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341.類からの提案
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「フフッ。琴子の声、玄関からも聞こえてたよ。
なんかあったの?」
からかいながらも優しい視線で見つめられ、琴子は身を乗り出した。
「類くぅん、聞いてちょうだいよぉ。私、圭子に孫の世話と家事を押し付けられて、くたくたなのよ。この前なんて、町内会の清掃にまで参加したのよ。聞けば、いつも圭子はそういうの行かないらしくて、近所の人や町内会長にまで嫌味言われちゃって、肩身の狭い思いさせられたのよ……
ほんと、あの子には困ったもんだわ」
放っておけば、一晩中でも語れそうなぐらい、琴子は圭子に対して不満が溜まっているようだった。
類が美羽の隣に座り、美羽の食べかけの芋羊羹を摘んで口に入れた。そんな自然な仕草に、ついドキッとしてしまう。
「こんなことなら、義くんと同居すれば良かったわぁ」
琴子は訴えるように義昭を見つめた。
「まぁ、母さんがそうしたいなら……」
義昭もまんざらではなさそうだ。
そ、そんな。ちょっと待って……
琴子と同居となれば、今以上に居心地の悪い思いをして暮らさなければならなくなる。
どこにも、安らげる場所がなくなってしまう。
「それよりもさ……」
類が声を上げた。
「シニア向けの賃貸マンションに住むのはどう?」
お気に入りの類にそう提案されたものの、琴子は乗り気でないようだ。
「それって、一人暮らしってことでしょう? 気楽かもしれないけど、やっぱりひとりは寂しいわ」
チラッと義昭に視線を投げかけようとするのを遮るかのように、今度は類の方が身を乗り出す。
「そこはね、アクティブシニア向けにつくられていて、共同の食堂でみんなと食事をすることもできるし、持ち帰ってひとりで部屋で食べることもできる。施設内にプールやテニスコート、卓球台、ビリヤード台もあって、いろんな習い事もできて、イベントも随時開催されるんだって。ダンスパーティーもあるらしいよ」
「まぁ、素敵ねぇ!」
琴子は話を聞きながら目を輝かせたが、すぐに表情を曇らせた。
「でも、そういうところって入居料とか家賃とか高いでしょう? 私にはとても無理よ。まだお父さ……あの人からお金も貰えてないし」
類が思惑ありげに、フフッと笑みを浮かべる。
「実はさ、そこの賃貸マンションのオーナー、僕なんだ」
『えっ!?』
琴子だけでなく、美羽と義昭も驚きの声を上げていた。
「空き部屋をそのままにしておくのは維持費がかかるし、琴子のような魅力的な女性がそこに暮らすのはマンションの宣伝にもなって助かるからさ、良かったら住んでよ」
無料で部屋を提供できることを、類は暗に示した。
夢のような申し出にときめきつつも、琴子は躊躇っていた。今まで一人暮らしなどしたことがなかったし、共同生活だとしてもうまくやっていけるか不安があったからだ。
それに、孫のほのかのことも気にかかっていた。もし自分がいなければ、ほのかの世話は誰がするのだ、と。
「別に、そこに住んでても牢獄じゃないから出かけるのは自由だし、ほのかちゃんに会いたい時には、いつでも会いにいけるよ」
類の後押しに、琴子の心が大きく揺れる。
「まぁ、どんなところに住むのか不安だろうしさ、今度みんなで一緒に見に行ってみようよ」
さらに一押しされ、琴子はようやく口を開いた。
「そう、ねぇ。見に行くぐらいなら……行ってみようかしら」
琴子が一人暮らしとなれば、しょっちゅうここに遊びに来ることもなくなるかもしれない。
そう安堵しつつも、現在琴子が家事や育児を全て背負っていることを思うと、琴子がいなくなった後は大丈夫なのだろうかという不安が美羽の脳裏に過ぎった。
でも、圭子さんだって、お義母さんと同居する前はほのかちゃんのお世話をして家事をしてたはずだし、大丈夫だよね?
