329 / 498
323.露呈
しおりを挟む
だが、それ以降も香織への嫌がらせはエスカレートする一方のようだった。
鍵を換えたにも関わらず、香織が留守の間を狙って忍び込み、絨毯に包丁が突き刺さっていたり、アルバムに入っていた写真が抜き取られ、引き裂かれていたりしたそうだ。
あの事件以降、浩平が職場と家までの送迎をしてくれているが、家の中にいつ侵入されるのではと気が気でない。怖くて夜眠れないのだという香織の顔には、普段は見られない隈が目の下にくっきりと刻まれていた。
「ねぇ、かおりん……もう一度、警察に相談した方がいいんじゃない?」
「うん……近所は巡回してくれてるらしいんだけど、やっぱり事件にならないと真剣に扱ってくれないみたい。藤岡はあれ以来怖がって私の家に来たがらないからホテルで会ってるし、話も聞いてくれなくて全然頼りにならないし。
引っ越しも考えてるけど、なかなか条件にあったとこが見つからなくて」
美羽の眉がピクリと引き攣った。
まだ、藤岡先生と会ってるんだ。
藤岡の妻が嫌がらせの犯人なのではと疑う気持ちを拭い切れない美羽としては、一刻も早く藤岡と別れた方がいいのではないかと思うのだが、だからといって二人のプライベートな問題に介入などできない。
「そうなんだ。不安だね……」
暗い顔を見せた美羽に、香織が声をかける。
「あ、あのね……美羽」
「どうしたの、かおりん?」
その時、萌が控室のドアを勢いよく開け、ふたりはビクッとして振り返った。
「かおたーん、休憩終わってるたーん! ヘルプミー!!
いっぱいランチ並んでるたーん!!」
「あぁはいはい、今行くから」
泣き真似をする萌に渋々といった様子で香織が立ち上がり、小さく「あとでね」と美羽に声をかけて去っていった。
かおりん……何を、話そうとしたんだろ。
気になりつつも、仕事が暇になった合間にでも聞けばいいかと気持ちを切り替え、あまり進んでいなかったランチに手をつけ始めた。
美羽が仕事に戻り、替わりに萌が休憩へと入ってすぐ、カフェの扉が開いた。
美羽より近くに立っていた香織が、お客様を案内に行く。
「あなたがうちの夫と不倫関係にある証拠は揃ってるのよ! 今すぐに別れてちょうだい!!」
扉が開いた途端、香織は入ってきた女性に金切り声で言い寄られていた。
ひとめで高級ブランドと分かるブランドロゴが大きくついた真っ赤なスーツに身を包み、大粒のダイヤのピアスとネックレスを身につけ、8センチヒールを履き、濃いめの化粧をしている中年の女性だった。
藤岡先生の奥さんっっ!!
恐れていた事態が、目の前で起こってしまった。
鍵を換えたにも関わらず、香織が留守の間を狙って忍び込み、絨毯に包丁が突き刺さっていたり、アルバムに入っていた写真が抜き取られ、引き裂かれていたりしたそうだ。
あの事件以降、浩平が職場と家までの送迎をしてくれているが、家の中にいつ侵入されるのではと気が気でない。怖くて夜眠れないのだという香織の顔には、普段は見られない隈が目の下にくっきりと刻まれていた。
「ねぇ、かおりん……もう一度、警察に相談した方がいいんじゃない?」
「うん……近所は巡回してくれてるらしいんだけど、やっぱり事件にならないと真剣に扱ってくれないみたい。藤岡はあれ以来怖がって私の家に来たがらないからホテルで会ってるし、話も聞いてくれなくて全然頼りにならないし。
引っ越しも考えてるけど、なかなか条件にあったとこが見つからなくて」
美羽の眉がピクリと引き攣った。
まだ、藤岡先生と会ってるんだ。
藤岡の妻が嫌がらせの犯人なのではと疑う気持ちを拭い切れない美羽としては、一刻も早く藤岡と別れた方がいいのではないかと思うのだが、だからといって二人のプライベートな問題に介入などできない。
「そうなんだ。不安だね……」
暗い顔を見せた美羽に、香織が声をかける。
「あ、あのね……美羽」
「どうしたの、かおりん?」
その時、萌が控室のドアを勢いよく開け、ふたりはビクッとして振り返った。
「かおたーん、休憩終わってるたーん! ヘルプミー!!
いっぱいランチ並んでるたーん!!」
「あぁはいはい、今行くから」
泣き真似をする萌に渋々といった様子で香織が立ち上がり、小さく「あとでね」と美羽に声をかけて去っていった。
かおりん……何を、話そうとしたんだろ。
気になりつつも、仕事が暇になった合間にでも聞けばいいかと気持ちを切り替え、あまり進んでいなかったランチに手をつけ始めた。
美羽が仕事に戻り、替わりに萌が休憩へと入ってすぐ、カフェの扉が開いた。
美羽より近くに立っていた香織が、お客様を案内に行く。
「あなたがうちの夫と不倫関係にある証拠は揃ってるのよ! 今すぐに別れてちょうだい!!」
扉が開いた途端、香織は入ってきた女性に金切り声で言い寄られていた。
ひとめで高級ブランドと分かるブランドロゴが大きくついた真っ赤なスーツに身を包み、大粒のダイヤのピアスとネックレスを身につけ、8センチヒールを履き、濃いめの化粧をしている中年の女性だった。
藤岡先生の奥さんっっ!!
恐れていた事態が、目の前で起こってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる