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388.萌の出勤
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ティータイムが終わりに近づき、そろそろディナータイムの準備に取り掛かる頃、隼斗が全員を召集した。カウンターを挟んで向かい合い、軽いミーティングをする。
「もしフロアが忙しくなった時には、類にヘルプに行かせるからよろしく」
「はーい」
類は気にした様子を見せず、気楽に返事した。
やっぱり……類が、ヘルプに入ることになるんだ。
チラッと香織を見つめると、類と顔を合わそうとせず、俯いていた。
そりゃ、昨日の今日だし、やりずらいよね……
そう思っていると、フロア側の奥から、いきなりピョコンと顔が現れた。
「おっはようたーん!」
「えっ、萌たん!?」
来たんだ!!
全員が驚きの表情で見つめる中、萌は少し引き攣りながらも口角をあげ、笑顔を見せた。
「萌たんがいないと、デタントは始まらないたん♪
さぁ、今日も張り切ってお仕事するたーん!」
もう既に、制服に着替えている。化粧でカバーしているので遠目には分からないが、萌の目の下には隈が出来ていたし、空元気なのは明らかだった。
「もう体調は、大丈夫なのか?」
隼斗が萌に尋ねる。
美羽は、隼斗に萌が浩平に振られたことを話していなかった。体調が悪いので休む、という理由にしていた。
萌は一瞬、「?」という表情を浮かべたが、すぐに理解して頭を下げた。
「心配かけてごめんなさいっ! もう、体調はバッチリたん♪」
少し訝しげな表情を浮かべたものの、萌の仕事に対する情熱を感じた隼斗は頷いた。
「よし。じゃあ萌さんが来たから、類は引き続き厨房を頼む」
「はーい、隼斗兄さん」
「萌さん、無理はするな」
「わかったーん!」
萌が来てくれたことで、類と一緒に働かなくても良くなったことには安堵したものの、彼女の気持ちを思うと複雑だった。
浩平くんに、会いたくないって言ってたのに……
浩平は気遣わしげに萌を見つめていたが、何も声をかけることなく、仕事に戻って行った。
厨房の奥へと戻っていく3人を見送りながら、香織が萌に小声で尋ねた。
「萌……あんた、大丈夫なの?」
萌が背を向けた。肩が、震えている。
美羽が客席を見回すと、既にオーダーされたものは全て出され、のんびりとお茶を飲みながら談笑している人たちばかり。ティーポットのお湯も、先ほど回って替えたばかりだ。
今の時点でお客様に対して何もしなくても大丈夫だという判断をし、美羽が素早く厨房からもお客様からも見えない場所へと萌を誘導した。
「だい、じょぶな……わけ、ないよ……」
萌の声が、涙で詰まって掠れている。
「で、も……私が来なかったら……こうたん、きっと自分を責めると思うから。そんな風にしてほしくなかった。
だってそんなの、こうたんらしくない……ッッ」
萌、たん……
美羽の心臓が熱くなり、瞳の奥からジワッと涙が溢れそうになり、舌を噛んでグッと堪えた。
私が、泣いちゃだめだ。泣いたらきっと……萌たんだって感情が溢れて、泣いてしまうから。
「それに、かおたんだって……来てるたん」
自分のことを指摘され、香織は動揺を露わにした。どうやら、昨日の萌とのLINEで、香織もまた、類に振られたことを伝えたらしい。
「わた、私は、大人……だから。いちいち振られたぐらいで、仕事休むなんてこと、しないわよ!」
「ぷぅっ!! それって、前に萌たんが休んだことへのあてつけー?」
「まぁね」
そう言って、香織はフッと小さく笑った。萌も、痛々しい表情で笑ってみせる。
今まで、恋を失うごとに大騒ぎし、店を休んだり、大泣きしてきた萌が、大人の女性へと成長しているのを感じた。
それは、きっと……浩平くんを好きになったことで、初めて芽生えた感情だったんだ。
浩平と上手くいかなかったのは悲しいし、残念だけれど、きっと萌はこの恋愛を糧に、もっともっと魅力的な女性になっていくことだろう。
そんな萌を、眩しく感じた。
「もしフロアが忙しくなった時には、類にヘルプに行かせるからよろしく」
「はーい」
類は気にした様子を見せず、気楽に返事した。
やっぱり……類が、ヘルプに入ることになるんだ。
チラッと香織を見つめると、類と顔を合わそうとせず、俯いていた。
そりゃ、昨日の今日だし、やりずらいよね……
そう思っていると、フロア側の奥から、いきなりピョコンと顔が現れた。
「おっはようたーん!」
「えっ、萌たん!?」
来たんだ!!
