
「そうよ。3ヶ月なんてあっというまに来るんだから。美羽も早く整理しなさい!」
「ちょ、ちょっと待って……私、まだ引っ越しするなんて決まってない……」
「何言ってるの! もう言ったでしょ、福岡にあなたも連れてくって。この家は売りに出すから、隼斗さんも早く新しい住まい見つけてね!」
このままじゃ、本当にお母さんに連れて行かれちゃう。
福岡に行けば、私の自由は完全に断たれてしまう。
類と一緒になるという希望が、無くなってしまう。
そんなの……絶対に嫌!!
「待ってくだ……」
そう言いかけた隼斗の言葉を遮り、美羽が華江に向かって叫んだ。
「お母さん、私、お付き合いしてる人がいるの!!」
それを聞き、華江が口角を歪めた。
「あのねぇ、そんな嘘吐いたって騙されないわよ。福岡に行くのが嫌だからって」
「ち、違うの! 本当なの!!
ほ、ほら……ここに、その人の名刺もあるし」
美羽は鞄を探り、今日もらった名刺を華江に差し出した。
華江は美羽から名刺を受け取ると、食い入るように見つめた。
「朝野、義昭……どうやら本物の名刺のようだけど、本当にお付き合いしてるわけ?」
疑いの目を向けられる。
華江はずっと美羽の心の中から類への想いが消えていないことを知っているからこそ、福岡に引っ越しすることを決めたのだ。
そんな美羽に、福岡に連れて行くと告げた途端に恋人が出来たと言われれば、疑うのは当然だ。
「私、たち……真剣、なの。結婚を前提に、お付き合いしてるの。
だか、ら……福岡には行けない」
美羽は必死だった。たとえ嘘をついてでも、なんとかして福岡へ行くことだけは避けたかった。
華江は面白がるように鼻で笑った。
「だったら、その人つれてらっしゃいな」
「ぇ……」
美羽は顔を蒼白にした。
「だって、結婚を前提にお付き合いしているんでしょう? だったら、両親に挨拶するのが筋ってもんじゃない?
……それとも、顔を合わせられない理由があるのかしら?」
威圧するように視線を向ける華江に、美羽はグッと喉を鳴らした。冷たい汗が、背中をツーッと伝い落ちて行く。
「わ、かりました……
相手の都合もあるから、確認して決めるから」
「私はいつでもいいわよ。
フフッ……美羽がどんな男を結婚相手に選んだのか、見ものだわ」
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと疲れただけ」
「そうか」
それから、隼斗は運転に集中した。
隼斗も美羽が『マジメくん』に告白されたことは知っているはずだが、それについて何も聞いてくることはない。いつもそうだ。隼斗は自分自身の恋愛話をすることはない代わりに、他人のそういった話に首をつっこむこともない。それが美羽には、とても心地よく感じた。
それに隼斗から話を聞かずとも絵麻との付き合いが順調であることは明らかだったし、今は雇われ店長として働いている隼斗が晴れて夢が叶い、自分の店を持った際には、絵麻と結婚するだろうと思った。
夫婦で店を持つって素敵だな。絵麻さんが隼斗兄さんと結婚したら、絵麻さんは私のお義姉さんになるんだ……お店を盛り立てて、いつかは子供も生まれて、そうしたら私は叔母さんになるってことか、フフッ。
そんな想像をしてから、寂しい気持ちになった。
でも、そんな光景を見ることはないんだ。だって、大学を卒業したら私は……類と一緒になるから。
ここにはもう、いられない。どこか遠くの誰も知り合いのいない街で、ふたりだけの生活を始めるのだから。
その寂しさと引き換えて有り余るほど、類との未来を強く望む自分がいた。
帰ると、いつもはパーティーやら集まりでいない華江が珍しく家にいて、段ボール箱に荷物を詰めていた。
「えっ、お母さん……もう、引っ越しの準備始めてるの!?」
「そうよ。3ヶ月なんてあっというまに来るんだから。美羽も早く整理しなさい!」
「ちょ、ちょっと待って……私、まだ引っ越しするなんて決まってない……」
「何言ってるの! もう言ったでしょ、福岡にあなたも連れてくって。この家は売りに出すから、隼斗さんも早く新しい住まい見つけてね!」
このままじゃ、本当にお母さんに連れて行かれちゃう。
福岡に行けば、私の自由は完全に断たれてしまう。
類と一緒になるという希望が、無くなってしまう。
そんなの……絶対に嫌!!
「待ってくだ……」
そう言いかけた隼斗の言葉を遮り、美羽が華江に向かって叫んだ。
「お母さん、私、お付き合いしてる人がいるの!!」
それを聞き、華江が口角を歪めた。
「あのねぇ、そんな嘘吐いたって騙されないわよ。福岡に行くのが嫌だからって」
「ち、違うの! 本当なの!!
ほ、ほら……ここに、その人の名刺もあるし」
美羽は鞄を探り、今日もらった名刺を華江に差し出した。
華江は美羽から名刺を受け取ると、食い入るように見つめた。
「朝野、義昭……どうやら本物の名刺のようだけど、本当にお付き合いしてるわけ?」
疑いの目を向けられる。
華江はずっと美羽の心の中から類への想いが消えていないことを知っているからこそ、福岡に引っ越しすることを決めたのだ。
そんな美羽に、福岡に連れて行くと告げた途端に恋人が出来たと言われれば、疑うのは当然だ。
「私、たち……真剣、なの。結婚を前提に、お付き合いしてるの。
だか、ら……福岡には行けない」
美羽は必死だった。たとえ嘘をついてでも、なんとかして福岡へ行くことだけは避けたかった。
華江は面白がるように鼻で笑った。
「だったら、その人つれてらっしゃいな」
「ぇ……」
美羽は顔を蒼白にした。
「だって、結婚を前提にお付き合いしているんでしょう? だったら、両親に挨拶するのが筋ってもんじゃない?
……それとも、顔を合わせられない理由があるのかしら?」
威圧するように視線を向ける華江に、美羽はグッと喉を鳴らした。冷たい汗が、背中をツーッと伝い落ちて行く。
「わ、かりました……
相手の都合もあるから、確認して決めるから」
「私はいつでもいいわよ。
フフッ……美羽がどんな男を結婚相手に選んだのか、見ものだわ」
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