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271.美羽の願い
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ブブブ……とバイブ音が鳴り、隼斗がおぼつかない手つきで携帯を取り出す。
「ん? あぁ、ここにいる」
隼斗に携帯を手渡され、美羽は耳に当てた。
『美羽!? 連絡もせずに何してたのよー!! 心配したじゃないっっ!!』
「かっ、かおりん。ごめんなさいっ!」
香織から何度も連絡があったことを思い出し、美羽は慌てて謝った。
で、でも……なんでかおりん、私が隼斗兄さんといるって知ってたの?
『何度メールしても電話しても連絡とれないから、美羽のお母さんや隼斗さんにまで電話したんだよ!! しかも、ふたりともそれから連絡つかなくなるし』
「そ、そうだったんだね……」
もしや、香織の連絡によって母は自分の行動に気づき、隼斗も店を放り出して駆けつけたのでは……という考えが、過ぎった。
だが、香織を責めることなどもちろん出来ない。全ては、自分が撒いた種だ。香織は友人として、美羽の心配をしていただけ。
『ねぇ、何があったの?』
不安げな香織の声が美羽の鼓膜を揺らし、胸が痛くなる。
「ぇっと……パーティーのドレスに着替えてたら、急に気分が悪くなっちゃって……ほんとに、ごめんね」
美羽が苦しげに言い訳するのを、隼斗が黙って見つめている。その視線が、痛い。
『そうだったの!? ちょっ、今は大丈夫なの!?』
息急き切って香織が尋ねる。大丈夫ではないと答えでもしたら、今すぐにでもパーティー会場を抜け出して会いにきそうな勢いだ。
「うん。だいぶ、良くなったから」
『もー! 心配させないでよ!!
明日には福岡に発つんでしょ? 大丈夫なの?』
義昭との結婚式のことを指摘され、美羽は顔を引き攣らせた。
「明日、までには……体調も、良くなってると思う」
『せっかくの結婚式に花嫁が体調悪いなんてシャレになんないから、ちゃんとゆっくり休んでよ。戻ってきたらすぐに、こっちでの結婚祝いパーティーもあるんだから。結婚式の報告写真、楽しみに待ってるね!』
「うん、分かった……」
香織との電話を終え、美羽は深く息を吐き出した。
もし私があの時家を出ていたら、皆に悲しい思いをさせていたんだ。きっと、心に深い傷を残してしまっていた。
身を呈してまで守ってくれた隼斗兄さんを、あんなに心配させてしまったかおりんを知った今になって、裏切るなんて……私には、出来ない。
こうなってしまった以上、美羽に残された道は、義昭との結婚しかないように思えた。
恋愛感情がなくても結婚する夫婦は、世の中にたくさんいる。激しい恋愛の末に結婚したからといって必ずしも幸せになるとはいえないし、見知らぬ二人が見合いによって結婚したからといって不幸になるともいえない。
優しくて、私のことを思いやって愛してくれる義昭さんとなら、たとえ恋愛感情がなくても、穏やかで温かい家庭を築いていくことが出来るかもしれない。そうすれば、もう隼斗兄さんやかおりんたちに心配や迷惑をかけることもない。
赦されない弟との禁断愛に苦しみ、悩むことも、母親から卑下され、罵られ続けることも……ないんだ。
美羽の胸が、きつくギューッと絞られる。
まだ美羽の心には、類への深い想いがある。その想いは、決して消えることはない。けれど美羽は、類のいるアメリカへ行く計画を諦めることにした。
愛しい類……あなたを追いかけられなくて、ごめんなさい。
私は、類ではない、あなたの知らない人の妻になります。
その人と、幸せな家庭を築いていく。未来を、描いていく。
だから、類への想いは私の胸の奥深くに閉じ込めて、眠らせます。
ごめんなさい。許せないよね……ごめんね、類。
どうか、どうか生きていて。
私のことなど忘れて、幸せな未来を生きて……類。
決意した以上、必ず義昭と幸せにならなくてはいけない。何があっても、結婚生活を守り抜いていく……そう、美羽は心に誓ったのだった。
「ん? あぁ、ここにいる」
隼斗に携帯を手渡され、美羽は耳に当てた。
『美羽!? 連絡もせずに何してたのよー!! 心配したじゃないっっ!!』
「かっ、かおりん。ごめんなさいっ!」
香織から何度も連絡があったことを思い出し、美羽は慌てて謝った。
で、でも……なんでかおりん、私が隼斗兄さんといるって知ってたの?
『何度メールしても電話しても連絡とれないから、美羽のお母さんや隼斗さんにまで電話したんだよ!! しかも、ふたりともそれから連絡つかなくなるし』
「そ、そうだったんだね……」
もしや、香織の連絡によって母は自分の行動に気づき、隼斗も店を放り出して駆けつけたのでは……という考えが、過ぎった。
だが、香織を責めることなどもちろん出来ない。全ては、自分が撒いた種だ。香織は友人として、美羽の心配をしていただけ。
『ねぇ、何があったの?』
不安げな香織の声が美羽の鼓膜を揺らし、胸が痛くなる。
「ぇっと……パーティーのドレスに着替えてたら、急に気分が悪くなっちゃって……ほんとに、ごめんね」
美羽が苦しげに言い訳するのを、隼斗が黙って見つめている。その視線が、痛い。
『そうだったの!? ちょっ、今は大丈夫なの!?』
息急き切って香織が尋ねる。大丈夫ではないと答えでもしたら、今すぐにでもパーティー会場を抜け出して会いにきそうな勢いだ。
「うん。だいぶ、良くなったから」
『もー! 心配させないでよ!!
明日には福岡に発つんでしょ? 大丈夫なの?』
義昭との結婚式のことを指摘され、美羽は顔を引き攣らせた。
「明日、までには……体調も、良くなってると思う」
『せっかくの結婚式に花嫁が体調悪いなんてシャレになんないから、ちゃんとゆっくり休んでよ。戻ってきたらすぐに、こっちでの結婚祝いパーティーもあるんだから。結婚式の報告写真、楽しみに待ってるね!』
「うん、分かった……」
香織との電話を終え、美羽は深く息を吐き出した。
もし私があの時家を出ていたら、皆に悲しい思いをさせていたんだ。きっと、心に深い傷を残してしまっていた。
身を呈してまで守ってくれた隼斗兄さんを、あんなに心配させてしまったかおりんを知った今になって、裏切るなんて……私には、出来ない。
こうなってしまった以上、美羽に残された道は、義昭との結婚しかないように思えた。
恋愛感情がなくても結婚する夫婦は、世の中にたくさんいる。激しい恋愛の末に結婚したからといって必ずしも幸せになるとはいえないし、見知らぬ二人が見合いによって結婚したからといって不幸になるともいえない。
優しくて、私のことを思いやって愛してくれる義昭さんとなら、たとえ恋愛感情がなくても、穏やかで温かい家庭を築いていくことが出来るかもしれない。そうすれば、もう隼斗兄さんやかおりんたちに心配や迷惑をかけることもない。
赦されない弟との禁断愛に苦しみ、悩むことも、母親から卑下され、罵られ続けることも……ないんだ。
美羽の胸が、きつくギューッと絞られる。
まだ美羽の心には、類への深い想いがある。その想いは、決して消えることはない。けれど美羽は、類のいるアメリカへ行く計画を諦めることにした。
愛しい類……あなたを追いかけられなくて、ごめんなさい。
私は、類ではない、あなたの知らない人の妻になります。
その人と、幸せな家庭を築いていく。未来を、描いていく。
だから、類への想いは私の胸の奥深くに閉じ込めて、眠らせます。
ごめんなさい。許せないよね……ごめんね、類。
どうか、どうか生きていて。
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決意した以上、必ず義昭と幸せにならなくてはいけない。何があっても、結婚生活を守り抜いていく……そう、美羽は心に誓ったのだった。
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