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442.類の命令
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美羽は躰の疼きを誤魔化すように、類から顔を背けた。
類が、美羽の背中に指を這わせる。
「ッる、ぃぃ……ゃ、めて。おねが……」
「ヨシが視界に入らなければいい?
じゃあ、ミューがここの下に潜って、僕のを慰めてくれる?」
ぇ。
美羽は一瞬、ほりごたつに視線を流した。今、義昭は座卓に突っ伏して眠っている。
美羽がこの下に入れば、義昭の視界には入れないし、起きてしまったしても、箸が落ちて拾ってたとか、言い訳ができるはずだ。
類の低い声が落とされた。
「ねぇ、僕の命令だよ……聞けないの、ミュー?」
「ッッ……」
躰が熱くなる。
美羽は肘をつき、足を伸ばした。
こんなの、いけないって思うのに、どうしても拒絶できない。類を、受け入れてしまう。
その時……
「グガッ」
再び、義昭が大きく鼻を鳴らした。
美羽がビクッと足を引っ込め、肘を真っ直ぐに伸ばした。
「ご、ごめんなさい……でも、でき……できない。できない、よ……ッグ」
美羽の溢れ落ちそうな涙を、類が指で拭い取る。
「分かった……」
その重暗い声音に、美羽は肩をピクリと揺らした。
怒って、るの……類? 私が、命令を聞けなかったから。
呆れてる? 従順な、下僕になりきれなくて。
ごめん、ごめんな……さい。
類が美羽の後頭部を手で包み込み、自分の胸へと寄せる。深い、溜息が漏れた。
「……夜、ミューのベッドで一緒に寝てもいいなら、ここでは何もしないよ。
どうする、ミュー?」
「る、ぃ……」
ここでも拒絶したら……私は、類の奴隷になれなくなる。もう、触れてもらえない。
「わ、かったから……お願い。ここでは、何もしないで」
「うん、何もしないよ。ここでは、ね」
類が美羽を離すと愛らしく首を傾げ、微笑んだ。けれど、その微笑みはどこか歪《いびつ》なものだった。
「じゃ、帰ろっか」
笑顔で類に言われ、美羽は爆睡している義昭をチラッと横目で眺めた。
「類、義昭さん……」
まさか、置いていくつもりじゃないよね。
「大丈夫。連れて帰るから」
類はスマホを手にし、タクシーを1台、ハイヤーを1台手配した。
ハイヤーの運転手が美羽たちのいる居酒屋まで迎えに来て義昭を下まで運び、そこに停まっているタクシーへと詰め込んだ。
「ここまで、お願いします」
類がタクシーの運転手に目的地を告げてお金を支払い、ドアをバタンと閉める。
「じゃ、僕たちも帰ろっか」
ハイヤーの運転手が開けた後部座席へと類が滑り込み、美羽に両手を伸ばす。
「おいで、ミュー」
「はい……」
美羽は、素直に類の腕に抱かれた。
類が、美羽の背中に指を這わせる。
「ッる、ぃぃ……ゃ、めて。おねが……」
「ヨシが視界に入らなければいい?
じゃあ、ミューがここの下に潜って、僕のを慰めてくれる?」
ぇ。
美羽は一瞬、ほりごたつに視線を流した。今、義昭は座卓に突っ伏して眠っている。
美羽がこの下に入れば、義昭の視界には入れないし、起きてしまったしても、箸が落ちて拾ってたとか、言い訳ができるはずだ。
類の低い声が落とされた。
「ねぇ、僕の命令だよ……聞けないの、ミュー?」
「ッッ……」
躰が熱くなる。
美羽は肘をつき、足を伸ばした。
こんなの、いけないって思うのに、どうしても拒絶できない。類を、受け入れてしまう。
その時……
「グガッ」
再び、義昭が大きく鼻を鳴らした。
美羽がビクッと足を引っ込め、肘を真っ直ぐに伸ばした。
「ご、ごめんなさい……でも、でき……できない。できない、よ……ッグ」
美羽の溢れ落ちそうな涙を、類が指で拭い取る。
「分かった……」
その重暗い声音に、美羽は肩をピクリと揺らした。
怒って、るの……類? 私が、命令を聞けなかったから。
呆れてる? 従順な、下僕になりきれなくて。
ごめん、ごめんな……さい。
類が美羽の後頭部を手で包み込み、自分の胸へと寄せる。深い、溜息が漏れた。
「……夜、ミューのベッドで一緒に寝てもいいなら、ここでは何もしないよ。
どうする、ミュー?」
「る、ぃ……」
ここでも拒絶したら……私は、類の奴隷になれなくなる。もう、触れてもらえない。
「わ、かったから……お願い。ここでは、何もしないで」
「うん、何もしないよ。ここでは、ね」
類が美羽を離すと愛らしく首を傾げ、微笑んだ。けれど、その微笑みはどこか歪《いびつ》なものだった。
「じゃ、帰ろっか」
笑顔で類に言われ、美羽は爆睡している義昭をチラッと横目で眺めた。
「類、義昭さん……」
まさか、置いていくつもりじゃないよね。
「大丈夫。連れて帰るから」
類はスマホを手にし、タクシーを1台、ハイヤーを1台手配した。
ハイヤーの運転手が美羽たちのいる居酒屋まで迎えに来て義昭を下まで運び、そこに停まっているタクシーへと詰め込んだ。
「ここまで、お願いします」
類がタクシーの運転手に目的地を告げてお金を支払い、ドアをバタンと閉める。
「じゃ、僕たちも帰ろっか」
ハイヤーの運転手が開けた後部座席へと類が滑り込み、美羽に両手を伸ばす。
「おいで、ミュー」
「はい……」
美羽は、素直に類の腕に抱かれた。
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