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324.仲裁
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藤岡の妻の金切り声に、カフェにいた客たちが何事かと視線を向ける。
香織は客や職場仲間に迷惑が掛かることを恐れ、
「お、奥様……落ち着いてください。お話は伺いますから、別の場所で……」
そう持ちかけたが、頭に血が上っている彼女の耳になど届かない。目がギラギラと血走り、狂気的な雰囲気を纏っている。客の集まっているテーブル席の方へとドシドシと足を進め、その勢いに香織がじりじりと後退する。
「不倫してうちの旦那を取ったつもりでいるんでしょうけどねぇ、あの人は養子なの! 名誉教授であるうちの父に逆らうことなんて、出来ないの! あなたはねぇ、遊ばれただけなのよ!!
よくも私に恥をかかせたわね! 慰謝料たっぷり請求してやるんだから覚悟なさいよ!!」
かおりん!!
背の高い香織の胸ぐらに掴みかかる藤岡の妻に駆け寄り、美羽が止めに入った。
「お、お願いです! やめてくださ……」
「っるさいわねー!!」
藤岡の妻に胸をドンと突つかれ、美羽は傍にあったテーブルに強く腰を打ち付けて倒れた。
「美羽っっ!! あんた、よくも美羽をぉぉ!!」
唸り声を上げて香織が藤岡の妻に殴りかかり、藤岡の妻は香織の短い髪を束にして掴み、ブチブチと引きちぎった。醜い女の争いに、カフェの客は興味津々で視線を集中させている。
「ミュー、大丈夫?」
倒れ込んだ美羽の目の前に、手が差し伸べられた。
「る、い……」
来て、くれたんだ。
腰はジンジンと痛むけれど、心がほわっと温かくなり、幸せで満たされていく。
類の心は、完全に離れてなかった……
良かった。
類の手を取り、美羽が立ち上がったのを確認し、類は手を離した。それからテーブルの反対側に座る客へとくるりと背を向ける。
「お客様、大変申し訳ありませんでした。こちら、代わりのランチになります」
美羽がテーブルに腰を打った拍子にグラついて溢れてしまった皿を素早く引き下げ、新しい料理を置いた。
「ぁ、ありがとうございます」
そのスマートな対応に、テーブルについていた女性客がポーッと類に見惚れている。
次に類は、殴り合いをする香織と藤岡の妻を引き離しにかかった。
「ッッなによ!!」
「なにすんの、類くんっっ!!」
同時に二人が声を上げたが、
「ふたりとも、他のお客様の迷惑になりますので、どうか僕と一緒に外に出ていただけますか?」
類の凍りつくような視線とかち合った途端、口を閉じた。今まで騒ついていた客たちさえ、黙り込んだ。『アイスビューティー』は、未だ健在だ。
「うっひゃー、女ってこえぇぇ!!」
厨房のカウンター越しに顔半分だけを出して眺めていた浩平は、面白そうに言った。
「浩平、ひとり抜けてんだ。仕事に集中しろ!」
「へいへーい」
隼斗に注意され、浩平は肩を竦めた。
休憩から戻ってきた萌は、香織と類がいなくなっていることに気づいて奇声を上げた。
「うっきゃー、何があったんたーん!?」
浩平から事の成り行きを聞かされ、その場にいられなかったことを悔やみ、どうしてみんな自分を呼びに来なかったのかと、むくれた。
「あーん、萌たんもかおたんのバトル、見たかったんたーん!!」
美羽はその後、3人がどんな話し合いをしているのか気が気でなく、仕事に集中出来なかった。
香織は客や職場仲間に迷惑が掛かることを恐れ、
「お、奥様……落ち着いてください。お話は伺いますから、別の場所で……」
そう持ちかけたが、頭に血が上っている彼女の耳になど届かない。目がギラギラと血走り、狂気的な雰囲気を纏っている。客の集まっているテーブル席の方へとドシドシと足を進め、その勢いに香織がじりじりと後退する。
「不倫してうちの旦那を取ったつもりでいるんでしょうけどねぇ、あの人は養子なの! 名誉教授であるうちの父に逆らうことなんて、出来ないの! あなたはねぇ、遊ばれただけなのよ!!
よくも私に恥をかかせたわね! 慰謝料たっぷり請求してやるんだから覚悟なさいよ!!」
かおりん!!
背の高い香織の胸ぐらに掴みかかる藤岡の妻に駆け寄り、美羽が止めに入った。
「お、お願いです! やめてくださ……」
「っるさいわねー!!」
藤岡の妻に胸をドンと突つかれ、美羽は傍にあったテーブルに強く腰を打ち付けて倒れた。
「美羽っっ!! あんた、よくも美羽をぉぉ!!」
唸り声を上げて香織が藤岡の妻に殴りかかり、藤岡の妻は香織の短い髪を束にして掴み、ブチブチと引きちぎった。醜い女の争いに、カフェの客は興味津々で視線を集中させている。
「ミュー、大丈夫?」
倒れ込んだ美羽の目の前に、手が差し伸べられた。
「る、い……」
来て、くれたんだ。
腰はジンジンと痛むけれど、心がほわっと温かくなり、幸せで満たされていく。
類の心は、完全に離れてなかった……
良かった。
類の手を取り、美羽が立ち上がったのを確認し、類は手を離した。それからテーブルの反対側に座る客へとくるりと背を向ける。
「お客様、大変申し訳ありませんでした。こちら、代わりのランチになります」
美羽がテーブルに腰を打った拍子にグラついて溢れてしまった皿を素早く引き下げ、新しい料理を置いた。
「ぁ、ありがとうございます」
そのスマートな対応に、テーブルについていた女性客がポーッと類に見惚れている。
次に類は、殴り合いをする香織と藤岡の妻を引き離しにかかった。
「ッッなによ!!」
「なにすんの、類くんっっ!!」
同時に二人が声を上げたが、
「ふたりとも、他のお客様の迷惑になりますので、どうか僕と一緒に外に出ていただけますか?」
類の凍りつくような視線とかち合った途端、口を閉じた。今まで騒ついていた客たちさえ、黙り込んだ。『アイスビューティー』は、未だ健在だ。
「うっひゃー、女ってこえぇぇ!!」
厨房のカウンター越しに顔半分だけを出して眺めていた浩平は、面白そうに言った。
「浩平、ひとり抜けてんだ。仕事に集中しろ!」
「へいへーい」
隼斗に注意され、浩平は肩を竦めた。
休憩から戻ってきた萌は、香織と類がいなくなっていることに気づいて奇声を上げた。
「うっきゃー、何があったんたーん!?」
浩平から事の成り行きを聞かされ、その場にいられなかったことを悔やみ、どうしてみんな自分を呼びに来なかったのかと、むくれた。
「あーん、萌たんもかおたんのバトル、見たかったんたーん!!」
美羽はその後、3人がどんな話し合いをしているのか気が気でなく、仕事に集中出来なかった。
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