全員が驚きの表情で見つめる中、萌は少し引き攣りながらも口角をあげ、笑顔を見せた。
「萌たんがいないと、デタントは始まらないたん♪
さぁ、今日も張り切ってお仕事するたーん!」
もう既に、制服に着替えている。化粧でカバーしているので遠目には分からないが、萌の目の下には隈が出来ていたし、空元気なのは明らかだった。
「もう体調は、大丈夫なのか?」
隼斗が萌に尋ねる。
美羽は、隼斗に萌が浩平に振られたことを話していなかった。体調が悪いので休む、という理由にしていた。
萌は一瞬、「?」という表情を浮かべたが、すぐに理解して頭を下げた。
「心配かけてごめんなさいっ! もう、体調はバッチリたん♪」
少し訝しげな表情を浮かべたものの、萌の仕事に対する情熱を感じた隼斗は頷いた。
「よし。じゃあ萌さんが来たから、類は引き続き厨房を頼む」
「はーい、隼斗兄さん」
「萌さん、無理はするな」
「わかったーん!」
萌が来てくれたことで、類と一緒に働かなくても良くなったことには安堵したものの、彼女の気持ちを思うと複雑だった。
浩平くんに、会いたくないって言ってたのに……
浩平は気遣わしげに萌を見つめていたが、何も声をかけることなく、仕事に戻って行った。
厨房の奥へと戻っていく3人を見送りながら、香織が萌に小声で尋ねた。
「萌……あんた、大丈夫なの?」
萌が背を向けた。肩が、震えている。
美羽が客席を見回すと、既にオーダーされたものは全て出され、のんびりとお茶を飲みながら談笑している人たちばかり。ティーポットのお湯も、先ほど回って替えたばかりだ。
今の時点でお客様に対して何もしなくても大丈夫だという判断をし、美羽が素早く厨房からもお客様からも見えない場所へと萌を誘導した。
「だい、じょぶな……わけ、ないよ……」
萌の声が、涙で詰まって掠れている。
「で、も……私が来なかったら……こうたん、きっと自分を責めると思うから。そんな風にしてほしくなかった。
だってそんなの、こうたんらしくない……ッッ」
萌、たん……
美羽の心臓が熱くなり、瞳の奥からジワッと涙が溢れそうになり、舌を噛んでグッと堪えた。
私が、泣いちゃだめだ。泣いたらきっと……萌たんだって感情が溢れて、泣いてしまうから。
「それに、かおたんだって……来てるたん」
自分のことを指摘され、香織は動揺を露わにした。どうやら、昨日の萌とのLINEで、香織もまた、類に振られたことを伝えたらしい。
「わた、私は、大人……だから。いちいち振られたぐらいで、仕事休むなんてこと、しないわよ!」
「ぷぅっ!! それって、前に萌たんが休んだことへのあてつけー?」
「まぁね」
そう言って、香織はフッと小さく笑った。萌も、痛々しい表情で笑ってみせる。
今まで、恋を失うごとに大騒ぎし、店を休んだり、大泣きしてきた萌が、大人の女性へと成長しているのを感じた。
それは、きっと……浩平くんを好きになったことで、初めて芽生えた感情だったんだ。
浩平と上手くいかなかったのは悲しいし、残念だけれど、きっと萌はこの恋愛を糧に、もっともっと魅力的な女性になっていくことだろう。
そんな萌を、眩しく感じた。
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