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474.義昭の企み

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 あの頃は、自分がゲイなんだと思っていた。同性しか好きになれないのだと思いながらも、どうして現実で出会う同性の誰にも心惹かれることがないのか不思議だった。雑誌やDVDでしか性的欲求を持てないことに、劣等感を抱いていた。



 でも、もう僕は、自分が何者であるか知ってる……
 ルイという『神』に出会ったから。美羽が、気づかせてくれたから。



 類が美羽を裸で抱いている姿を想像しながら、完全に勃ち上がっている自身を激しく上下に扱く。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」

 ハァ……明日、美羽はルイに告白し、ふたりは結ばれる。
 憧れの、ルイが……僕の崇拝するルイが、僕の妻である美羽を抱くんだ。ふたりは、双子の姉弟なのに……禁忌と分かっていながら、夫である僕を裏切る……

 僕の存在は、踏みつけにされる……フフッ、フフフッ。

「ハァッ……ックゥゥ」

 射精感が高まるのを感じ、素早くサイドテーブルからティッシュを抜き取った。

「ック!!」

 先端を何枚にも重ねたティッシュで覆い、手に触れないようにしてうまく包み込み、拭い取る。

 あぁ、明日のバレンタインが待ちきれない。待ちきれないよ……

 義昭は立ち上がり、シャツを脱いだ。
 
 翌日、仕事から帰ってきた義昭は冷蔵庫を開け、ヨーグルトとサワークリームとチーズを退け、まだそこに箱が残っていることを確認して愕然とした。

 まだ、箱が残ってる……美羽は、ルイに渡さなかったのか?

 だが、職場にチョコレートケーキを持って行って、類にだけ渡すことは出来ないだろうということに気づいた。

 ってことは……きっと、僕が寝た後の隙を見計らって渡すつもりなんだな。夫である僕にはチョコレートを渡すことなく、弟であるルイだけに。
 そして、ふたりはこの夜……

 義昭の躰がゾクゾクと震えた。

 あぁ……早く。早く、見たい……

 その時、ふとある考えが閃いた。



 もし僕が、美羽がルイに渡すはずだったチョコレートケーキを食べてしまったら……ふたりはどんな反応をするだろう。
 美羽はショックを受け、絶句するだろうか。そしてルイは……怒りに震え、蔑んだ目で僕を見、ありとあらゆる罵詈雑言を心の中で吐き出すんだろうか。



 そう考えると、美羽が類に告白して二人が結ばれることよりも更に大きな興奮と強い衝動が義昭の胸に沸き起こった。

 あハァ、見たい……僕のせいで感情を揺さぶられ、僕を貶めたいと怒りに燃えるルイを。そして、更に僕に対して嫌悪を増幅させる美羽を。

 義昭は昂ぶる感情と共にケーキの箱を手に取ると、ダイニングテーブルに置いた。

 チョコレートケーキをスライドさせ、ナイフを手に取ってカットしようとしたが……

 いや、ホールでそのまま食べた方がいいな。

 ニヤリと下卑た笑いを浮かべた。
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