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52.聖夜のプレゼント

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 ぇ?

 驚いてステファンを見上げる。

 う、そ……!

 ステファンはサラを柔らかく胸に抱いたまま、瞳を閉じ、眠っていた。サラの胸がキュンと高鳴った。

 眠っているステファンを見たのなんて、初めてです……

 いつでもステファンは、サラより遅く寝て、早く起きる。サラは今まで、ステファンの寝顔を見たことが一度もなかった。

 ドキドキと高鳴る鼓動を胸に、サラはステファンの顔をじっと覗き込んだ。

 瞳を閉じた瞼に睫毛が影を落としている。唇は穏やかに結ばれており、安らかな表情を浮かべるその顔は、心なしかいつもよりも若く見えた。

 睫毛、長い。こうして見ていると、本当に美しい顔立ち……

 サラは慎重にシャンパングラスをテーブルに置き、背中を向けていた躰の向きをゆっくりと反転させた。ステファンが無防備に寝顔を見せていることが、嬉しくてたまらない。

 ステファンは穏やかな表情を見せている時も、隙がありません。
 こんなに安心しきって眠るステファンが見られるなんて。

 ーー私にとっては、これが一番のクリスマスプレゼントかもしれません……

 サラは少し顔を上げ、ステファンの唇に自らの唇を慈しむように柔らかく重ねた。彼の胸に頬を寄せ、おずおずと手を伸ばすと艶やかな銀髪に触れ、そっと撫でた。

「メリークリスマス、ステファン……」

 囁くような声で伝えると、サラはゆっくりと瞳を閉じた。
 
 規則正しいステファンの鼓動を聞いているうちに、落ち着きなかった心臓が彼のものと共鳴するようにゆっくりとなり、安らかにサラを眠りへと誘う。

 空から降る綿雪はテラスの手摺りや藤製の硝子テーブルやチェアにまで降り積もり、一面を銀世界へと変えていった。
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