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366.男やもめに蛆が湧き、女やもめに花が咲く
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重たい空気が流れ、もうこれ以上の長居は無理だと判断した美羽は、口を開いた。
「あの……他に質問がなければ私、帰りますね」
「ま、待て!!」
美羽を引き止めたものの、大作は話し始めない。
「あの……なんでしょう?」
促され、大作は普段の鷹揚さとは対照的な小さな声で尋ねてきた。
「ぁ、あいつの独り暮らしは……決まったのか?」
大作はやはり、琴子のことを気にかけていたのだ。ゴミ出しについて教えてほしいというのは本来の目的ではなく、本当はこちらをずっと聞きたくて機会を窺っていたのだろう。
琴子が引越しすることは、義昭から弁護士を通じて大作に連絡がいくはずだが、まだきていないようだ。
「えぇ……先ほど、義昭さんから連絡があって話がついたそうです」
「そうか」
呟いてから、フンッと大作が鼻を鳴らした。
「あいつに独り暮らしなど、できるわけなかろう」
大作は、琴子が夢のようなマンションで暮らし始めると知らされていないのかもしれないが、未だに妻を見下したような態度を続けている大作に対して、現実を突きつけてやりたいという気持ちが美羽に湧いてきた。
「お義母さんがこれから暮らすマンション……アクティブシニア向けで、食事を作る必要もなく、栄養バランスのとれた食事をそこに住む住人の方達といただくことができるし、ジムやプールだけでなく映画室や娯楽室なんかもあって、習い事も受けられるんですよ。
お義母さん、そこで暮らすのをとても楽しみにしてらっしゃいました」
大作は僅かに動揺を見せたものの、取り繕った。
「そんなところ、家賃がバカにならんだろう。他にもいろいろ金がかかるなら、そのうち金が足りんくなって泣きついてくるだろうが、俺は助けるつもりは一切ないぞ」
まだ余裕をみせる大作に、もう一撃をぶつける。
「それ、が……そのマンション、私の弟がオーナーで、家賃はいただかないことになったんです。それで、家賃分をお義母さんの食事や習い事に当てることにして……」
「そ、そんなことなら俺は断固として家賃は払わんぞっっ!!」
大作が激昂した。
ゴミ出しについて教授していた時には、少しは性格が丸くなったように感じていたが、琴子に対してはなんら変わっていないようだ。
「で、でも……弁護士さんとの話し合いでもう決まったことですし、法律的にも、別居中の妻の生活費は夫であるお義父さんが負担しなければならないことになっていますから……」
美羽はビクビクしながらも、はっきりと説明した。
またもや大作に癇癪を向けられるのではと思ったが、彼は茫然としていた。
「あい、つ……戻る気は、ないのか」
大作の言葉に、今更何を……と呆れてしまう。
そうさせたのは、今までの彼の言動によるものではないか。琴子を悩ませ、苦しませ、追い詰め……離婚を決意させた。
琴子に独り暮らしをさせれば寂しくなって自分の元に帰ってくるなど、よくそんな発想ができるものだ。
もし寂しくなったとしても……向かうのは大作ではなく、愛しい我が子である、義昭の元だろう。
先ほどまで癇癪をおこしていた大作が急に黙り込んだ。頭には白髪が一気に増え、皺が深く刻まれ、目の下が落ち窪み、この1ヶ月で相当老け込んだように見える。
琴子がいないことが、かなりこたえているようだ。
「あの……他に質問がなければ私、帰りますね」
「ま、待て!!」
美羽を引き止めたものの、大作は話し始めない。
「あの……なんでしょう?」
促され、大作は普段の鷹揚さとは対照的な小さな声で尋ねてきた。
「ぁ、あいつの独り暮らしは……決まったのか?」
大作はやはり、琴子のことを気にかけていたのだ。ゴミ出しについて教えてほしいというのは本来の目的ではなく、本当はこちらをずっと聞きたくて機会を窺っていたのだろう。
琴子が引越しすることは、義昭から弁護士を通じて大作に連絡がいくはずだが、まだきていないようだ。
「えぇ……先ほど、義昭さんから連絡があって話がついたそうです」
「そうか」
呟いてから、フンッと大作が鼻を鳴らした。
「あいつに独り暮らしなど、できるわけなかろう」
大作は、琴子が夢のようなマンションで暮らし始めると知らされていないのかもしれないが、未だに妻を見下したような態度を続けている大作に対して、現実を突きつけてやりたいという気持ちが美羽に湧いてきた。
「お義母さんがこれから暮らすマンション……アクティブシニア向けで、食事を作る必要もなく、栄養バランスのとれた食事をそこに住む住人の方達といただくことができるし、ジムやプールだけでなく映画室や娯楽室なんかもあって、習い事も受けられるんですよ。
お義母さん、そこで暮らすのをとても楽しみにしてらっしゃいました」
大作は僅かに動揺を見せたものの、取り繕った。
「そんなところ、家賃がバカにならんだろう。他にもいろいろ金がかかるなら、そのうち金が足りんくなって泣きついてくるだろうが、俺は助けるつもりは一切ないぞ」
まだ余裕をみせる大作に、もう一撃をぶつける。
「それ、が……そのマンション、私の弟がオーナーで、家賃はいただかないことになったんです。それで、家賃分をお義母さんの食事や習い事に当てることにして……」
「そ、そんなことなら俺は断固として家賃は払わんぞっっ!!」
大作が激昂した。
ゴミ出しについて教授していた時には、少しは性格が丸くなったように感じていたが、琴子に対してはなんら変わっていないようだ。
「で、でも……弁護士さんとの話し合いでもう決まったことですし、法律的にも、別居中の妻の生活費は夫であるお義父さんが負担しなければならないことになっていますから……」
美羽はビクビクしながらも、はっきりと説明した。
またもや大作に癇癪を向けられるのではと思ったが、彼は茫然としていた。
「あい、つ……戻る気は、ないのか」
大作の言葉に、今更何を……と呆れてしまう。
そうさせたのは、今までの彼の言動によるものではないか。琴子を悩ませ、苦しませ、追い詰め……離婚を決意させた。
琴子に独り暮らしをさせれば寂しくなって自分の元に帰ってくるなど、よくそんな発想ができるものだ。
もし寂しくなったとしても……向かうのは大作ではなく、愛しい我が子である、義昭の元だろう。
先ほどまで癇癪をおこしていた大作が急に黙り込んだ。頭には白髪が一気に増え、皺が深く刻まれ、目の下が落ち窪み、この1ヶ月で相当老け込んだように見える。
琴子がいないことが、かなりこたえているようだ。
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