今はきっと、お義母さんがいるから安心して、甘えてるだけだよね……
それにまだ、お義母さんもひとり暮らしするって決めたわけじゃないし。
美羽はこれ以上、義昭の家族のことは考えないようにした。
ただでさえ類と香織のことで頭がいっぱいなのに、別のことで頭を悩ます余裕などなかったからだ。
類はいったん部屋に戻ってシニアマンションのパンフレットを取り出し、琴子に見せて説明していた。
はしゃぐ琴子と彼女に頷きながら一緒にパンフレットを見つめる義昭親子を眺めながら、この裏にある類の狙いはなんなのだろうと胸が騒いだ。
なんかあったの?」
からかいながらも優しい視線で見つめられ、琴子は身を乗り出した。
「類くぅん、聞いてちょうだいよぉ。私、圭子に孫の世話と家事を押し付けられて、くたくたなのよ。この前なんて、町内会の清掃にまで参加したのよ。聞けば、いつも圭子はそういうの行かないらしくて、近所の人や町内会長にまで嫌味言われちゃって、肩身の狭い思いさせられたのよ……
ほんと、あの子には困ったもんだわ」
放っておけば、一晩中でも語れそうなぐらい、琴子は圭子に対して不満が溜まっているようだった。
類が美羽の隣に座り、美羽の食べかけの芋羊羹を摘んで口に入れた。そんな自然な仕草に、ついドキッとしてしまう。
「こんなことなら、義くんと同居すれば良かったわぁ」
琴子は訴えるように義昭を見つめた。
「まぁ、母さんがそうしたいなら……」
義昭もまんざらではなさそうだ。
そ、そんな。ちょっと待って……
琴子と同居となれば、今以上に居心地の悪い思いをして暮らさなければならなくなる。
どこにも、安らげる場所がなくなってしまう。
「それよりもさ……」
類が声を上げた。
「シニア向けの賃貸マンションに住むのはどう?」
お気に入りの類にそう提案されたものの、琴子は乗り気でないようだ。
「それって、一人暮らしってことでしょう? 気楽かもしれないけど、やっぱりひとりは寂しいわ」
チラッと義昭に視線を投げかけようとするのを遮るかのように、今度は類の方が身を乗り出す。
「そこはね、アクティブシニア向けにつくられていて、共同の食堂でみんなと食事をすることもできるし、持ち帰ってひとりで部屋で食べることもできる。施設内にプールやテニスコート、卓球台、ビリヤード台もあって、いろんな習い事もできて、イベントも随時開催されるんだって。ダンスパーティーもあるらしいよ」
「まぁ、素敵ねぇ!」
琴子は話を聞きながら目を輝かせたが、すぐに表情を曇らせた。
「でも、そういうところって入居料とか家賃とか高いでしょう? 私にはとても無理よ。まだお父さ……あの人からお金も貰えてないし」
類が思惑ありげに、フフッと笑みを浮かべる。
「実はさ、そこの賃貸マンションのオーナー、僕なんだ」
『えっ!?』
琴子だけでなく、美羽と義昭も驚きの声を上げていた。
「空き部屋をそのままにしておくのは維持費がかかるし、琴子のような魅力的な女性がそこに暮らすのはマンションの宣伝にもなって助かるからさ、良かったら住んでよ」
無料で部屋を提供できることを、類は暗に示した。
夢のような申し出にときめきつつも、琴子は躊躇っていた。今まで一人暮らしなどしたことがなかったし、共同生活だとしてもうまくやっていけるか不安があったからだ。
それに、孫のほのかのことも気にかかっていた。もし自分がいなければ、ほのかの世話は誰がするのだ、と。
「別に、そこに住んでても牢獄じゃないから出かけるのは自由だし、ほのかちゃんに会いたい時には、いつでも会いにいけるよ」
類の後押しに、琴子の心が大きく揺れる。
「まぁ、どんなところに住むのか不安だろうしさ、今度みんなで一緒に見に行ってみようよ」
さらに一押しされ、琴子はようやく口を開いた。
「そう、ねぇ。見に行くぐらいなら……行ってみようかしら」
琴子が一人暮らしとなれば、しょっちゅうここに遊びに来ることもなくなるかもしれない。
そう安堵しつつも、現在琴子が家事や育児を全て背負っていることを思うと、琴子がいなくなった後は大丈夫なのだろうかという不安が美羽の脳裏に過ぎった。
でも、圭子さんだって、お義母さんと同居する前はほのかちゃんのお世話をして家事をしてたはずだし、大丈夫だよね?
今はきっと、お義母さんがいるから安心して、甘えてるだけだよね……
それにまだ、お義母さんもひとり暮らしするって決めたわけじゃないし。
美羽はこれ以上、義昭の家族のことは考えないようにした。
ただでさえ類と香織のことで頭がいっぱいなのに、別のことで頭を悩ます余裕などなかったからだ。
類はいったん部屋に戻ってシニアマンションのパンフレットを取り出し、琴子に見せて説明していた。
はしゃぐ琴子と彼女に頷きながら一緒にパンフレットを見つめる義昭親子を眺めながら、この裏にある類の狙いはなんなのだろうと胸が騒いだ。
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