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上昇気流
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そんな美姫とは対照的に、凛子は力強く説明する。
「ここには4月から現在までの売上はありませんが、3月31日の新ロゴ発表以後、我社の売上は少しずつ上昇し、5月にCM放映を開始してからは急激な伸びを見せています。来栖財閥は再び消費者の信頼を取り戻しただけではなく、ブランド価値が高まり、これまで以上に消費者の購買意欲をそそる商品を発信し続けています。今年度の収益では、確実に前年度を上回る収益が見込まれます。
以前からの株主の皆様には、来栖財閥が苦しい時期にも決して見放さず、支えて下さったことをこころより感謝致します。また、新たに株主となって下さった方には、来栖財閥の未来に期待して下さり、とても嬉しく思っております。
どうぞ今後共、一層のサポートをよろしくお願い致します」
凛子は深く頭を下げた。
続いては役員の選任となる。
大和は大学生であり常勤は出来ないということで、非常勤取締役として選任された。その決議は株主によってされ、大和は多数票を獲得して無事に承認されることとなった。
美姫は大和の秘書として、紹介された。ようやくお目見えした大和と美姫の登場に会場が一気に沸き、一斉にフラッシュが飛び交った。
「それと、今までの監査役3名を新たに選出したいと思います」
その声に、会場がざわついた。今まで監査役についていたのは、副社長である八郎の息がかかっていた人間だ。
もしや、羽鳥側の人間が監査につくのでは......
言葉には出さないものの、その場にいた多くの人間がそう考えた。だが、凛子が選任したのは誠一郎とも八郎とも羽鳥とも関係のない人間ばかりだった。
実は、京香から自分を監査役につけて欲しいと言われていたのだが、凛子はそれを退けた。監査役においては、今度こそ清廉潔白な人物を据えたいという思いがあったからだ。
だが、それで京香が納得するはずなどない。そこで凛子は、京香を相談役につけることにしたのだった。
実際、京香は広告代理店を替えることや、大和と美姫を広告塔にするという提案を打ち出し、それは見事に来栖財閥の再建に大きく貢献した。彼女には、先見の明とネットワーク、そして行動力があると凛子は感じていた。
だが、京香は薬にもなれば毒にもなる存在だ。相談役としたのは、役員ではないため株主からの審議は必要ないので、株主から直接反感を買うことがないこと。また、決定権はあくまで代表取締役である凛子にある為、京香から無理な難題を押し付けられたしても拒否することが出来るということを考慮して決めたのだった。
今年の配当金は例年に比べて少なかったため株主から不満の声が上がるかと懸念されたものの、今の新ロゴブームから来年度の配当金に期待しているお陰で大した議論になることもなく受け入れられた。
こうして、株主総会は無事に閉会した。
株主総会に出席した株主全員にはお土産として、新ロゴが入ったペアグラスが用意された。これこそが、今回株主総会に直接出席した人数が多かった理由の一つだった。
委任状を出したり、ネットで株主総会に出席した株主には、この土産は配られない。株主総会に出席すればここでしか手に入らない、新ロゴの入った貴重なものがもらえるに違いないと踏んだ多くの株主たちが直接出向くことにしたのだった。
このペアグラスはその後、ワイドショーやニュースでも取り上げられる程話題となり、ネットで売り出されるとかなりの高値がついた。
「ここには4月から現在までの売上はありませんが、3月31日の新ロゴ発表以後、我社の売上は少しずつ上昇し、5月にCM放映を開始してからは急激な伸びを見せています。来栖財閥は再び消費者の信頼を取り戻しただけではなく、ブランド価値が高まり、これまで以上に消費者の購買意欲をそそる商品を発信し続けています。今年度の収益では、確実に前年度を上回る収益が見込まれます。
以前からの株主の皆様には、来栖財閥が苦しい時期にも決して見放さず、支えて下さったことをこころより感謝致します。また、新たに株主となって下さった方には、来栖財閥の未来に期待して下さり、とても嬉しく思っております。
どうぞ今後共、一層のサポートをよろしくお願い致します」
凛子は深く頭を下げた。
続いては役員の選任となる。
大和は大学生であり常勤は出来ないということで、非常勤取締役として選任された。その決議は株主によってされ、大和は多数票を獲得して無事に承認されることとなった。
美姫は大和の秘書として、紹介された。ようやくお目見えした大和と美姫の登場に会場が一気に沸き、一斉にフラッシュが飛び交った。
「それと、今までの監査役3名を新たに選出したいと思います」
その声に、会場がざわついた。今まで監査役についていたのは、副社長である八郎の息がかかっていた人間だ。
もしや、羽鳥側の人間が監査につくのでは......
言葉には出さないものの、その場にいた多くの人間がそう考えた。だが、凛子が選任したのは誠一郎とも八郎とも羽鳥とも関係のない人間ばかりだった。
実は、京香から自分を監査役につけて欲しいと言われていたのだが、凛子はそれを退けた。監査役においては、今度こそ清廉潔白な人物を据えたいという思いがあったからだ。
だが、それで京香が納得するはずなどない。そこで凛子は、京香を相談役につけることにしたのだった。
実際、京香は広告代理店を替えることや、大和と美姫を広告塔にするという提案を打ち出し、それは見事に来栖財閥の再建に大きく貢献した。彼女には、先見の明とネットワーク、そして行動力があると凛子は感じていた。
だが、京香は薬にもなれば毒にもなる存在だ。相談役としたのは、役員ではないため株主からの審議は必要ないので、株主から直接反感を買うことがないこと。また、決定権はあくまで代表取締役である凛子にある為、京香から無理な難題を押し付けられたしても拒否することが出来るということを考慮して決めたのだった。
今年の配当金は例年に比べて少なかったため株主から不満の声が上がるかと懸念されたものの、今の新ロゴブームから来年度の配当金に期待しているお陰で大した議論になることもなく受け入れられた。
こうして、株主総会は無事に閉会した。
株主総会に出席した株主全員にはお土産として、新ロゴが入ったペアグラスが用意された。これこそが、今回株主総会に直接出席した人数が多かった理由の一つだった。
委任状を出したり、ネットで株主総会に出席した株主には、この土産は配られない。株主総会に出席すればここでしか手に入らない、新ロゴの入った貴重なものがもらえるに違いないと踏んだ多くの株主たちが直接出向くことにしたのだった。
このペアグラスはその後、ワイドショーやニュースでも取り上げられる程話題となり、ネットで売り出されるとかなりの高値がついた。
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